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シャブリ【世界に比類のない辛口白ワイン】

シャブリとは、フランスのブルゴーニュ地方シャブリ地区で作られている、シャルドネを原料として作られる白ワインの名前です。シャープな酸味が持ち味です。

シャブリ地区はどこにあるの?

ブルゴーニュ地方の最北端のヨンヌ県に位置しています。
オーセールから東へ20kmほど。
ブルゴーニュワインの中心地ボーヌからは 134 kmほど。
パリからは、200キロ弱のところにあります。

シャブリはどんな気候?

シャブリ地区はブルゴーニュ地方の最北端に位置しており、冷涼な気候です。夏は暑く、秋は穏やかで涼しく、冬は長くて厳しい寒さが続きます。

春秋の霜害や雹(ひょう)のリスクに見舞われるため、ろうそく・暖房ケーブル・散水などで対策がなされています。

内陸に位置していますが、わずかに海の影響を受け海洋性の傾向も見られます。年間雨量は、650から700ミリほど。収穫されたブドウのヴィンテージによってワインの味わいが異なる産地です。

シャブリを語るのに欠かせない土壌

シャブリのワインの美味しさを物語るのに欠かせない要素が、シャブリのもつ豊富なミネラル感です。この豊富なミネラル感を生み出しているものが、シャブリ特有の土壌なんです。

この一帯は今から1億年5千年前は海底でした。ジュラ後期に隆起して、牡蠣や貝殻などが混ざった石灰質の土壌が形成されました。この土壌はキンメリジャン土壌と呼ばれ、石灰岩と粘土泥灰岩の交互の層で構成されています。

シャブリのワイン産地は、スラン川をはさんだ両岸に畑が広がっています。スラン川から下流(海)の方に向かって、右側を「右岸」、左側を「左岸」と呼びます。

シャブリの荒廃と再生の歴史

シャブリはパリからほど近いため、早い段階から恩恵を受けていたエリアです。この地区で作られたワインは、オーセールの港からヨンヌ川を使ってパリの街に運搬されていました。

しかし、19世紀にヨンヌ県を避けて鉄道が開通されると、シャブリは廃れることになります。パリーリヨンーマルセイユ間の人や物の行き来が便利になり、シャブリ以外の土地のワインがパリに容易に運搬できるようになったからです。

さらに追い討ちをかけるように、フィロキセラという害虫がシャブリのワインに壊滅的なダメージを与えました。

2つの世界大戦を経た後のシャブリのブドウ畑はわずか550ヘクタールにまで減少しました。現在の約10分の1ほどでした。

生産者たちの執念と努力により、フィロキセラに耐性のある台木にシャルドネを接ぎ木し、ブドウ畑が新たによみがえりました。

現在、シャブリには広大なブドウ畑が広がり、新しい世代がワイン作りを引き継いでいます。親世代よりもさらに良い教育を受け、海外での醸造を経験した生産者も多く、伝統を大切にしながら革新的なワインを作ることに成功しています。

シャブリの格付け(アペラシオン)

シャブリのアペレーションは20の村にまたがり、グランクリュ(特級畑)、プルミエクリュ(1級畑)、シャブリ、プチシャブリの4段階に分類されています。

【グランクリュ(特級畑)】
一つの丘のうえに広がる理想的な日当たりの畑です。丘の中腹に位置し、水はけや風通しが良く、霜のリスクが少ないです。グランクリュの畑は7つあり、栽培面積は100ヘクタールほどです。

ブランショ Blanchots 12.68ha
レ・クロ Les Clos 25.87ha
ヴァルミュール Valmur 10.55ha
グルヌイユ Grenouilles 9.38ha
ヴォデジール Vaudesir 15.43ha
プリューズ Preuses 10.81ha
ブーグロ Bougros 15.07ha

ヴォデジールとプリューズにまたがるムトンヌ Moutonnesは、ロン・デ・パキが単独所有していて、歴史的に重要な畑のため、特別にグランクリュとして記載することが認められています。 

【プルミエクリュ(1級畑)】
南向きまたは南東向きの畑が大半です。栽培面積は800ヘクタールほどで40のクリマがあります。

スラン川右岸の丘陵地帯にあるグランクリュを囲むエリアと、対岸のスラン川左岸など、シャブリ地区のさまざまな箇所に散らばっています。

主な1級畑は、
モン・ド・ミリュー Mont de Milieu
モンテ・ド・トネール Montee de Tonneree
フルショーム Fourchaume
ヴァイヨン Vaillon
モンマン Montmains
メリノ Melinots
コート・ド・レシェ Cotes de Lechet
ボーロワ Beauroy
ヴォークパン Vaucoupin
ヴォグロ Vosgros
レ・フルノー Les Fourneaux

【シャブリ】
栽培面積は3500ヘクタールほど。フラットまたはなだらかな畑が多いです。

【プチシャブリ】
栽培面積は1000ヘクタールほど。キンメリジャンよりもポートランディアン(粘土石灰土壌)の土壌が多めになります。高台にある畑が多く、より冷涼な気候となります。ワインのスタイルは、フルーティな早飲みタイプです。

シャブリのワインのスタイル

シャブリはシャルドネの単一品種から作られる白ワインです。シャープな酸味ミネラル感が持ち味で、透明感があり、張り詰めた雰囲気が漂っています。

柑橘類白い果実を連想させるアロマが特徴で、ヨードっぽさや磯っぽさを感じる塩気が感じられます。

世界のどの産地でも同じワインは見られない純粋まっすぐな味わいは、土壌とシャルドネの相互作用の恩恵です。

ワインによっては、マッチを擦ったようなスモーキーなニュアンスも漂い、ラプサンスーチョン茶(松の煙で燻した中国茶)に例えられることもあります。

シャブリのミネラル感

ミネラル感はワイン醸造の過程で現れてくると言われますが、シャブリの場合はマロラクティック発酵が引き起こす反応がワインの味わいに大きく影響しているようです。

これは、熟成中の細かい澱の影響によるものだそうで、ワインは徐々に「ミネラル感」を帯びていくというのです。この現象は、タンク熟成か、木製容器での熟成かに関わらず見られるそうです。また、新樽を適度な割合で使用することで、ミネラル感が増すとも言われています。

シャブリの生産者

シャブリには300以上のドメーヌ(ワイナリー)があります。

シャブリジェンヌという協同組合は、「世界最高の生産者協同組合」と呼ばれていて、シャブリ全体の1/4という生産量を誇りながら、品質の面でも定評があります。

生産される約3/4を、上位15社のネゴシアンが占めているそうです。

さいごに

漠然としていたシャブリについて、理解が深まり少しすっきりされたらとてもうれしいです。

ブルゴーニュワイン事務局が発信している動画「空から見るシャブリ」では、シャブリの複雑な地形も一目瞭然です!


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