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【毎日エッセイ146】生きることの過酷さ

真冬の北海道の、雪の積もった山道を歩いたことがある。一歩踏み出すと膝まで埋まるような柔らかい雪で、ほんのすこし進むだけでも一苦労。

山の入り口の付近を歩いただけで、とても深くまでは行けなかったけれど、もし本当に山頂を目指して登山をするつもりで進むなら、常に死の危険と隣り合わせの道程なんだろうなと思う。

雪山に限った話ではないけれど、夏の海水浴でも川遊びでも、自然に触れるということは常に危険を伴う。だから私は自然が好きなのかも知れない。

都会の中で暮らしていると、生きていられるのは当たり前になる。当たり前だと思って過ごしていると、有難さを忘れる。

真冬の北海道はどこにいても大雪が降る。注意して運転していたのに凍った路面で何度もスリップした。

スリップして対向車線に飛び出したり、路肩に落ちたり、天地が引っ繰り返っている車を旅行中は何台も見掛けた。車にはねられた鹿の遺体も道端に転がっていた。

何とか無事に運転を終えて、北海道の美味しいご飯を食べていると「生きている」って有り難いことだな、と思い出す。

人は忘れっぽい生き物だから、たまに思い出しても毎日を過ごしているとまた生きることの有り難さを忘れてしまう。だから過酷な自然に身を投じて、生きていることを思い出すのも大切なことだと思う。

だから、私は真冬の北海道が好きだ。

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また新しい山に登ります。