トランシルヴァニア料理 ナトゥール・ビュフェー
トランシルヴァニアとはどこだろう。東欧・ルーマニアの北西部、ドラキュラ伯爵の伝説で有名である。歴史上ハンガリー、ルーマニア、オーストリアと複雑に統治が変化したが、ハンガリーであった期間が圧倒的に長く、文化・言語もハンガリーの住民が多い。トランシルヴァニアとはラテン語で「森の向こう(の国)」、山脈に囲まれた緑豊かな地方である。
店名「ナトゥール・ビュフェー」はハンガリー語で「自然の食堂」という意味。「高級レストランではなくて、気軽に食べに行ける地元の食堂」がビュフェーなのだと、店主のラーザール・アティッラさん。愛知県瀬戸市で「ナトゥール農園」を営み、米・小麦・各種野菜を無農薬で育てている。栽培期間中、農薬や化学肥料を使わない、健康に良いものを食べて欲しいのだという。美味しくて安全な旬の野菜を料理した、トランシルヴァニアの家庭の味を提供する。
ランチ(11:00～)はワンプレート盛り合わせ。オーブンで焼いたチキン、自家製ソーセージなどのその日のメインを選ぶ。盛り合わせの内容は、日によって異なる野菜と肉を煮込んだ「グヤーシュ」。野菜の滋味にあふれ、添えられたご飯によく合う。4月にいただいたときは、ブロッコリーと、トウモロコシの粉を煮た「プリスカ」が付いていた。季節の収穫によって野菜が変わるが、どれも豊かで優しい味わい。
日替わりのスープもある。こちらも野菜の美味しさ全開。軽めに食べたい人は、スープ＋パンでもいいと思う。農園の全粒粉小麦を使った手造りパンも美味。たくさん食べる人は、ランチ＋スープ＋パンがよいのでは。
デザートには数種のスイーツ。「パラチンタ」はクレープで、巻き込んだジャムとクリームチーズのあっさりした甘さと、もちもちの生地が絶妙。珍しいお菓子をいろいろ試してみたいなら、テイクアウトもできる。
朝は8:30から営業。飲み物＋100円で朝食メニューを注文できる。
メニューは日によって変わるのでFacebookや、店頭の表示でチェックを。クリスマスやイースターには、ゆかりの料理が供される。
アティッラさんはスーパーマリオみたいなお鬚と穏やかな雰囲気。故郷では様々な家畜を飼い、農業も営んでいた。そして、名ダンサーでもある。『世界のダンス』の本の写真には、民族衣装で踊る若いアティッラさんと奥さんの大塚奈美さんの姿がある。ダンスのイベントやレクチャーなどで日本とトランシルヴァニアを行き来していた。2019年に奈美さんが育った瀬戸市に定住し、末広町商店街にレストランを開く。トランシルヴァニアの手刺繍や写真で飾られる、異国情緒あふれる店内だ。諸国の文化や音楽、踊りなども紹介するイベントも行われてきた。
2023年3月、瀬戸市文化センターに2号店をオープン、末広町店は不定期営業となっている。文化センター店は横長の窓に沿ってカウンター席が設けられ、外光と緑の木々が目を楽しませる。テーブル席も増え、1号店より広くなった。文化センターの駐車場が使えるのも便利だ。
ターンツハーズの日
「ターンツハーズ」とはハンガリー語で「踊りの家、ダンスハウス」の意味。もともとはトランシルヴァニアの村で、民俗舞踊を踊る集まりだ。1960年代から農村の踊りや音楽、文化の再評価が始まった。1972年には、ハンガリーのブダペストで「ターンツハーズ」第1回めが行われ、今年で51年め。この間にはユネスコ無形文化遺産にも登録された。
5月6日のターンツハーズの日に、新店舗で生演奏とディナーのイベントが行われた。
ギター・梅田孝仁とヴァイオリン・Gumiのユニット「梅ぐみ」が来場した。トランシルヴァニア、ハンガリー、ジプシーの音楽を演奏すると、アティッラさんが厨房から出てきて踊りを披露。複雑な足さばきと、曲に合わせて腿を「パン！」と叩く、激しい男踊りだ。一転、素朴で楽しい曲はカップルの踊りになる。アティッラさんの伸ばした腕の下で、奈美さんがクルクル回る。宴の最後にはGumiさんが「恒例の」と言う、全員のダンスになった。シンプルな動きだが、方向を間違えては笑いがはじける。「これが踊りの家！」ダンスと音楽とコース料理の、トランシルヴァニアに浸った一夜であった。
店舗情報
ナトゥール・ビュフェー https://www.facebook.com/naturbufe/
Tel:050‐5372-8710
文化センター店 愛知県瀬戸市西茨町１１３－３
瀬戸市文化センター 文化交流館２F
8:30～18:00（火曜定休）（18:00以降要問合せ）
末広町店 愛知県瀬戸市末広町３－７ せと末広町商店街内
（不定期営業、要問合せ）
参考文献
Facebook：ナトゥール・ビュフェー https://www.facebook.com/naturbufe
ナトゥール農園 https://www.facebook.com/naturkert
ターンツハーズ運動５０年記念 ターンツハーズと写真展
https ://www.facebook.com/naturbufe/posts/746297776748171
『世界のダンス』 星海舟 編 不味堂出版
ルーマニア観光局 https://www.romaiatabi.jp
パプリカ通信2004年10月号 鈴木仁 「踊り人生、待ったなし第2回 ターンツハーズ誕生の裏話」 https://paprikatsushin.client.jp
上杉あずき＠STEP
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか？