爆発侍 尾之壱・爆発刀 四三

宮部はおもむろに腰から大小を抜き、屋敷の縁先に置くと、そのまま二振りの木剣を手に、ゆっくりと中庭中央へ歩を進める。

 どうやら、余計な前事抜きで試合は始まるようだ。右門も木剣を手に、ゆっくりと中庭の中央へと歩を進めた。

 二人の移動に促されるように、庭内にいた者達が隅に移動し、中庭の中心に試合場が形作られる。

 上座となる屋敷側には、智惠と堤。そのそばに慈外流の門弟が並んだ。
 中庭中央、三間(約6m)程の間合いで二人は対峙する。

「一本勝負。どちらかが参るか、私が止めるかで決する。各々、宜しいな」

 堤の言葉に、右門が頷く。

 宮部は沈黙で了承の意を示した。

「では、両名、存分につかまつられよ」
 双方が上座の智惠に礼をした後、お互いを向いてゆっくりと木剣を構える。

 右門は正眼。

 宮部は、右手に脇指、左手に大刀を持つ例の変形二刀流。

「慈外流、龍堂右門」

 右門が名乗ると、宮部の目に初めてなにやら感情の色が浮かんだ。

「……我流。宮部伊三郎」

 宮部の両手に握られた木剣の切っ先が、ゆっくりと持ち上げられた。


 穴江又右衛門あなえ またえもんは、先程まで聞こえていた喧騒と木剣の打撃音が聞こえなくなっているのに気づき、その歩みを止めた。

「そう言えば、そろそろ宮部殿の試合が行われる頃合いだな」

 そう呟くと、又右衛門は宮部の昏い顔を思い出し、ぶるっと身震いした。

 宮部伊三郎。全く、底の見えない男である。家臣の誰とも親しくする様子も見せず、ただひたすら剣の道に励んでいる根っからの剣客である。

 そう言えば、今日は慈外流のほうに強い剣客が来ているらしい。宮部殿と試合しあうのは、その男だとも聞いている。

 どちらが勝つか、と思い、まあ、宮部殿だろう、と又右衛門は思った。

 宮部と特に仲が良いという訳では無い又右衛門も、彼の勝利は御家の勝利に等しい故、他の家臣同様、宮部の勝利を願う気持ちに変わりは無かった。

「宮部殿ならば、相手がどのような者だろうと後れを取る事はあるまい」

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