Standardized Patient、模擬患者 というお仕事
こんにちは、ニューヨーク在住女優、筒井あづみです。今回は私が女優業の一環として行っているStandardized Patientというお仕事について書きたいと思います。
Standardized Patientは日本語にすると「模擬患者」。医学生など、お医者さんの卵たちが、役者を使って診察をする練習をします。
アメリカではこのお仕事は(アクターの中では)一般的で、大学や病院などがStandardized Patient(以降SPと表記)を雇っており、医学生たちはSPとのシミュレーションが単位を取るために必要になってきたりします。
では実際にはどのようにして患者さんを演じるのか。
まず、架空の患者さんのあらゆるデータが記された「台本」が渡されます。台本といっても舞台や映画の台本とは違い、台詞だけが書かれているわけではありません。患者さんの年齢、家族構成、仕事、これまでの病歴、食生活など、いろんなバックグラウンドの情報が含まれており、今回病院に来た理由が例えば腹痛であれば、「いつ始まったか」「どこが痛むか」「どんな風に痛いか」などが書かれています。その情報を元に患者さんのキャラクターを作り上げ、学習者と会話していきます。
今私はLiquidGoldConceptという会社に雇われてこのお仕事をしています。この会社は特にlactation consultant(母乳に関するお悩み相談員)を育成するプログラムに特化しています。
時には台本に書かれていないことも聞かれますので、アドリブが必要。「旦那さんの名前は?」「以前に服用した薬は効きましたか?」など、臨機応変に対応します。
学習者はこのセッションを通して患者さんの病状を正確に診断すること、患者さんに今後のマネジメントプランを的確にわかりやすく伝えることなどが求められ、SPはセッション終了後に、正しい情報を伝えられたか、コミュニケーション能力はどうか、などの項目で評価をつけます。
なぜStandardized(標準化)という名称なのかというと、どの学習者にも同じ経験をさせないと公平な成績が出せないからです。例えばあるSPは自分から病状をぺらぺらしゃべるキャラクターを演じていて、また別のSPは痛みのためほとんど自分からは話さないというキャラを演じているとしたら、学習者側の難易度にかなりばらつきが出てきます。そういった問題を避けるために私たちSPは徹底的にトレーニングを積みます。
痛みや、時にはうつ状態など精神的な病状を演じることも求められるので、この仕事はアクターにしかできません。また、トレーニングの中で、専門的な語彙、知識などを素早く吸収できる能力が求められます。
私の働いているLiquidGoldConceptでは実世界の多様性にも対応するため、トランスジェンダーのSPも雇っています。
次回はアメリカでの性や多様性に対する捉え方や取り組みについて書こうかな。
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