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デザイナーの海外就活の記録

オランダで学校を卒業してから、長い道のりを経てようやく現地でデザイナーとして正式に採用が決まりました。なんと卒業してから約1年…! 時間はかかりましたが、周りの同時期に卒業した友人をみると、これでも比較的運が良かった方だと思います。オランダでのデザイナー就職は、それくらい厳しい道のりだったわけですが、実際どんな行動をしていたの?っていうお話をつらつらと書こうと思います。


前提条件

就活を始めた時点での経歴・経験は以下に記述するとおりです。

  • 学部は日本で卒業(ビジュアルコミュニケーションデザイン)

  • 日本のデザイン事務所での実務経験が1年

  • オランダでトレイニーシップ半年

  • オランダで修士課程修了 

  • その他修士在学中含めリモートでちょこちょこデザイン系のバイトや委託業務をやっていた(クライアントはすべて日本の会社)

要は新卒に毛が生えたくらいの経歴です。

それからビザなのですが、パートナーがオランダ人のため居住許可労働許可共に保有済みでした。
正直に言うと、就活においてこれはかなりのアドバンテージです。デザイナー職で現地の会社にビザを出してもらうのは結構ハードル高いと思います。オランダにおいては、ビザを持っていない方の場合、個人事業主ビザを自分で申請して現地の会社とフリーランス契約を結んでもらう方が現実的かと思います。(全くもって不可能という意味ではなく、あくまで可能性がより高い選択肢の話です。また、難易度は景気の良し悪しでも変わると思います。)
※オランダ以外の国に関しては分からないですが、似たような感じのところが多いのではないでしょうか。

また、私のパートナーは高給取りではないものの、贅沢をしなければなんとか2人の暮らしを賄える程度には安定した収入があり、私にとって経済的なサポートがありました。また、彼は「私に早くなんでもいいから仕事を探してほしい」というより、「時間がかかってもいいからデザイナーとして花咲いてほしい」というスタンスだった点でも感謝しています。
おそらくこの記事を読んでいる方も、学歴・職歴・ビザの有無・経済的もしくは精神的なサポートの有無など様々な状況の方がおられると思います。私の記事は「誰でもこれをすれば海外就職ができる!」というような再現性を謳ったものではありません。あくまで「数多くの異なるルートがあるなかで個人が試したこととその結果」という風に、アクションベースで見ていただければ幸いです。

私がやったこと記録

がむしゃらに応募

2023年の6月にオランダでマスターを修了し、7月は日本に一時帰国していたので8月から本格的に就職活動をはじめました。
ポートフォリオとResumeを新しく作り直し、募集の有無に関係なく様々なデザイン会社にコンタクトをとりました。

実務経験年数が少ない場合、デザイナー就活はかなりハードです。私は外国人なのでいっそう難しいのはもちろん、現地の学生にとっても簡単ではありません。他の欧米諸国と同じように、オランダでは新卒一括採用制度がないため、ポジションによっては自分よりも実務経験年数の長い候補者と戦わなければならないことも多々あります。その上、転職してキャリアアップしていくのが当たり前なので、数年後に転職される可能性を考えると、会社にとって経験が浅い人を育てるメリットがあまりないのです。というわけで、オランダ人であっても、卒業してすぐ就職している学生はデザイン業界においては多くないように見受けれられます。卒業から就職がスムーズに行っている学生は、元々学生時代のインターン先に就職というパターンが多いようです。

という背景もあり、当然私の就活は難航を極めました。半分以上は返事が返ってくることもなく、返ってきても全てお断りメール。もちろん覚悟はしていたものの、それでもやっぱり精神的に楽なものではありません。

合計で100社はゆうに超えるくらいは応募しました。(50社過ぎくらいまではどこに応募したかnotionで管理していたのですが途中で力尽きた)
面接まで行ったことは数回ありましたが、初めての面接は面接中に「落ちたな…」と分かるくらいダメだったのを覚えています。

会社はLinkedInやその他クリエイティブ系の求人サイトで見つけたり、時にはGoogleマップで出てきたところに片っ端から連絡していました。

※私含め学校を出たばかりの経験が浅いデザイナーはかなり就活苦戦する印象ですが、日本人でも経験豊富でスキルバリバリの方の場合は違うのかもしれません。

フリーランスの準備

会社への応募と同時に、オランダで個人事業主登録をすることにしました。日本だと「就職→独立」の流れでフリーランスになる人の方が多いですが、オランダは先述の通り実務経験が少ない場合の就職が難しい為、学生のうちからまたは卒業してすぐからフリーランスになり、実績を積むパターンが珍しくないです。(フリーランス数年やってから就職する人も結構多い。)

とはいえ応募をまったくやめたわけではなく、相変わらず条件が合いそうな求人があれば応募は続けていました。「数打ちゃ当たる戦法」に全振りしていた状態から、フリーランスの準備にも労力を割くようにした感じです。

デザイン事務所によっては「採用はやっていないけどフリーランスは探している」というところも多いので選択肢を増やす上でも事業者登録はしておいてよかったなと思います。実際に私の同級生のうちの1人はそのパターンでお仕事を貰っているようです。

インターン

できれば最初から正規雇用が良かったのですが、あまりに仕事が見つからないのでインターンをすることにしました。オランダでは大学3年次にカリキュラムの一環でインターンをすることが多いため、インターンの給与設定が極めて低いです。体感としてはフルタイムで400ユーロくらいが平均、無給もありえる、といった感じでしょうか。私は家から近くのブランディング会社で週3勤務で月200ユーロの条件で働くことになりました。インターンを始める際に「インターン後に採用はするつもりないよ」とはっきり言われていたため、インターンをしながらも継続的に他の仕事への応募やフリーランス営業は続けていました。

結果的にいうと、このインターン先に就職することになりました。もともと採用はしないと宣言されていたものの、なんだか私が意外と会社に馴染んでいると思われたのか、3ヶ月間の予定だったインターン終了直前に「このままさらに4ヶ月のトレイニーシップとして継続して、その後正式に会社に入らないか」とオファーをいただけました。トレイニーシップは週4勤務で月1000ユーロと、変わらず最低賃金以下でしたがインターンよりは良い条件で働くことができました。

ただ、労働可能なビザを私が持っていなかったらおそらく雇ってはもらえなかったと思います。特に小さな会社だとビザスポンサーになることの負担や手間が大きすぎるので…。その場合でもフリーランスとして身を置かせてくれるくらいのことなら可能性はあった気はします。

学んだこと・反省点

ポートフォリオの作品選びは大切

オランダの学校で制作した作品たちは、結構アート寄りだったので、クライアントワークが基本のエージェンジーには刺さりにくかったです。(当たり前)
面接で「もっとブランディングとかのプロジェクトはないの?」と聞かれたこともありました。会社によって、広告系・ブランディング系・デジタル特化系などなど傾向があると思いますが、それぞれの会社に合わせた作品を1つでも準備しておくのが大切だと思います。私は大きく2パターンポートフォリオを用意していて、さらに会社によって少し内容を調整して送っていました。場合によってはその会社の雰囲気に合わせて表紙のデザインから大幅に変えたりもしていました。

面接は準備必須!

オランダの会社はinterviewという言葉を使わず、「一度コーヒーでも飲もうか」くらいのテンションで連絡をくれることがあります。が、カジュアルな面談かな〜と思って準備せずに行くと痛い目を見ることがわかりました。大体の場合普通に1次面接です。ただ、私が就職した会社も1番初めはカジュアルな面談だったのですが、本当にコーヒー飲みながら私の相談を聞く会だったので、そういう場合もあるみたいです。(本当に気軽な面談の場合と面接に近い場合があるというトラップ…。)「じゃあ、ポートフォリオ解説してくれるかな?」とこちらに身を委ねてくるパターンもあるので、その準備もあったほうがいいです。私の友人はプレゼンを用意していったそうで、自分の爪の甘さを痛感しました。

海外デザイナー就活に絶対の正解はない

数年前に「海外デザインを仕事にする」という本を読みました。(※リンク先から購入しても私にお金は入りません…!)海外でデザイナーとして働きたい方にとてもおすすめの本です。この本では総勢10人以上の方々による経験談がまとめられています。デザインといっても分野も様々なのですが、著者の方々の辿ってきた道は本当に十人十色で、海外でデザイナーとして働くのに絶対のルートなどないことがよくわかります。

そんな多様なエピソードの中でも共通しているのが、著者の方々は、気になる会社やデザイナーにコンタクトしたり、直接会いに行ったり、とにかく行動力がすごいのです。もちろん、行動したからと言って必ずうまくいくものでもないとは思うのですが、行動しなけれは始まりません。私はこの本を読んですごく背中を押してもらえました。

誰かの真似をしたら必ず海外でデザイナーになれる!というような正解はないけれど、躊躇わずに行動すれば何かにつながることもあるのかなと思います。

ではでは、このnoteを通して誰かの背中を押すことができたら幸いです…!





ありがとうございます!お勉強に使います…!