世一、歌詩する「北回り」
あなたの胸では泣けないと
小さなリースつまんで笑う
告げたあの日がよみがえる
べつにあなたのせいじゃない
こんな気分があっちゃ駄目 ?
何でも言えよと手を握り
ちゃんと云えよと肩を抱く
無理ヨ云えない云えるわけない
喧嘩したなら云えたのに
今夜の空にはカウチが揺れる
藍色深く垂れ込めて
北回り行き14時間
スターライトに抱(いだ)かれて
べつにあなたのせいじゃない
星にまどろむ今がスキ
アンジェの入り江に陽が昇る
教会前にはパームツリー
プロムナード・デ・ザングレの
ネグレスコ何も訊かずに
今夜のわたしにカウチをくれた
サルヤ広場のフラワーマルシェ
色とりどりの花咲き乱れ
冷たい風に 首を揺らす
メドサン通りの雑貨屋で
そっと手にしたレターセット
あなたに宛てた手紙を書くわ
チョット明るく思わせぶりに
海の風が目に染みたのと
エンドロールをしたため綴じるの
今夜の涙も猫足カウチに捧げるわ
どうしたと尋ねられても困る。
そういう気分である。
クリスマスが近いからね。
そんな気分の人もおいでかもしれない。
了
今、ヨーロッパ路線はロシア上空は飛べないからね。
北回りになるから14時間はかかるのだわ。
エコノミーは地獄だなこれ。