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「お前がどうして人間の姿をして剣の腕を磨いているのかは解らないが、少なくともその業前は、…
全くその通りであった。 宮部伊三郎という一廉の剣客と剣を合わせる事によって、右門も言葉…
無表情ではあるものの、その声色に賞賛の意が感じられ、右門は無意識に姿勢を正す。 それは、…
ならばその軌道を避け、小刀で胴を打つ。 いや、間に合わぬ。 ならば小刀で受け、大刀…
だが、右門の意を読めずざわつく観衆の中で只一人、堤節治だけが、満面の笑みを浮かべ、右門を…
その事実を、宮部も感じているのだろう。右門の剣を迎え撃つその動きが、当初の勢いを減じ、…
おこんは怪妖の身、それも太古から人の世に災いの限りを振りまいてきた九尾狐である。 自らの前に立ち塞がる人間を殺さないで済ます事自体、そもそも有り得ないほど「慈悲に溢れる行為」なのである。 全く、面倒な事この上ないが、考えても仕方が無い。他でもない、右門と約束をした以上、そうするしか無い。 それも全て、自らの望みを果たす為。 その為にも、右門の不興を買う事は絶対に避けねばならない事なのである。 そうよ、これも右門様のため、と、自分の中でそう理屈づけ、納得して
右門は木剣を僅かに上げ、伸び迫る小刀に当てた。 その勢いで、木剣の軌道が右へとずれる。…
二天流において構えとは、平常時非常時に関わらず、「何時如何なる局面においても」敵に応じ…
この辺りは、勘定方を含め藩内の庶務を行う為の各部屋が集中しており、女人が足を踏み入れる…
宮部はおもむろに腰から大小を抜き、屋敷の縁先に置くと、そのまま二振りの木剣を手に、ゆっく…
堤の言葉で、稽古に参加していた一同が礼をする。普段ならばここで銘々解散し、隅にある井戸の…
しかし、そこで尻込みしていては士道不覚悟の謗りを受けてしまう。いつまでも尻込みして突っ立…
慈外流ならば、この地を訪れた際に、土地の道場に礼儀として繋ぎを持ってもおかしくは無かろう。 ならばその流れで、明日の稽古にあの男が参加する可能性は高い。 いや、間違いなく、来るだろう。 何故なら、我がこの智惠の屋敷に関わり在る事を、既にあの女狐は察しているだろうからだ。 「あの女狐が右門と呼んでいたあの男……必ず来る」 もしあの男の姿があれば、剣を合わせてみる事も出来よう。 なに、見えるにしても人間の屋敷の中だ。向こうもおいそれとは動く事は出来ぬ。こちら