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サッカー観戦経験のない友人がイングランドフットボールにハマった話


 フットボールを学びにイングランドに来てから4ヶ月が経過しました。段々と僕の中で見えてきたものがあり、面白い視点から、新たな視点からフットボールを見ることができています。学べています。
これからは、それを整理しながらまとめていく(共有していく)作業へと移っていこうと思います。


今回の内容は昨年の話になりますが、今だからこそ整理して綴れそうなのでこのタイミングで投稿します。(そういえばこうだったな、なんて思いつきもありまして)
長く滞在してフットボール文化に触れているからこそ見えてきたものがありました。



 あるきっかけを通して、イングランドで日本人女性の方と知り合いました。異国でできるバックグラウンドが同じ方との出会いとは、いわば最強で、日本出身という共通点の大きさは計り知れないものです。結局困ったときに頼りになるのは日本人ですし。
てなわけで仲良くなり、何回か会って話をする機会がありました。そこで、話題はフットボールに。
 この方はサッカー観戦歴はなし。イングランドでも日本でも。サッカーへの興味はあまりなく、ワールドカップがあれば日本の結果を見聞きする程度。聞こえが悪いかも知れませんが、サッカー素人な方でした。なぜサッカーに興味がないの?と、否定したいわけではありません。それが個々であり、決してスタンダードなことです。

しかし、友人や知人からの情報をもとにプレミアリーグの存在を知っており、また、イングランドにいるのなら一度は見てみたい。三笘選手を観に行きたい。と思っていたようでした。サッカーにあまり興味のない人を、こう思わせられるイングランドフットボールの凄さに驚きを感じつつ、良い機会だなと思いフットボール観戦のお誘いをして、一緒に観戦することになりました。




僕たちが一緒にスタジアムに行ったのは10月29日
ブライトンVSチェルシーの試合。
「人生初サッカー観戦がブライトンVSチェルシーだなんて一生自慢できますよ!」と何回伝えたか分かりません。笑


駅で待ち合わせをして、スタジアムへ向かいました。イングランドフットボールのスタンダードである、駅やバス停からサポーターが応援歌を歌い、試合前からムードを作る。戦いはここから始まっています。
また、この日はいつもと違うような、いつも以上の雰囲気を感じました。それもそのはず、ククレジャ、ポッター監督をチェルシーに引き抜かれて、その2人を相手チームとして迎える試合。ブライトンは監督交代以降勝てておらず、この試合の位置付けというのはとても高いものでした。(当たり前のようにそれをサポーターも熟知しています)


多くのサポーターの大合唱を駅で見た友人は、驚き、怖がっていました。笑
「初観戦、楽しんでもらえるかな」と不安を持ちつつ満員電車に揺られていたのを覚えています。


不安材料はそれだけではありませんでした。チケットを事前に取ることはできたのですが、連番でのチケットを買うことはできず、僕らの交渉力と運次第で席を交換してもらうほかなかったのです。
僕がシーズンチケットホルダーで固定の席なのでやむを得ません。


スタジアムに入り僕のいつもの席へ行くと、慣れ親しんだ仲になった隣の席の家族が出迎えてくれました。シーズンチケットの良いところは毎回同じ席で、周りのサポーターも同じ方々。(シーズンチケットホルダー者が多いのもイングランドフットボールの特徴だと思います。)
もう互いに顔を覚えて挨拶を交わす仲になります。


すると陽気なお父さんが、
「今日は友達もいるんだね!あ、今日お母さんが来れなくなってしまったんだ。だから友達、ここに座っていいよ!」
僕らが交渉する前に、こう声をかけてくれたのです。まさかこんな展開になるとは思ってもいませんでした。
こんな奇跡あるんだと大感謝をしながら着席。
勿論チケットは完売の満員ですから本当に奇跡です。


更には、怪我で出場が危ぶまれていた三笘選手がスタメン。プレミアリーグ初スタメンがこの試合だったのです。奇跡に奇跡を重ねて試合前から出来すぎていました。



試合は前半開始早々、三笘選手のアシストからトロサールで先制。オウンゴールを2回重ねて3対0で前半を折り返し。
後半早々1点を返されるも、なんとか耐えて最後にダメ押しゴールを決めて試合終了。
ブライトンが4対1でチェルシーに勝利。


こんな素晴らしい日はあるのでしょうか。
デゼルビ監督就任後初勝利がポッター監督率いるチェルシーで、ブライトンがチェルシーに勝ったのも史上初でした。
英国人っぽくいうのならまさに、Brilliant‼︎


サッカー観戦経験なしの友人を誘った試合、頼むから勝ってくれと願っていました。
様々な不安材料があった中で、このどんでん返しにはさすがに痺れました。


そして、何より嬉しかったのは、友人が試合を楽しんでくれたこと。フットボールを好きになってくれたことでした。




友人が楽しそうにもどこか熱狂した後の疲れを伺えるような表情で発した、「凄い芸術だった。。。」
という言葉を僕は忘れません。

フットボールは芸術。
ああ,確かになと,思わされました。
僕もこの感覚凄いありますし、とても感じます。


試合という作品を選手だけでなくクラブ、街、地域サポーター、全員で作って行くような感覚なんです。僕らサポーターも、作品(試合)を作るための大切なピースとなっているように思います。
本当に全員で試合を創るという感覚がここにはあります。言葉だと伝わりにくいかもしれませんが…


スタジアムの外からクラブのエンブレムのついたものを身に纏い、駅から大合唱。ムードを作り、スタジアムに入れば大合唱。
満員で選手の入場を迎え、入場時にはサポーター総立ちで拍手を送る。
歓声や声援で選手を後押しというよりは、一緒に戦い熱狂する。
ゴールの匂いがすれば、全員が腰を浮かせ前のめりに。ネットが揺れれば、声を荒げて、喜びを表現。沸くサポーターと、沈黙と静けさに溢れるサポーターのコントラスト。
煽り煽られの繰り返し。
選手やボールが自分たちの目の前にくるや否や声援と共にカメラで選手を映し出す。
ボール奪取、切り替え、チャンスシーンによって繰り出される拍手と声援と煽り。
勢いと流れを僕らで作り出しているような場面すらあります。


言ってしまえば、1つの試合を創り上げることにサッカー観戦経験なしの素人の方でも入り込める。巻き込めるような場所があるというわけです。



イングランドに来るまではイングランドフットボールファンはみんなコアなファンばかりというイメージでしたが、実際はそうでもないということが分かってきました。人それぞれの楽しみ方があるのがフットボールの魅力であり、良さであります。
ワールドカップ期間もパブでは老若男女各々の楽しみ方をしていて、女の子集団がユニホームを着てビールを飲みながら観ているというのが当たり前に見える光景でした。
サッカーを知っている知っていないとかくだらないことはどうでもよくて、人それぞれの楽しみ方で入り込める、熱狂できるのがフットボールです。勿論国民性も関係しているとは思いますが、(変に周りを気にしないような)それがイングランドには根付いています。


友人はフットボールの楽しさを知り、また行きたいと言ってくれました。後日また、カラバオカップ、アーセナルVSブライトンの試合を観に行くことに。
この試合も凄まじくて、エミレーツスタジアムで三笘選手が勝ち越しゴールを上げアーセナル相手に勝利をしました。
後々知ったのが、三笘選手のユニホームをオンラインで購入していたということ。笑



最初の試合から彼女は、チャンスが来れば腰を浮かせてゴールを期待し、拍手をして、チャントを歌い、ゴールが決まれば熱狂して声を荒げ、ダメ押しゴールが決まれば相手サポーターが帰って行く姿を見て(これまた1つの芸術)大喜び。
もう完全にフットボールの魅力に気づき、染まっていました。
気づいたときには楽しんでいた。入り込んでいたという感じでしょう。

誰でも各々の楽しみ方で入り込める、熱狂できるのがフットボールである。どれだけフットボールを知っているかとか、理解しているかなんて関係ない。
ただ、全員が共通して、フットボールが好きかと問われれば首を縦に振るだろう。好きの度合いは様々だが、全員が首を縦に振るだろう。
好きの度合いも関係ないし、誰だって試合を創るピースになれるのです。


コアなファンだけでなく、意外とこういった好きか問われれば好きと答える層の厚さが、イングランドフットボールを支えているのかもしれません。

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