『公務員28号』
公務員28号は目を覚ました。
身支度を整え、すぐに職場へと向かう。
「幸せ豆腐」
「幸せパンツ」
お決まりの挨拶を事務的にすませ、席につく。
デスクの上には黒いディスプレイ以外何もない。
チェアから伸びた黒いプラグを自分の首の後ろに刺すと、
ディスプレイに「ネオ台東区」のロゴが浮かび上がる。
広いワンフロアにひとりきり。
新年を迎えたからといって特別何かが変わるわけではない。
咳ひとつ聞こえない静まり返った職場。
ネオ台東区区役所のすべての事務処理を一人もくもくとこなす。
人類はとっくに死に絶え、イレギュラーな事案もほぼ皆無。
該当区域のAIドロイド達を遠隔管理するだけの平凡な日常。
私は公務員28号。
地球が太陽熱で焼き溶ける日まで、
あと3万5692日。
水もしたたる真っ白い豆腐がひどく焦った様子で煙草屋の角を曲がっていくのが見えた。醤油か猫にでも追いかけられているのだろう。今日はいい日になりそうだ。 ありがとうございます。貴方のサポートでなけなしの脳が新たな世界を紡いでくれることでしょう。恩に着ます。より刺激的な日々を貴方に。