ライディング・ホッパー:チャプター1 #4
ライディング・ホッパー 総合目次
「『国引』が速度を上げました」
「え!?何!?」
液状化した街を抜け小高い裏山に突入したところで、トレミーが風切り音に混じって報告した。
「あんなウスノロタンクなら今の全速で振り切れるでしょ!」
「残念ながら、あれは既に戦車ではありません」
一体どうゆうこと、と口にしようとしたところで、スプリント走行するトレミーのすぐ隣をネオンライトのような光の帯が通り過ぎた。一拍おいてゴウンと暴風が吹き荒れ、彼のギアはバランスを崩してつんのめり、地面にめちゃくちゃに叩きつけられた。
目が回り吐き気がする。ふらつく視界を頭を振って呼び戻し、再度ギアを立たせると各部の異常がないか簡単に計器を確認する。稼働に問題なし。
「なに、今の……なに?」
「『国引』です。おそらく無限軌道をパージしたのでしょう。アカネの『フェアリーテイル』と同様です。……もっとも巽建機がフロート飛行技術を完成させていたのは初耳でしたが」
「ウッソでしょ。こんな弱小挑戦者に社外機密見せるとかありえる?」
「弱小、という言葉に私も含まれているのなら大変不服です。何かしら思惑があるのでしょう」
再び全速の走行を始めるが、あのスピードを見た後ではどう考えても追いつけはしないだろう。
「どうしますか?このまま走っていても差は開くばかりです」
「企業の御曹司相手じゃ真正面から競っても勝てっこないし……やっちゃおうか、ズルいこと」
ワタルの顔にいたずらっぽい表情が浮かんだ。
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