爆発侍 尾之壱・爆発刀 五二
全くその通りであった。
宮部伊三郎という一廉の剣客と剣を合わせる事によって、右門も言葉に尽くせぬ様々な学びを得られたと思った。
「では、私はこれで。後ほどまた智惠様を交え、お話しいたしましょう」
「それは……願ってもない事」
堤は宮部に会釈すると、右門の肩を叩き、歩み去って行った。
堤の姿が十分に離れた所で、宮部は右門に向かって改めて口を開いた。
「龍堂右門……お前、あの女狐にどのような借りがあるのだ」
「なんだと」
予期せぬ問いに、右門は思わず宮部の顔を見直した。
「人間が『あれ』に手を貸す道理など、如何様に考えてもなにも思い浮かばん。となれば、言う事を聞かざるを得ぬ借りを作ったか、弱みを握られたか、さもなくば、色香で誑かされたか」
「その様な事は無い。ただ、助けを求められただけだ」
「なんだと」
今度は、宮部が予期せぬ答えに目を見開く番であった。
「おこんさんが危機に瀕している所に居合わせた。だから助け、その縁で手を貸しているだけだ」
「縁……だと。お前、あれが一体なんなのか解って言っているのか」
「国を滅ぼすほどの力を持った大妖怪……らしいな。本人がそう言っていたが」
「らしい、とは。お前、九尾狐を知らぬのか」
「ああ。おこんさんに会うまでは知らなかった。お前の事は知っていたがな」
「我の事、だと?」
「ああ」
訝しげに問う宮部に、右門は頷く。
「お前の正体が土蜘蛛……だとすれば、子供の頃に講談師の物語で聞いたよ」
「なんと……」
宮部の目が、更に大きく見開かれた。
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