たなか

絵を描きますが、文も好きだから書きます。壊れたように頭を駆け巡る忘れられない出来事をつ…

たなか

絵を描きますが、文も好きだから書きます。壊れたように頭を駆け巡る忘れられない出来事をつらつら書いていきます。

最近の記事

2024.11.1

でも日常ってのは退屈で、平穏ってのも毎日続くと退屈である。幸せなんかも実感は限定的な瞬間だったり、思い起こしたり思い込んだりする妄想なのかも知れない。例えば、大変不愉快な言い方をすれば、結婚とはもう無理に幸せにならなくて良くなるそのようなものと思っていた気もする。 焦燥、不安、緊張を幼い頃から常に持ち続けていた私には安全基地といえるものは無く(サナトリウムだろうか)安心感にピンと来ない。それをある人は「サバンナで生きてきた人がある日突然馴染む訳がないですよ」みたいな事を言っ

    • 文芸社詩歌句大賞 「無風に手を振る」落選作

      ✴︎文芸社詩歌句大賞2024 「無風に手を振る」 tanaka azusa 旅に出る事にする 見間違えた白猫みたいなコンビニ袋と 騒り雨、ガラスケースで呼吸する花々は人「次、止まります」 しあわせになる必要がなくなってとても笑えたジューンブライド 子の胸で眠るゆふぐれ親であることを忘れて落ちゆく雲雀 狂うのが嫌でなるべく平凡な道を選ぶが悉く雨 さきました、さいたんですね、ええ君とまた手を繋ぐ為にいつつも 透明な傘越しに見る君の目が濡れているかもしれぬ六月

      ¥150
      • 4:32

        髪と瞳の煌めきだけが妙に美しくそれ以外は、年相応それよりかは異様に老けて見える落ち窪む瞼の影、まるで心臓まで突き刺せと言わんばかりに浮き出た胸骨、それから少女のような佇まいと蒼白い皮膚は何故か奇妙なおぼこさを感じるようなアンバランスでいて、絶妙な危うさが魅力だったと思う。 私でさえ彼女のことを良く知らないし、彼女は誰とでも打ち解けあっけらかんとしているもんだから大抵の人間からは馬鹿に思われただろうと思うし、それは彼女の唯一の自己防衛と世渡りの術であったんだろう。それに気づく

        • Il peut faire son testament.

          都内のタクシーは車窓にて頬を冷やしつつ泣いていても話しかけない。温もりか冷酷なのかは知らないが雨の続く日曇る窓辺にハートを書いた、ありきたりの。SOSなんて出した所で私は上手く助けて欲しいと言えないだろう。 夜遊びがすきだった、死んでも良かった。 子供を大切にしている、子の父に感謝を少ししている。 お母さん、ありがとう。私はお母さんの自己犠牲が苦手だった。もっと自分を着飾ったり楽しんだりしてほしいな。封筒にこんな大金を入れたら駄目だよ。私はそれをあっという間に使ってしまう

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          トラウマだ。 悲しい事にそのトラウマは大変美しかった。 時間を止まったような人、というのがいてね。 いつの季節もいつの街を歩いても同じ歩幅で同じ顔つきでその瞬間の風を絶えず浴び続けている。 そういう人はなんだか良く笑う。 泣き顔のまま、なんだか良く笑っている。 瞼に刺さる秒針は濡れて動かぬ時計の目玉だ。 悲しい事に人はそれを美しいと思った。 儚いものが好きな不埒な客だ。 仰向けで泣けば耳に入ってきて不快だよ。 落ちる少女の手を引いて助け出す少年の装画の小説があって、返

          20代で死ぬと思っていた長くてくだらない話

          20代で死ぬと思っていた。 なんでだかは知らない、女だからかもしれない。 出来るだけ生き急いだ、やり残した事がないようにめちゃくちゃに生きた。でもついこないだ、20代を終えてもなんか死んでいなかった。 ほら、死ぬ気でとか必死とか言うと、その熱量やなりふり構わない様子にヒヤヒヤしたり眉を顰めたりされる。いや、理解出来る。猛スピードでブレーキの無い車体を壁にぶつかりながら修理してまた走り出している車が居たら、私も少し休め、車を降りて歩けと言うだろう。 人より少しだけ苦しい思いを

          ¥100

          20代で死ぬと思っていた長くてくだらない話

          ¥100

          untitled(執筆中)

          うっかりしていた。 20代で死ぬんだとばかり思っていたので、やり残した事はないか隈なく探して生き急いでいた。 女が20代で死ぬのなら全てを使い切らなければならないと思っていたから美しさというものは必需品であった。そうこうしている内に〝もしかしたら長生きするのかもしれない〟という可能性が浮き彫りになり人生を変える必要性があると判断した。 とは言え、こんな無茶な生き方をしてきた代償は大きくツケが回ってきたように体を壊し続ける日々で、都度自分と向き合いながら死を側に置いていたら、死

          untitled(執筆中)

          現代短歌社賞落選短歌連作

          今回、凡ミスにより二回も出してしまい普通に失格となってしまったのでここに供養します。 南無阿弥陀仏!また来年やるぜ! 「memento mori」 この間〝memento mori〟と言いながら 地獄が蝶に変わるのを見た 七竈泡立ちながら 美しき殺人の用意万全である そこにある殺虫灯でくたばった蛾はわたくしの死様だろう どうせなら地獄も連れていくがいい 天国になど行くつもりなし 水銀を口に含みし夏蝶よ 綺麗な死に方など無いのです 荊道ワルツ踏む度血が滲む なんて事

          ¥210

          現代短歌社賞落選短歌連作

          ¥210

          腰骨の痣儚げに横転しゆく

          なよやかな腰骨の痣儚げに横転しゆく私は女 ザラザラした声鳴らして数年でなんだか草臥れてしまった君からのLINEを気にしながら銀杏を踏んでいた。銀杏だったか?いや銀杏だ。 寂しいと言うと君は困るので、寂しいと言わなくなってから本当に寂しくなってしまって私は何に怯えていたのか分からなくなってしまった。私が行きたいと言ってすぐに連れて行ってくれた旅行で夕飯の懐石料理に飾ってあった葉は見事に青かった。 私は人間である前に女であるのか、女である前に人間であるのか時々分からなくなって

          腰骨の痣儚げに横転しゆく

          パイプオルガンから銀貨、半壊したカーブミラーがこちらを見るので

          私は貧乏育ちであるし今はお金持ちでもなんでもないが、君のその浅はかな安っぽい風化のさせ方には腹が立って仕方が無い。私達は美しいものがすきだったけど、金の払わない君が出ていく時にこじ開かなかったから諦めた貯金箱の数枚の100円玉を花束に変えてエモがるなよと思いながら蟻を潰した。嫌いな故郷に逃げ込み数年が経ちくすぶっている自分が言えたものじゃない。半壊したカーブミラーに歪んだ不細工が映ったので考えるのをやめた。 苦しくて恨まずにいられない。 心にはバランスがあり、人よりも苦痛に

          パイプオルガンから銀貨、半壊したカーブミラーがこちらを見るので

          モルヒネで最期の言葉が聞き取れない

          母方の祖父は私が14歳の時に死んだ。 私にとって週末行く祖父の家が、祖父の存在こそが、シェルターであった事を知るのはずっとずっと先だ。 まず祖父は、今となれば駄目な部分がある人だったのかもしれない。でも、私を溺愛しどの孫より妹より私をお姫様扱いした。 正直の所、私は祖父や母や近所のおばちゃんやおじちゃんがずっと気にかけて手厚く見守ってくれていて大切にされるのが怖かった。私には理解が出来なかった、他人を無償で見返りもなく尽くす自己犠牲とも言えるような暖かさから逃れたいとも失礼

          モルヒネで最期の言葉が聞き取れない

          ムーン、いやブルーライト

          あの時はごめんなさいと俯くと夜風のようにいいよと言う 私のどこが好きか聞くと、顔が好きと言う。あと、優しいからと言う。でも、私もそうだ。 その他の事はもう限りなく些細で、年月が経ち、馴染んでいて透き通るように心地良かった。 あの時数年ぶりにあったあの人は美しい枯れ木のようにやつれていて別人になっていた。それでも尚、顔の造形が整っていて涼やかだ。きれいだ。それと同時に自分のしてしまった事を思い、いかに被害的だったか気付かされて心が痛んだ。振り回して傷つけて突き放して、それで

          ムーン、いやブルーライト

          ディストピア

          バスタブに張った湯はショッキングピンクにした。カシスとバニラ、それからシナモンの香りらしいんだけどそれでもどうも匂うなあ。どうせなら泡風呂にしてしまおうか迷ったけど、君が文句を言いそうなのでやめた。 なんにせよ、もう私たちは終わりで、それから始まりだった。 美しいロココ調のスイートルームに辿り着くまでにいくつもの試練を乗り越えた。もう説明したくないくらいのプランを練った筈だったけど現実は甘かった。沢山の罵声を浴びて、人を騙して、都会を縫って、逃げて、逃げて…「ねえもう!疲れ

          ディストピア

          モーヴピンクの

          薄暗い部屋で視界に入ってきた埃を強迫的に取り上げて捨てる。そうするとまた別の汚れが気になってしまう。私は半狂乱になりながら近視の瞳をこらして床を磨いているが、白いテーブルには昨晩飲み残したデザートワインのコルクが空いたままになっているのだ。そういう女だから、そういう女だから、蓋を開けると化け物を見たような引き攣った顔をした男が泣きべそをかく。 いつからかと言われても、最初からどうかしているのだから分からない。タイマーがなり、息切れをしながら本日分の薬を開け丁寧にはさみで切り

          モーヴピンクの

          congenital alley cat

          きみの家は実はつま先で、歩いている。 あんまり触れていると足を引っ張られて帰れないでしょう。酷く冷たいコンクリートは、私の昔に住んでた家ににていたね。母を呼ぶような眼差しの男に惹かれて傷付くのは性か。惹かれてというのは恋ではなくて、そうではなくて魅力的だ。 私より先に死ぬ物は大切にしなくてはならない。 首筋のところを美しい薬指が伝っているのか涙なのかさっぱり分からないが非常にどうでも良い。 死にたい、死にたいと言う意味合いの好きである。 

          congenital alley cat

          Broken Spring

          https://youtu.be/7SfpvdDS8D0 周回遅れのローファーの音。 私は向い風のように迫りくるセーラーの集団を避けながらLo-Fi化する視界を擦る。 踏み潰したことない踵の固さを感じている。 病弱な君の青白い額には春 ようやく訪れた春。なのに汚れない襟をフルートのように唇を当てる。 苦しかったでしょう。 でも、かさぶたを剥がすから忘れないでしょ? 忘れてはいけない気がするんだよ。 もういっそお守りにするんだ。 もう君の街は葉桜? 桜って薄汚れた灰色って思

          Broken Spring