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【弱者男性×弱者男性 地獄のルームシェア回想記3話】殺意の芽生え

さて、オッサン2人による悲惨なルームシェア生活記録もここから後半に入る。ここからは、ルームシェア解消に向けて動き出してからの話になる。

過去の話を載せておくので、先に読んでおくことを推奨する。

今回は、
殺意を抱くほどひどかった彼の生活態度の話
存在がストレスになり、いびきに悩んだ話
解消のための動き出した話

に軸を絞って話していこうと思う

彼の生活態度

同居人(以後、彼と呼ぶ)は物の扱いなどがとにかく雑だった。
その粗暴さはすでに語ったところだったが、彼はその上で、雑にしていい領域とダメな領域の区別もついていなかった。

シェアハウスをしたことがある人はすぐにわかると思うが、シェア生活で個人的な領域となるのは、自分に割り当てられた部屋のみである。
台所やトイレ、風呂、脱衣所など、部屋以外の領域はすべて、同居する人間と共用なのである。
それゆえに、共用部分を使ったら後始末をしておく、というのは最低限のルールだろう。
(シェアハウスなどでは、共用スペースに私物を置かないなどのルールが当たり前にある)

彼はそんな共用スペースを荒らしに荒らした。
僕は何度か、その行いを指摘し、共用スペースを汚すなと話したが、すべて聞き流されてしまった。

ここまで聞いてみなさんがイメージする惨状と、実際に僕が目の当たりにした惨状はおそらく乖離している。
なので、彼がやってくれた共用スペース荒らしの具体例をいくつか挙げて、イメージをすり合わせておこうと思う。

彼の異常な荒らし方

おそらく、みなさんが考える荒らし方は
・食器を使いっぱなし
・電気のつけっぱなし
・私物を共用スペースに置く

などだろう。
もちろん、彼はこれもした。
だが、それ以上の行為も当然の権利のようにしていたのである。

彼は食器どころか、細かいゴミも捨てないのだ。
例えばカップ麺についているかやくや粉末スープの袋、割り箸の袋などを、そのままシンクに放置していくのである。
豆腐を使った際などは、空になった容器だけが洗い場に投げ出されていることもあった。剥いた野菜の皮で無駄に排水溝を詰まらせ、その後始末もまるでしないのも日常茶飯事だった。
これはさすがに注意をしたが、彼はヘラヘラするばかりで、この異常行動を改めることはしなかった。

共用スペースである以上、彼が荒らした後に僕が使用するのは当然のことなわけだが、そんなことは彼にとってはどうでもよかったのだろう。
すっかり舐められていた、格下と認識されていた証拠だろう。

途中からは、僕も彼の尻ぬぐいのような生活をすることに耐えられないようになってきた。彼が荒らした場所を片付けることに疲れてしまい、放置されたゴミを大小問わず放っておくことにした。
これにより、台所兼リビングは、次第に足の踏み場もない準ゴミ屋敷状態になってしまった。

当たり前だが、可燃ごみやビンカンのゴミ出しも彼はまったくしなかった。
たいていは、僕が我慢ならなくなって捨てに行っていた。

また、もう1つの共用スペースといえば、トイレ、脱衣所、風呂場である。
ここでも彼は好き放題やっていた。

トイレ

共同生活のトイレ事情でよく言われるのは、トイレットペーパーを替えるかどうかくらいだろうか。当然、彼は使い切ったトイレットペーパーを替えるような殊勝なことはしなかった。
なぜか、彼がトイレに入ると、汚物が便器にこびりついた。
最初は磨いていたが、馬鹿らしくなってやめた。
僕が出ていく前、トイレは見るに堪えない惨状になっていた。
今思うと、よほどの腹痛でもない限りは使いたくないレベルで汚かった。

脱衣所

脱衣所も好き放題にされていた。
住んでいた物件の脱衣所には洗濯機もあったが、彼は自分の洗い物をぶちまけて脱衣所のスペースの半分近くを占拠していた。放置された衣服は、汗のような加齢臭のような、ひどい臭いを放っていた。
(たまに洗濯すると脱衣所が広くなるが、彼は水栓を閉じないのでそれはそれで腹の立つ話である)
また、洗面台には小物が散乱していた。
どうやら彼は、ポケットに入っていた物を取り出してそのまま放置していたようである。
小銭、レシート、ガムの包み紙、タバコの空き箱、使用済み調味料の空き瓶などが放置され、そこに埃が積もり、僕が出ていく頃にはひどい有様になっていた。
(ちなみにマガジントップの画像は、出ていく前の洗面台の一部をモザイク加工したものである)

風呂場

普通に風呂に入る分には、水や垢の汚れができる程度のことだろう。
少し不精な人だったとしても、空のシャンプーボトルを少しの間だけ放置してしまうくらいが関の山だと思う。
しかし、彼の荒らしっぷりはそんな想像を凌駕する。
彼は風呂場で食事をする習性があったのだ。
先述した内容を見ればわかると思うが、食べた物の後始末はずさんそのものだった。
風呂場の窓近くのスペースには、
ジュースの空き缶、タバコの吸い殻、食器、包み紙
などがところ狭しと並べられた。
さらに、彼の後に入浴すると、湯船の中に食べかすが浮かんでいたこともあった。さすがにゾッとして、彼に注意もしたが、この悪癖はとうとうなくならなかった。
彼はムダ毛処理をした際もやりっぱなしのため、排水溝を大量の毛で詰まらせて放置することも珍しくなかった。すべて回収して口に押し込んでやりたい気持ちを堪えて、つまようじなどで端に寄せるのが精いっぱいだった。

今、思い出せる限りで書き出してみたが、こんなところだろうか。
彼が生活する場は、みるみるうちに不潔になっていく。
注意しても聞かないのだからどうしようもない。
僕も尻ぬぐいはご免なので放置するのだが、最終的にはあまりの汚さに根負けして最低限の片づけはしていた。

自慢にもならないが、あの家で他人に見せられるスペースは、僕の部屋だけだったと思われる。

1話と2話で話したように、ルームシェアを決断するほどにはあった彼への信頼はもはや尽き、このころにはマイナス領域に突入していた。

もはや、箸の上げ下げすら憎たらしいと思える有様だったのだ。

問題は他にもあった。

存在がストレスと化して

1話と2話を含め、ここまで話した内容が原因で、僕は彼を憎むようになっていった。

彼はドアの開け閉めも乱雑で、ドアバンを頻繁にした。
僕は家庭環境のせいでドアバンを聞くと動悸がしてしまう。その事情を含めてやめてほしいと説明したが、まぁ結果はお察しの通りである。

そして、彼の存在自体がストレスになっていくのである。

いびき問題

今度は就寝時の問題になるが、彼はいびきがひどかった。
壁を1つ隔ててもはっきり聞こえるレベルのいびきだった。

僕はもともと、いびきを不快に思うタイプではなかった。
カプセルホテルでびっくりするようないびきを聞かされたことは何度もあったが、特に気にせず眠れるくらいには図太かったのである。

だが、殺意の対象となった彼のいびきだけは許しがたかった。
彼のいびきの度合いで、僕の睡眠が左右される惨状となったのだ。

さすがに睡眠に支障があると生活が破綻する。
だが、体質の問題でもあるから悪しざまにも言えない。
なので、僕は彼にやんわりといびきを指摘して、改善グッズ(鼻腔拡張テープなど)を試すなり、耳鼻科に行くなりしてほしいと頼んだ。

しかし、その要望が通ることはなかった。
2回ほど指摘したが、それで返ってきた言葉は
『俺に花粉を全開で吸えっていうの!?』
(指摘したのが春のことで、彼は重度の花粉症だった)
②『神経質すぎww』

だった。
これを言われた日には、さすがに殺してやろうかと思った。

結局、何も改善されることなく、彼は毎晩遠慮なく大いびきをかいた。
自分で対策するしかないと判断して、僕は通販でいい耳栓を買った。

だが、彼のいびきは耳栓すら貫通した。
残念ながら、いびきの無音化にまでは至らなかったのである。
隙を見つけたのでアソシエイトの実験がてら使用した耳栓を紹介する。
彼のいびきをそこそこ軽減することはできたので、多少の音ならばこれで解決するだろう。

これは経験した人にしかわからないことだが、一定レベルを超えたいびきは、音ではなく震動なのだ。もはや枕に頭を乗せている時点で、避けられないのである。

耳栓をしたうえでヘッドホンをして、音楽を流してようやく気になるかどうか、というレベルのいびきが毎晩続き、僕は気が狂いそうな夜を繰り返した。

特に耐えがたい日は、眠ることを諦めて、丑三つ時に行き場もなく外をさまよった。いびきに満ちた家よりも、外のほうがマシだったのだ。

こんな有様だったため、僕はそのうち不眠症になった。
幸いだったのは、これを機にメンタルクリニックに行く気になったことくらいだろう。
精神疾患のお墨付きをもらうと同時に睡眠薬も処方してもらい、いびきに腹を立てる前に眠れるようになった。それでもいびきのせいで眠れない日はあったが…。

どうしても避けられない問題

家族にヤバい奴がいる人ならわかることだが、同じ屋根の下で過ごすということは、関わることを避けられないということだ。

僕は内心では殺意を抱きながら、彼と関わっていた。
なるべく避けるようにしていたが、避けられないのがルームシェアのつらいところである。

前にも書いたかもしれないが、彼の基本スタンスは『他責』である。

彼の話題は大きく分けて、

・今日あった些細な被害体験の愚痴
(大げさで口が悪く、舌打ちをまじえるため大変不快)
・世の中のコンテンツや創作物を馬鹿にする話
・ソシャゲの話

だった。

話を振られても、適当に相槌を打つにとどめていたが、話していていい気分になることはなかった。
不快なことを言われても、もはや指摘もしなかった。
彼が礼や謝罪を僕に言わないのは、骨身に染みてわかっていたからだ。


出ていくために


これだけ問題だらけの人間とのルームシェアなど、さっさと解消してしまえばいいというのがみなさんの抱く感想だろう。

だが、僕は長いこと無職ライフを謳歌したせいで貯金がなくなりかけていた。そうなると、なかなか働く気力が出てこないもので、職探しでも頭を抱えることになった。
ここで感謝するのも変だが、僕が再び自活できるようになったのは、彼のあまりのだらしなさと非礼さのおかげだろう。

こいつと生活を共にしたくないという強い意志が、僕を再び仕事をするというレールに戻してくれたのである。

求人票を漁る毎日を送った結果、僕は特殊施設の清掃という、なんとも珍しいアルバイトを始めることになった。
そして、性格的に向いている物書きの仕事を在宅で始めたのだった。

清掃のバイトは半年ほどで辞めたが、物書きの仕事が運よく軌道に乗り、生活費を捻出したうえで引っ越し費用を貯められるくらいの稼ぎになった。
(現在も、同じ仕事で生計を立てている)

こうして、引っ越しのための資金を貯め始めることができるようになったのである。

彼によるストレスで僕が壊れるのが先か、引っ越しのあてを見つけて脱出するのが先か。
希望を持って始めたルームシェアは、精神的な生死をかけた勝負に変貌していたのである。

とにかく引っ越す、そのための費用を貯める。
僕はそれだけを考えて生活するようになっていったのだった。

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