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【体験記】僕の障害年金戦争

だいぶ前に気分変調症と診断されて、障害者兼フリーライダーとして開き直って生きると豪語した。
その一環で障害年金を申請すると決めたのは、2023年の2月の事だ。

結果から言うと障害厚生年金が認定され、晴れて年金を頂ける運びとなったが、申請を決めてから受給までに1年2か月かかった。

認定から受給までにも半年かかり、消費者金融で借金するという闇の社会科見学までしてしまった次第である。

今回は、いちおうはひと段落した障害年金申請と受給までの道のりをザックリと書いていく。

僕の障害スペックと年金制度

まず、僕の病名とか初診日とか、もろもろを書いていく。
病名は気分変調症で、当時のクリニックの初診からは1年ほど経過していた。わかる人にはわかると思うが、障害年金の申請資格的にはこの時点でアウトである。

障害年金を申請するには、
まず初診から1年半以上が経過していること
通院を継続していること

この2点が前提条件になる

僕の場合、現在のクリニックの初診日を元に診断書で申請をすることは不可能だった。

また、障害年金には厄介な仕様があり、
初診日に
国民年金に加入していたら障害基礎年金
厚生年金に加入していたら障害厚生年金

に分類される。
厚生年金は症状が比較的軽い3級でも年金が出るが、前者は2級に認定されないと年金が出ない、という容赦のない制度になっている。

簡単に言うと、初診日に会社員や公僕なら障害厚生年金、そうでない国民年金加入者の場合は障害基礎年金となる。

長々説明したが、政府広報オンラインにこんな画像があった。

政府広報オンラインより引用

僕の場合、気分変調症の診断を受けた時はすでに退職していた。
つまり障害基礎年金に該当するので、2級の認定を受けないと詰みだ。
それ以前に1年半が経過していないわけだが…。

しかし悠長に待っていたら自分の精神が崩壊するのはよくわかっていたので、見苦しく抗うことにした。
普通ならあきらめるところだが、僕には別の手段があったのだ。

伏線というわけではないが、過去にこんな記事を書いていた。

僕はいちおう、前職で公僕をしていた。
そして上記の記事の通り、約10年前にパワハラを受けて休職をしていたのだ。
その時に、あるメンタルクリニックに初診でかかり、診断書を出してもらっていた。

つまり、
新しいメンタルクリニックで受けた診断を元にすると障害基礎年金だが、
パワハラによるダウン日を初診日にすれば障害厚生年金でいけるんじゃないか、という話である。

詐称のように見えるかもしれないが、ぶっちゃけ症状は復職してから今に至るまで続いている。というか、そもそもの原因は家庭環境由来なので、症状の波がありつつずっと鬱という感じだ。

というわけで、どうにかこの休職のタイミングを初診日にできないかと考えたわけである。

★まとめ★
・気分変調症の診断では申請するのにも半年待ち
(初診から1年半経たないと申請できない)

・↑の初診日では障害基礎年金になるのでハードルが高い
(2級に認定されない限りは無駄ボーン)

・かなり前、公僕時代に診断を受けた事ある
 前職の病院を初診にすれば障害厚生年金でいけるのでは…?

・しかしアホなので難しい手続きは無理

という感じだ。
早くも白旗状態になったので、素直に社労士に頼る事にした。

社労士事務所に行く


障害年金の申請には
医師の診断書(年金申請用)
申立書

などが必要となる。
僕の場合はさらに、
10年以上前に診断を受けた、当時の病院の証明書
も必要だ。

診断書は病名の証明で、申立書はその病気で社会生活に支障が出ていますという訴えの書類になる(ガバ解説)。
問題は申立書の方で、どう書いたらいいのかがまったくわからない。正直、障害を持つ人が自力で用意するのは無理なんじゃないかとすら思った。

診断歴もややこしいし申立書もわけがわからんから、社労士事務所の無料相談に赴いた。
障害年金の制度はややこしく、重い障害がある人ほど申請が困難という矛盾がよく指摘されるが、僕もその例に漏れず…というわけだ。

どうやら社労士の人たちは、そこを1つのビジネスにしているようだった。
障害年金は認定されるとまとまった金額が支給されるので、成功報酬としてそこからいくらかちょうだいするという、ありがたいようなこすいような商売をしているのである。
何はともあれ、今の僕にとっては渡りに船だった。

無料相談に行くと、中年の女性社労士が担当になってくれた。
この業務をしなければ僕のような低カースト男子とは縁がなかったであろう、一目で人生の正道をいってるっぽいのがわかるような人物だった。まぶしい。

出してもらったお茶を飲みつつ、アホなりに事情を説明した。

今の初診日じゃ期間満たしてないし、申請出してもたぶん無理
10年前の公僕時代の初診日で申請したい
復職から通院をやめていて、診断日は10年以上前
空白期間の申立てをどう書いたらいいのかわからない

などなど、年金申請でネックになりそうなことを話した。
これ無理ゲーじゃないか?と話しながら自分で思っていた。
しかし社労士さんはすごい、なんかめどが立ちそうになったのだ。

まず、先述の通り、公僕時代に受診した病院の診断証明書が必要だ。
これが難所で、病院がカルテを保管する期間は最低5年。
それ以降は病院ごとの裁量、つまり運ゲーとなる。

心臓をバクバクさせながら、かつての病院の番号を調べて問い合わせた。
病院次第で詰むという状況に肝を冷やしたが、問い合わせたらカルテが残っていた。

病院自体がなくなっている可能性もあった。
今もやっていたとして、5年以上カルテを保管する義理もない。
順当に処分されていたら経済的、社会的に死ぬところだった。
病院さんありがとう。

これで1つ目の関門はクリアした。
次の関門は、現状の症状を訴えるための、現在のクリニックの診断書だ。

過去の受診歴を加味した内容の診断書なので説明がややこしいが、診断書発行の依頼書は社労士さんが書いてくれた。

これで、今のクリニックで診断書を出してもらい、社労士様に申立書の作成をサポートしてもらえれば晴れて申請できるという運びになった。
大躍進である。

なお、僕が利用した事務所は着手料として20,000円かかった。
事務所によっては成功報酬のみらしいので、社労士を選ぶ時は慎重に吟味することをオススメする。
僕はアホなので、割のいい賭けだと思ってヘコヘコ20,000円を支払った。

医師に笑われた日


社労士と話し合ってから数週間後、通院がてら、メンタルクリニックに年金用の診断書の依頼に行った。

過去の状況を含めて相談すればいけるという算段を脳内で立てての来院だ。
当時の担当医は優しそうなおじさんといった人物で、

今回も頼めばサラッと出してくれるんじゃないか…?

という甘い考えで診察室に入った。

しかしそれが甘かった。
要件を話したところ、担当医は見た事のない反応をしてきた。

笑いながら、僕の症状では絶対に認定されないと即答してきた。
被害妄想かもしれないが、小馬鹿にするような嫌な笑いだった。

担当医のの言った事を箇条書きにするとこうだ。

・認定されそうな人にはこちらから言う
・勝手に社労士にまで話して何やってんの?
・認定されなさそうな人に診断書を出すと、後から面倒になりがち

などの理由を言われ、診断書の発行には33,000円かかるとも言われた。
取り付く島もないとはこのことである。

というか、割と頼っていた先生だっただけに、この反応はショックだった。

何度頼もうが診断書は出さない感じだったので、僕は転院を決意した。
紹介状を出してもらう時も、先生は『まぁ、がんばってw』と笑いながら言っていた。
たぶんどこ行っても無理だと思ったんだろう。
認定されたぞスカタンが。

今回の経験で痛感したが、障害年金申請には医師の協力が必要不可欠だ。
診断書を出してもらえなかったら何も始まらないわけで、生殺与奪を握られているに等しい。
そういう意味でも病院選びは重要なのだと痛感した。

あと、僕は診察時にヘラヘラしてしまう癖があったので、それもよくなかったのかもしれない。
この教訓から、最近は元気のない、ありのままの自分で医師と話している。
今の担当医はその様子にかなり引き気味だが、背に腹は代えられない。

ちなみに後日わかった事だが、

患者からの診断書の申し出を正当な理由なく断るのは法的にアウト
だそうだ。

転院先

さて転院すると決めはしたが、病院を変えるというのはかなりめんどくさい。

これまでの病院に紹介状を出してもらい、新しい病院に提出しないといけないのだ。
紹介状の発行にもお金がかかるし、新しい病院では初診料もかかる。
転院先が診断書を出してくれるかもわからない、というおまけ付きだ。
僕のようなクソ雑魚は工程を想像するだけで憔悴してしまった。

転院先でも診断書発行を拒否されたらたまったものじゃない。
なので、転院先の病院はかなり吟味した。

考えた結果、僕が重視した点は2つで

①頼めば出してくれる系の病院
(処方などもそうだが、あれこれ言わない医師が望ましい)
医師の人数が多く、変更ができる病院
(診断書を出すかどうかは医師次第なため、数を撃ちたかった)

ということで、漫画で有名なメンタルクリニックの支店に転院することにした。名誉なのか不名誉なのかはわからないが、コンビニ心療内科とも言われている。

メンタルクリニックは初診の場合、1か月単位の予約待ちがザラだが、さすがはコンビニ、すんなり予約できた。

全国展開しているような病院なら癖の強い医師は少ないはずだし、
そもそも医師がたくさん所属しているので、数を撃てる。
さらに同じコンビニ心療内科グループ内であれば転院が楽。
など、今の僕にはメリットが多かったのだ。
これが戦略的転院である。

とまぁ、万全な対策をしていたが、すんなりと上手くいった。
最初にあたった先生に事情を説明したところ、悪くない感触だったのだ。
診断書を出してもらうには何度か診察してもらう必要があるそうなので、しばらくは指折り数えながら同じ先生の診察を受けた。
病院の方針で、血液検査をされたのは誤算だったが…。

そんなこんなで、数回の診察の後に診断書が手に入った。
しかも、発行にかかった費用は10,000円程度である。
前の病院はなんだったのか。

★レビュー★
コンビニ心療内科とか、流れ作業のように患者をさばくだけとか言われているのもわからなくはないが、個人的には悪くない病院。
日曜日も診療しているし診療時間も長いので通いやすい。
通り一遍の対応でいいから処方箋や診断書が欲しい人にはオススメできる病院だと感じた。狙っている病院の初診待ちの間をしのぐ、という利用法もあるかもしれない。
外れの医師もいるかもしれないので、その場合は積極的に医師を変えよう。

というわけで、ついについに

公僕時代に受診した証明
年金申請用の診断書

この2つが揃った。
後は申立書だが、相談した内容に基づいて社労士様が助けてくれた。

これでようやく申請できる状況、いわばスタートラインに立った。
気づけば2023年7月下旬になっていた、動き出してから5か月である。


★余談★
さっきも書いたが、重要なことなので改めて。
障害年金申請や申請用の診断書の発行に対する反応は、医師によってかなり違う。1人の医師に障害年金を全否定された場合は、念のため転院などして別の医師の意見も聞くことをオススメする。
障害でなかなかうまく生活できない、働けないという人の希望が医師の個人的な思想や感情でゆがめられてしまう時点でおかしな話だが…。
そもそも年金が出るレベルの障害の人はこの工程もかなりきついし、つくづく矛盾を抱えた制度だと感じた。


申請から認定まで


ここまででも、正直めんどくさいし長い道のりだった。
しかし、障害年金は申請してから結果を待つ期間も非常に長いのだ

一般的に審査期間は2~3か月ほどと言われており、却下された場合は返事が早いらしい。
つまり、待つ期間が長いほどアツい。
僕は7月下旬に申請したが、3か月以上音沙汰がなかったので激アツと判断した。

これは認定されるんじゃないか?
と思いつつ、提出先は信用ならない前職の共済組合なので、待たされるだけ待たされて却下という最悪の結果もどこかで覚悟していた。

結局、通知が来たのは11月だった。



無事認定された。

障害年金を申請してからはお金のかかる用事が多く、体調を崩し続けていたため、本当にヤバい状況だった。
恥ずかしながら少し借金もしてしまっていた。
認定されなかったら返済の目途が立たなかったくらいである。


認定から支給まで

申請からの待機期間で債務者になっていた僕にはお金の余裕がなかった。
認定されたなら即日で、消費者金融ばりのスピード感で振り込んで欲しい。
それほどに困窮していた。

一般的に、障害年金は認定された次の支給月に、申請月からの年金がまとめて支給されるそうで、僕もグーグル先生にそう教えてもらっていた。
だからそこは覚悟していた。
11月に認定されたのだから、12月半ばに支給されるはずだと思っていたのだ。

なので、共済組合の場合は支給までの期間が通常と違う
という話を聞いた時は死ぬかと思った。

僕の申請先の共済組合は、認定から2~3か月で証書が発行され、実際の支給はその次の支給月になるそうだ。

共済組合の年金証書には発酵させる工程でもあるんだろうか?
と思わずにはいられなかった。

なお、最初に書いたように実際に支給されたのは4月15日だった。
11月に認定されたことを知ってから、さらに5か月待ったのである

その間に、消費者金融でこさえた少しの借金はそこそこの借金に膨れ上がり、支給された金額の半分以上は返済に消えた。
賭博破戒録カイジの終盤で、カイジが沼の勝ち分の大半を失って絶望するシーンがあるが、それに似た気分を味わった。

関係ない話だが、借金は本当によくない。
借りた時はお得感があるが、返済の時には道徳的に主張することも許されない剥奪感を味わう事になるのだ。
窮地を救ってくれたア〇ム様には感謝しているが、できれば二度と利用したくない。

とまぁ、こうして障害年金申請から受給、負債の返済と、ひと段落できた。

しかし、社労士への成功報酬の支払いがまだ残っている。
ゆとりをもって療養に活用できるようになるまで、あと数か月は頑張らないといけないようだ。

己の限界とのチキンレースはまだ続くのである。

ちなみに、支払いを全部終えたら、療養に専念するつもりだ。
年金のおかげで少しは安心感を持って生活できるし、これまでは高額で手が出せなかったような、私設カウンセリングルームの利用もできる。

結論

最後に、今回の申請で痛感した事をいくつかまとめておく。


①難しいなら社労士に相談しろ

書類の用意とか申立書を書くとか、本当にめんどくさいし難しい。
無理そうなら社労士に相談するの一択だ。
下手に自前で書いたとして、申請が却下されたら無駄骨どころかマイナスになるらしい。なんでも、一度審査に落ちると、同じ病名で再申請する時に非常に不利になるとかいう話もあるそうだ。
不服申し立ても可能だが、勝ち目は薄いとかなんとか…。

こういう不安と戦いながら、ルール不明の形式ばった書類を自前で用意するのは難しい。
障害年金受給資格に該当するレベルの精神障害者ならなおさらだ。

なので、多少の出費はあっても社労士に頼むのは有効な手というか、僕にとってはそれしかなかった。障害年金を検討しているなら、初回の無料相談だけでも行っておくことをオススメする。
事務所によっては着手料なしの成功報酬のみ、つまり年金が認定されて受給されない限りは料金が発生しないところもあるそうなので、悩んでる人は検索してみよう。


②通院は途切れさせるな

今回、僕は10年前の公僕時代の受診日を初診日にする力業をやった。
正直、かなり危うい運ゲーだったと言える。

こういうことにならないためのベストな手段は、継続して通院する事だ。

通院歴が途切れていない場合、障害年金は遡及請求ができる。
その期間はなんと、最大で5年間だ。
仮に年間100万円で年金が認定された場合、遡及可能額は500万円となる。
認定後の初回支給日には、この大金が一気に振り込まれるわけだ。

僕の場合、空元気で職場復帰して無理やり通院をやめていた。
かなりの空白期間があったため、遡及することはできなかった。
変に頑張った結果、数百万円の獲得機会を失ったわけである。

この事実を知った時もカイジになった。

しかし、これに関しては知らなかったので仕方ないと割り切るしかない。
むしろ、法定の倍以上の期間、カルテを保存してくれた病院に感謝だ。

これがなければ死んでいたのだから。


③1人の医師のいう事を信じるな

3回目になるが、障害者側からしたら生死にかかわる問題なので何度でも言っておく。

1人の医師を過信してはいけない。

精神科医も人間で、それぞれに主張やポリシーのようなものがある。

僕が最初に診断書をお願いした医師は、
『障害年金に該当すると判断した患者には自分から障害年金の話をする。
そうでなければ、いくら頼まれても診断書は出さない』

というスタンスだったのだと思う(違法)

当時は腹立たしかったし、厳密なルールで見ても医師が悪い。
しかし、障害年金の制度を知らず、なおかつ医師が重症と判断した患者には、すすんで年金制度を案内してくれるわけだ。
人によってはありがたいんだろうな、と今は思う。
(33,000円取る意味は分からないが)

そして、その先生は基本的には優しい人で、診断書の話までは気も合っていたことを補足しておく。表面的に上手くいっていても診断書を拒否される、渋られることはあるし、逆もまた然りということだ。

年金申請用の診断書を断られたら、とにかく別の医師にかかることをオススメする。
SNSでも、医師を変えたら状況が180度変わり、あっさり診断書が出たという意見はチラホラ見かける。

1人の医師に断られたからと言って障害年金を諦めるのは早計だ。
同じ病院内に他の先生がいるならそっちに相談してもいいし、なんなら転院も視野に入れよう。

医師は軽く言うが、当事者にとっては死活問題なのだ。


おわりに

当事者として調べ、申請してみてわかったのは、
障害年金制度が相当な矛盾を孕んだ制度だということだ。

正直、障害が重ければ重いほど、申請にたどりつけないようになっていると思う。生活保護の水際作戦のようなものだろうか…?

なので、申請したいけどよくわからない人は、まず社労士様に相談することをオススメする。初回の無料相談だけでも、申請のために何をしたらいいかがハッキリするはずだ。

以上。
社労士でも医師でもない、いち当事者の雑記に過ぎない内容だが、
この内容が障害年金を申請したい人の参考になれば幸いである。

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