アルゼンチンに行ったらスイスとドイツでチーズフォンデュとビールの街があった
アルゼンチンの片田舎の個性的な村、Villa General Belgranoへデイトリップすることになった。移動の疲労とタイムロスが嫌いなため、都市ばかりを旅していた私にとって新しい旅のスタイル。コルドバのバスターミナルは美しく広い。どこまでも繋がっていそう。
2時間弱バスに乗ると、そこはスイスだった。
急に現れる絵本の中のような街。
ドイツかもしれない。ベルリンにしか行ったことがないため、判別は難しい。ドイツかスイスだ。おそらくクララ一家が買い物に行く系のおとぎの場所についた。
オフシーズンだからだろうか、街は少し閑散としていて、店もあまり空いていない。故に余計に、絵本の世界に飛び込んだような気持ちに陥る。要は店が空いていなくて現実味がなく、端的に暇なのだけど、かなりポジティブな変換。旅の必需品は、ポジティブ変換なのです。ただでさえ、日本の常識外のことが起こる海外。そんじょそこらのことで動じてはなりません。
当たり前を疑い、イレギュラーを楽しむ気持ちこそが、パスポート、スマホに次ぐ重要アイテムです。
そうなんです。ですから、「これはこれでいいよね」などと言いながら、いやある意味言い聞かせながら、空いているレストランに飛び込みました。そこはスイス。スイスの伝統的な料理がメニューに並びます。ビールとソーセージ、そしてチーズフォンデュを頼みました。
まさか、南米に旅行してチーズフォンデュを食べることになろうとは、全く予期していなかった出来事であります。
南米は暑い一辺倒だろうという、無知識による偏見から、冬があることだけでもラッキーなのに、さらにはスイスも感じることができる。なんという振れ幅でしょうか。この魅力にドキドキむずむずしながら無心で口に運ぶチーズフォンデュとビール。どんな地だって、美味しいご飯があれば人は幸せになれるのだ。
腹を満たしたら再び街歩きへ。街の反対サイドに向かうと、人通りが増えてきた。人が少ないのが逆にいいと強がっていたが、前言撤回をさせてください。楽しそうに人が憩い、賑わうレストランが並ぶ方がずっと楽しい。オーバーツーリズムは嫌だが、何事も適量というものがある。ほどほどに人出があるほうが観光感が胸に去来する。
混み過ぎないほどほどの人出は、旅の楽しさを増長させてくれる。楽しそうな人たちが周りにいると、こっちも楽しくなるからだ。ビール屋もたくさんある。ドイツビール系のでかいグラスに入っているので、帰り道2時間の尿意との戦いだ。そう、次のバスで帰ろうと決めたのだ。しかし、寒空の中のあたかな日差し、青い空、時間がなかろうが飲むしかないのである。
基本的に、日本ほどサービスレベルが高い国はないため、異国では思い通りにいかないことが多い。頼んでもなかなか出てこないビール。店はガラガラなので、ビールなんて注ぐだけやろと思ってしまうが、なかなか出てこない。バスの時間は迫っており、ギリギリに乗り込むのは尿意面も心配である。
ソワソワしていたらやっとビールが出てきた。残り時間あと4分。そしてその後バスで2時間。ここまでの戦いを自分に課してまで飲む必要は正直ない。フォンデュの際に飲んだビールでビア欲求に関しては満たされている。
されど人は飲む。そこにビールがある限り。
お会計を同時進行で行いながら、相当な無理をしながら必死に飲むビール。美味しさを越えた何か。
無理やりビールを流し込み、必死にバス停まで走って、無事コルドバ(アルゼンチン)へ戻るバスに乗ることができた。尿意のことも後半20分以外は考えずに済んだ。バスに乗ってまた2時間。滞在時間は3時間ほどに対して、往復4時間の旅となった。本当はもう一本遅いバスもあるのだが、正直この小さな街の取れ高は数時間で十分で、残りは街に帰って過ごしたい。旅は決断の連続だ。この滞在時間をもったいないと捉えるか、ショートトリップという旅のアクセントで得した気になるか。捉え方も千差万別である。
後者側の私は、南米でスイスにいけると思わなかったなぁとほくそ笑む。南米とスイスを同時に旅行することは不可能だ。しかし、この技を使えば、2時間で実現することができる。逆にコスパとタイパがかなり良い選択なのだ。それならば、日本の各所に謎にある「ドイツ村」に行ったらいいのかという考えもよぎってしまうが、そこでは得られない経験がここにはある。ていうかあそこでは何が得られるのか。なぜ作ってしまったのか。国民性が似てるとかごちゃごちゃ言ってもなんとかいけないなにか。日本にドイツは不要だ。だって宮古島のドイツ村は悲しき廃墟だったもん。そうそう、そもそも日本では食べられない本格チーズフォンデュもあったしね。だからそう、そうだよ、ぜひVilla General Belgranoをふらっと訪れてみてほしいね。