命の削れる音がする

それは突然やってきた。
眠りにつこうと横になった途端、涙がとめどなく溢れ出した。
安心できるはずのお布団のなかで、どうしようもなく、涙が止まらない。
悲しいことなんてなにもなかった。
そこに、感情はなかった。
ただひたすらに目から液体が流れていくようだった。

薬を飲み忘れたわけでもないのにこんなことは初めてだった。
薬さえ飲んでいたら、多少無理をしても大丈夫だと、思っていた。
私にとって薬は、毎日飲める栄養ドリンクみたいな存在だった。
それでも、壊れてしまった。

治るのが難しいと言われるこの病気で、私は簡単に治ってしまう、楽な方だと高を括っていた。
それが崩れ始めている。
このまましんどい日々が続いたらどうしようという不安。
数日後には何もなかったかのように元気になっていたらという願望。
複雑な心境が入りまじる中、
心が削れていく音が聞こえる。
心臓がいたい。
どうか、どうか、普通に生きたい。

先日、大きな虹を見た。
いいことあるよ、
と誰かが力強く言った。
その小さな希望をキュッとつかんで、心の中に閉じ込める。

きっと、大丈夫。

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