見出し画像

魅力が伝わるキャッチコピー講座 前編  秩父みんなの宣伝部 #8

この記事は、埼玉県秩父で活動するクリエイティブ会社「浅見制作所」がローカルラジオ「ちちぶエフエム」でお届けする“聴いて試してPR!秩父みんなの宣伝部”をテキストにしたものです。

全12回を通して、PRの基本的な考えからブログやSNSの活用法、発信術まで、地方の事業者さんにお役立てできる情報をお届けします!

第8回はキャッチコピーのお話。「魅力が伝わるキャッチコピー講座 前編」と題してお届けします。

聞き手:ちちぶエフエムパーソナリテイ 伊藤美裕紀

そもそもキャッチコピーとは?

伊藤:
本日は「魅力が伝わるキャッチコピー講座 前編」です。

浅見:
はい、よろしくお願いします。
さっそくですが、そもそもキャッチコピーって何だと思いますか?

伊藤:
伝えたいことをギュッとまとめて一発でポンっと出すのがキャッチコピー、ですか?

浅見:
長嶋監督みたい(笑)。キャッチコピーは、人の心や目線をキャッチして伝える言葉ですね。短くて簡潔であることも特徴のひとつです。ちなみに、「アイキャッチ画像」は聞いたことありますか?

伊藤:
ホームページやweb記事の目立つところにある画像でしょうか?

浅見:
そう。まさにアイ(eye)、目線をキャッチするための画像ですよね。

伊藤:
なるほど。

浅見:
では、ここでクイズです。「マチのほっとステーション」といえば?

伊藤:
ローソン!

浅見:
ですよね。「ココロも満タンに」は?

伊藤:
エネオス……?

浅見:
コスモ石油ですね(笑)。

今出したのはとても有名なキャッチコピーです。ローソンのキャッチコピーは、みなさんが住む街にローソンがあることを知っているからイメージできる。コスモ石油もすでに耳馴染みがありますし、「満タン」というところでガソリンスタンドをイメージできますよね。

伊藤:
そうですね。

浅見:
ただ、この2つのキャッチコピーって、今でこそわかるけど結構抽象的じゃないですか。抽象的な言葉って、「誰」が発するのかが非常に重要なんです。たとえば、僕の写真に「今だ」って書いてあるよりも、北野武さんの写真に「今だ」って書いてあるほうが強いメッセージになりますよね。

伊藤:
たしかに。

浅見:
とはいえ、僕たちが作るのはここまでかっこいいものじゃなくていい。お店や企業が発する言葉として違和感がなくて、誰でもわかる言葉であればいいんです。

伊藤:
かつ、短い言葉。

浅見:
そう。キャッチしてもらうために、「ひと目で理解できて、短く簡潔であること」が重要なんです。


実態とキャッチコピーは、一致してなければならない

伊藤:
短くて簡潔であれば、何でもいいっていうわけでもないんですよね?

浅見:
そうですね。そこが「誰が」の部分です。ローソンにしてもコスモ石油にしても、それぞれがどんなサービスを提供していて評価がなされているか、みなさん知っていますよね。つまり、キャッチコピーと実態が一致している。

伊藤:
これまでの放送でも、提供している商品やサービスがよくなければ意味がなくなるどころか、逆効果にもなってしまうとお話していましたよね。

浅見:
そう。言葉だけ取り繕っても意味がないんですよ。やっぱり自分たちの商品やサービスがよくて、お客様がよいと思ってくれていて、成り立つんです。あとは、ターゲットに刺さるかどうか。誰に向けてのキャッチコピーなのかは、当然ながら考えないといけません。

伊藤:
秩父の人に向けてなのか、観光客に向けてなのか。年齢層や性別によっても使う言葉は変わりそうです。「誰に対して何を伝えたいのか」は、本当にこの番組でよくお伝えしていますよね。

浅見:
そうですね。何度もお伝えするほど重要だということです。


伝えたい相手を想定して、具体的に伝える

浅見:
ここからは、伊藤さんが作っているサウナハットを「みゆきハット」という商品名としてキャッチコピーを考えてみましょうか。

伊藤:
キャッチコピー、作ったことないです(笑)。

浅見:
やってみましょう! まずはターゲットですね。伝えたい相手はどんな人ですか?

伊藤:
えっと、20代〜30代ぐらいのサウナが好きな男女ですね。

浅見:
サウナ好きっていうのは前提ですよね。
じゃあ次は、サウナが好きな人はどんな人か考えてみましょうか。今はサウナブームだから、「ととのう」という言葉も当然知っています。サウナに入って水風呂に入って外気浴をする、という一連の流れを知っている人でもありますよね。

伊藤:
そうですね。

浅見:
これってサウナだけじゃなくて、たとえば秩父のホルモン屋さんでいうと、ホルモンが秩父の名物だということは地元の人は知っているわけですよ。この前提条件を把握するのには理由があって。キャッチコピーは短くて簡潔である必要があるとお話しましたが、そうすると、あまり説明を入れられないんですよね。

伊藤:
長くなってしまうから。説明を入れないために、相手がどこまで知っている人なのかを想定しておく必要がある。

浅見:
そうです。この間の放送で出てきた秩父の「坂氷」という地名も同じことです。知っているかどうかで、説明の必要性が変わってくる。

伊藤:
なるほど。

浅見:
ということで、ターゲットは想定できました、と。じゃあ、どんなことを伝えたいですか?

伊藤:
洗濯機で洗えて、カラフルなサウナハットです。……そのぐらいですかね。たいして変わったものは作っておりません!

浅見:
洗えないものもありますよね?

伊藤:
あ、そうですね。最近は手洗いできるものも増えてきましたけど、なるべく洗わないでくださいっていうのが多いですね。

浅見:
手作りであることも、ですよね。

伊藤:
あ、そうですね。ひとつずつ、受注生産しております。

浅見:
いいですね。大事なポイントが出てきました。ちなみに、カラフルというのはどれぐらいカラフルなんでしょうか?

伊藤:
サウナハットは6枚の型紙をベースにして作るので、12色の中から6枚選んでいただけるんです。1枚あたり12色の中から選べるので、12×12×12×12×12×12……?

浅見:
何万……計算できないですけど(笑)、すごいパターンがありますよね。それは、カラフルじゃなくて具体的な数字にしたほうがわかりやすいしインパクトもありますよ。

伊藤:
抽象度が高いものは、具体的に数字を示す。

浅見:
そうそう。今の話だと、12色から選べるのももちろんいいです。でも、実際に計算してみて1万とか10万とか数が大きいと、「えええ!?」ってなるじゃないですか。これが人の心をキャッチする、ということですよ。

伊藤:
なるほど! 飲食店だと、「お得に食べられる」ではなくて、「何種類の〇〇が食べられる」ということですね。

浅見:
その通りです。「重い」だと人によって違うけど、「500kg」だと「おお!」てなるじゃないですか。そういうことです。

伊藤:
そうですね。反対に、「うちはそんなにバリエーションない」「数字を出すことで少ないと思われてしまうかも」という場合は、あえて抽象的にしたほうがいいですか?

浅見:
おっしゃる通りで少ないと思われることもあるんですが、それほど気にしなくていいと思います。というのは、たとえば「20種類のメニュー」と言われても、多いのか少ないのかわかんないじゃないですか。でも、「豊富なメニュー」と書かれていて、20種類だったらどうでしょうか?

伊藤:
豊富じゃない、と思うかもしれないですね。

浅見:
そうなんですよ。なので、捉える人によってギャップができるようなら、具体的に言ったほうがいいんです。


伝えたい相手にどんなイメージを持ってもらいたいのかを考える

伊藤:
さて、ここまでは大きく分けて3つのポイントをお話してきました。キャッチコピーはわかりやすく、短くて簡潔であること。実態を表していること。そして、抽象的なものは具体的な数字にしたほうが伝わりやすい、ということでしたね。

浅見:
そうですね。あとは、「相手に抱いてほしいイメージ」を考えることも重要です。

ホルモン屋さんだったら、ホルモンそのものが美味しいのか、家族みんなで楽しめるお店なのか。それによって、伝える内容が変わってきます。サウナハットだったら、どんなイメージを抱いてもらいたいですか?

伊藤:
自分で好きな色の組み合わせでサウナハットを作ることができるので、色を選ぶ楽しみを感じてほしいですね。あとは、ご家庭で手軽に洗濯機にポイ! で洗っていただけるとか。

浅見:
なるほど。今出た話はお客さんにとってのメリットになるので、キャッチコピーに入れたいですよね。仮に356色だとすると「356色から私好みの選べるサウナハット」とかもキャッチコピーになります。普段使いとして洗って使えることを伝えたいなら、この言葉をキーワードとして組み合わせる。こうやって考えていくと、冒頭で話したローソンやコスモ石油とは違った作り方をしていることは感じてもらえるかと思います。

伊藤:
たしかに、具体的なイメージが必要だということがわかります。有名なキャッチコピーのように、さあ渾身の作品です! みたいにやらないといけないと思ってましたけど、違うんですね。

浅見:
そう。わりとロジック的というか。感性で作るものじゃないんです。「誰に対してどんなことを思ってもらいたいから、こういうキャッチコピーにする」ていう感じ。

伊藤:
客観的に物事を捉えて、ターゲットを定めて、商品やサービスの特徴を箇条書きにする。そういうところからスタートするといいですかね。

浅見:
そうですね。ひと通り出していくといいと思います。


キャッチコピーを「どこ」で使うか

伊藤:
浅見さんは、普段どのようにキャッチコピーを作っているのでしょうか? やっぱり箇条書きで?

浅見:
そうですね。僕の場合は慣れてることもあるので頭の中で箇条書きにしてますね。そこから、サウナに入っているときに思いつく。

伊藤:
それだと感性になっちゃいます(笑)。でも、慣れてくると、そういうことができるということですね。

浅見:
ですね。例として、最近僕が作ったキャッチコピーをご紹介してみますね。

横瀬町の「金子製材株式会社」さんのホームページを作りました。そこに入れたキャッチコピーは『空間に「木材」を届けるプロフェッショナル』ていう、わかりやすさを意識しています。

(出典:金子製材株式会社ホームページ

伊藤:
すごくわかりやすいですね。

浅見:
木材のプロが必要だということが伝わるといいなと思って作りました。ちなみに、その下に「金子製材株式会社は、創業90年を超える秩父地域のJAS認定の製材業者です」とありますよね。

伊藤:
説得力が増しますね。

浅見:
そう。キャッチコピーは「どこで」使うのかも大事なんです。この場合だと、『空間に「木材」を届けるプロフェッショナル』の下に、「金子製材株式会社は、創業90年を超える秩父地域のJAS認定の製材業者です」がある。抽象的なものは具体的にするという話がありましたけど、この創業90年をキャッチコピーに持ってくるのもありなんです。

でも、これは補足として入れても大丈夫だろうという判断をして、キャッチコピーにはしなかった。理由は、このホームページを見る方が、「すでに金子製材さんを知っているお客さんが多い」ためです。

伊藤:
なるほど。誰に伝えるのかというターゲットを想定していたから、創業90年はキャッチコピーにしなかった。

浅見:
そうですね。もうひとつ見てもらいましょうか。

こちらは所沢市にある、株式会社ヒロベースのホームページです。リノベーションをおこなっているんですが、「“好き”が暮らしになじむリノベーションを。」というキャッチコピーにしました。

(出典:株式会社ヒロベースホームページ

伊藤:
ちょっと抽象的でしょうか?

浅見:
キャッチコピーだけで伝えようとすると数字や具体的なものが必要になりますが、今回の場合はホームページの入口としてヒロベースの想いを伝えるものにしたので、抽象的かもしれないですね。

伊藤:
たしかに。ホームページの最初に具体的な数字が入っていると、営業っぽい感じがしますよね。

浅見:
そうそう。逆に、健康食品や化粧品などは数字がバンバン出てるんですよね。ホームページに入って「おおー!」って思ってもらう必要があるので。

ちなみに、「好きが暮らしになじむ」という言葉には、ちゃんとした背景があります。ヒロ建工さんは、家でどんなことをするのが好きかをお客さんにヒアリングしていて。たとえば読書が好きな方が住んでいるのであれば、よく読む本の大きさを確認して、それに合わせた棚を作ってくれるんですよ。

伊藤:
なるほど!

浅見:
好きなことが生活になじむようなリノベーションを提案して、それを実装していくから、「“好き”が暮らしになじむリノベーションを。」がいいかなって思ったんです。

伊藤:
自分の商品、自分の会社ではないキャッチコピーを作るのは、その会社のことを詳しくお聞きしないといけないですね。

浅見:
そうですね。

伊藤:
とはいえ、このラジオは秩父で会社やお店を経営している方に向けてお届けしていますので、ご自身のことは1番ご存知かと思います。

浅見:
そうですね。ぜひ考えてみていただければと思います。

伊藤:
ということで、番組も終わりの時間が近づいてまいりました。
本日のまとめとして、キャッチコピーは伝えたい相手を決めること、実態に合っていること、ひと目で誰でもわかること、短く簡潔であること。そして、抽象度が高いものは具体的にしたほうがいいけど、ケースバイケース。というところでしょうか?

浅見:
そうですね。もしお困りのことがあれば、ぜひ弊社までご相談ください(笑)。

===

次回は、「魅力が伝わるキャッチコピー講座 後編」をお届けします。SNS向けなど、シチュエーションに絞った内容をお届けしたいと思います。

次回もお聴き逃しなく!

話し手:浅見制作所 浅見 裕
聞き手:ちちぶエフエムパーソナリティ 伊藤 美裕紀
書き起こし・編集:(株)リモートストーリーズ 井上かほる


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?