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【笛吹川石和鵜飼】7月の満月-Buck Moon-と徒歩鵜(2024.7.21)

はじめに

 山梨の夏の風物詩のひとつである笛吹川の鵜飼うかいが始まりました。この鵜飼は、笛吹川石和鵜飼(2024.7.20~8.18)として期間中の週4日、地元の保存会により実演が行われます。鵜匠が川へ直接入るのが最大の特徴であり全国唯一です。
 7月から甲府盆地は連日猛暑が続いていますが、夜の川面に一時の涼を求め出掛けまてまいりました。この日は満月(Buck Moon)と重なり幻想的な演出となりました。

昼の笛吹川、見える橋は鵜飼橋 2023年8月
「#お祭りレポート」応募作の中で
先週特にスキを集めた記事に選出 2024.8.5

 昨年の模様はこちらをご覧ください。


徒歩鵜(再掲)

 鵜飼と言えば長良川の鵜飼が有名ですが、現在全国では12カ所で鵜飼が行われているそうです。
 笛吹川の鵜飼は、鵜匠が川を歩いて鵜を操る徒歩鵜かちうと呼ばれる漁法です。徒歩鵜が残るのは笛吹川の鵜飼だけです。
 笛吹川の鵜飼も、一度途絶えていましたが1976年(昭和51年)から漁業協同組合の協力により復活され現在まで続いています。平成の合併により笛吹市が発足したのを機に2005年(平成17年)から笛吹川石和鵜飼保存会が結成され現在は保存会による実演が行われています。

2024年、鵜飼ポスター

鵜飼伝承(再掲)

 鵜飼が行われる笛吹川の会場から徒歩数分のところにその名も鵜飼山遠妙寺という日蓮宗の寺があります。笛吹川の鵜飼は平安時代から続く800有余年の歴史があり、この寺に鵜飼の伝承があります。謡曲「鵜飼」にたいへんよく似た伝承です。

鵜飼山遠妙寺 出典 : 山梨の歴史を旅するサイト

 その内容は、源平合戦に負けた大納言平時忠たいらのときただは平家が壇ノ浦に滅びた後、石和へ逃れ来て住み着き「鵜飼」 を生業としていました。しかし、殺生禁止の触れに反することとなり、簀巻きにされ川に流され処刑されました。その後、殺された時忠の亡霊が出るようになり人々を悩ませていました。亡霊の噂を弟子より聞きつけた日蓮は法華経の経文の文字69,690余を一字ずつ小石に書き笛吹川に沈めたところ時忠の亡霊は出なくったといいます。

 鵜飼山遠妙寺はその時忠を供養した塚が淵源だといいます。遠妙寺は江戸初期に山号を「鵜飼山」に改めていたと考えられるそうで、平時忠が石和に落ち延びたとか、日蓮が石和に来たとか荒唐無稽な伝承ではありますが、そうした伝承があることも地域で鵜飼が親しまれていたからでしょう。
 史料による記録としては、江戸幕府の甲府勤番士・野田市左衛門成方のだいちざえもんしげかたが30年近く甲斐国で見聞したことを書き残した『裏見寒話うらみかんわ』に記録があります。江戸時代の甲斐では、笛吹川のほか荒川、釜無川で鵜飼が行われていたと記録があります。

野田成方「裏見寒話」巻一、頼生文庫、1752年
出典 : 山梨デジタルアーカイブ

バックムーン(Buck Moon)

 定刻の20分前に到着しました。まだ、昼の暑さが残っています。全国的に猛暑を越して酷暑ですが、甲府盆地も7月のうちから連日35度を超えています。
 会場は笛吹市役所本館前の笛吹川です。駐車場は市役所の駐車場が利用できます。駐車場はまだ十分に余裕があります(後に満車になる)。
 誘導員のいる横断歩道を渡ると会場です。鵜匠が川を歩く範囲の観客席は提灯やかがり火による演出がありますので、着席位置も分かりやすいです。
 座席はなるべく川面ぎりぎりのところまで降りるほうが間近で見えます。また、涼しいです。ただ、照明に虫が寄ってくるので虫対策、移動時に足元が暗いく段差なのでLED電灯、お尻が痛くならないようにバスタオルの敷物などを用意しておくと快適度が増します。

満月が上る
幟旗がひるがえる
かがり火の演出

 笛吹川の中州の先、東方面の山から月が上がってきました。満月(望)は、日の入りで太陽が西に沈むの対して東から上がってきます。
 当日(2024年7月21日)の月出は19時12分、月齢は15.2です。
 7月の満月は「バックムーン(Buck Moon)」と呼ばれるそうです。少し調べたところ「Buck」とはオスの鹿のことで角が生え替わる時期に因むアメリカ先住民の命名とのことです。

東に赤い満月が上る

徒歩鵜が始まる

 定刻20時になり会場に響き渡る司会マイクの声はフリーで活動する元UTYテレビ山梨のアナウンサーさんです。
 意外に見物客は少ないと思っていると、どこからともなく見物客が集まってきて階段状の堤防が埋め尽くされます。近くの石和温泉郷の宿泊客がやってくるのです。徒歩あるいはホテルから送迎なのでしょうか。
 4組の鵜匠たちが順番に川に入りました。上流に向かって鵜を操りながらゆっくりと歩みを進めます。

4組の鵜匠たち

 魚(鮎)をおびきよせるために、ぶら下げたたいまつの火を使います。
 鵜匠1人にたいまつ持ちが1人付きます。たいまつ持ちは地元笛吹高校の生徒です。1度川に入って上がるまでおよそ20分かかります。その間ずっとたいまつを持ち続けるておりたいへんな重労働です。

たいまつの火と鵜匠
しんがりは女性の鵜匠

 鵜は茨城県日立市のウミウだそうです。全国どの鵜飼でも現在は茨城県日立市の鵜を使用しているそうです。

顔を出した鵜

 まだ低い位置にある赤い月が水面に映っています。月は少しずつ高度を上げています。その前を鵜匠たちが通り過ぎていきます。

満月と鵜匠

 鵜が鮎を捕まえると客席から拍手が湧きます。鵜からは魚を吐き出させ魚篭に入れます。捕獲した鮎は漁が目的ではないので、このあと鵜に食べさせてあげるそうです。

吐かせた鮎を魚籠に入れる

 50分間の鵜飼実演のため20分ほどで1度陸に上がり、もう1度川に入ります。鵜ですが、1回目と2回目で交代させます。鵜飼は、鵜にとっても大変な重労働だからです。司会のいる本部テント前では鵜と記念撮影できたり、捕獲した鮎を近くで見ることができます。

鵜匠体験

 笛吹川の鵜飼いのもうひとつの名物として鵜匠体験があります。鵜匠体験を出来るのは全国でもここだけといいます。
 今回は2組5名の方たちが鵜匠体験をしていました。4組の鵜匠たちの後に2組の体験鵜匠が続きます。
 ところで鵜匠のいでたちですが、頭には「風折烏帽子かざおれえぼし」という頭巾をかぶります。風に吹かれて折れているように見えることからその名があります。これはたいまつの火の粉から髪を守るためのものです。
 「漁服」は木綿製で夏場のため単衣ひとえになっています。漁服の上から「胸あて」をしますが、たいまつの火の粉や松脂から守る働きがあります。
 徒歩鵜では鵜匠が直接川に入りますので、「腰蓑」を付けていますが歩きやすいようほかの地域の鵜飼に比べると丈が短くなっています。また下にはウエットスーツを着込んでいます。

イケメンな鵜匠

 まず、体験鵜匠1組目はご夫婦です。各組に1名の鵜匠が付いて指導しています。たいまつ持ちは付かないようです。

鵜匠体験1組目の夫婦

 2組目は3人のグループです。実はこの方たち、川へ入ってすぐに鵜が魚を捕まえたのでした。鵜匠体験で魚が捕まえられることはほとんどありませんので、ビギナーズラックだったのか、はたまた才能ありの人たちか、どよめきと賞賛の拍手起きていました。

鵜匠体験2組目の3人グループ

石和温泉鵜飼花火

 鵜飼は20時50分で終わります。そのあと10分間は石和温泉鵜飼花火と銘打ち川の中州から花火が打ち上げられます。
 ちょうど月と花火が同じ画面に入りました。

満月と共演
わずか10分ですが
クライマックス

おわりに

 今年も酷暑というにふさわしい暑さが盆地には続いていますが、夜のべりは涼しい風が吹きます。花火も見られて夕涼みには最適です。
 鵜飼は8月20日までですが、8月24日には山梨の花火大会の最後を飾る石和温泉花火大会が数年ぶりに単独開催されます。笛吹市市制施行20周年も記念して盛大に開催されますのでこちらも注目です。

過去の様子から 出典 : ふえふき観光ナビ
第60回石和温泉花火大会 出典 : ふえふき観光ナビ


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