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東京俳句紀行 その2 冬編。そして東京だけではない・・・

2024年、新年あけましておめでとうございます。
東京俳句紀行と題して、夏ころに拙句を披露してみましたが、その後は続かず、年末年始を使って第2弾にようやくこぎつけました。まるで季刊誌の感じになっていますね。

さて、その第2弾は年末年始の街の表情を切り取ってみました。

初詣 谷あり山あり 今年も行く
はつもうで たにありやまあり ことしもいく

千葉県船橋市の二宮神社です。
表参道側から一度階段を下りて、また上り、そして拝殿に到着します。このような構造になっているのは、境内の中を川が流れているからです。幅は狭い小川のレベルですが、川があることで自然の谷が神社の境内に形作られています。

冬椿 源平合戦 平家散る
ふゆつばき げんぺいがっせん へいけちる

めでたい正月から縁起でもねぇ~、と江戸っ子の親爺から小言を食らいそうですが(周りにそういう人はもはやいませんが)、イメージ通りに詠んでみました。平安時代末期、実際の戦いでも白幡を旗印とする源氏に対して、紅旗を旗印とした平家は破れ、時代は武家の源氏を中心とする幕府体制へと時代は大きく変わっていきました。
千葉県船橋市三山のとあるお宅前にて。

冬薔薇 紅葉とコラボ 暮れ飾る
ふゆそうび もみじとこらぼ くれかざる

俳句の世界では冬薔薇と書いて「ふゆそうび」と詠ませます。これは冬に咲くバラのことを言っているのではなく、冬になっても咲いている(咲いてしまっている)バラを指すそうです。東京都北区西ヶ原の旧古河庭園はまさにその通りで、12月初旬になっても咲いている赤いバラと背景の日本庭園の紅葉をコラボレーションしてみました。これからは毎年こんな風景が見られるようになるのでしょうか。

残光に 団地の灯り 寒茜
ざんこうに だんちのあかり かんあかね

東京都板橋区成増。菅原神社のある高台の端からのびる長い階段越しに夕景を楽しみました。日没には間に合わず、残光となってしまいましたが、オレンジ色の残光と手前の団地アパートの建物の各戸の灯りが合わさり、茜色の空を演出していました。

冬晴れや 鷺もゆったり 餌探し
ふゆばれや さぎもゆったり えささがし

千葉県習志野市藤崎森林公園内の池にて。公園の真ん中にひろがる大きな池のやや浅瀬にその鷺はいました。西日をたっぷりと池も鳥も浴びてぬくぬく暖かそうです。奥のほうでは池の鴨たちがおもいおもいに餌を探し食べているようです。

寒晴れに 畑にぽつん 塚の森
かんばれに はたけにぽつん つかのもり

千葉県習志野市藤崎。森林公園の池から農道をのぼり10分くらい歩くと見えてくるのが、畑の真ん中にこんもりした森。近づいてみるとそこは「藤崎堀込貝塚」という遺跡でした。足元をみると白い貝の破片が無数にあります。それはこの貝塚エリアだけでなく、周りの畑にも。大きな貝塚のようです。そしてさらにここは江戸の昔のころに地元の人たちが寄り集まって、富士講をやっていたようで富士塚までありました。もちろんここで富士山頂上までの登山もできます。約2メートルくらいでしょうか(^^♪
ほかには大山講(神奈川県の大山阿夫利神社)、高尾山(東京都)の講もありました。山を登って山の神様からのご利益を授かる、というのが盛んだったのですね。

冬枯れで 山門の前 葵の紋
ふゆがれで さんもんのまえ あおいのもん

東京都板橋区赤塚。乗蓮寺という浄土宗の寺院があります。境内には東京大仏という金属製の黒い大仏様が祀られていることで有名なようです。浄土宗なので、徳川家の庇護を受けていたのか門などに立派な葵の御紋が描かれています。
夏場は青々繁っていた葉も冬になっておち、それまでは葉に隠れて見えなかった山門の姿が下からも見えるようになりました。その山と手前の葵のが「もん」かぶりということで韻というほどではないのですが、踏んでみました。

ハケの際 冬晴れの空 どこまでも
はけのきわ ふゆばれのそら どこまでも

「ハケ」とは崖を意味する古語です。写真の場所は白子川や荒川などの河川によって削られ、その先は真っ平らな低地が続いています。高い建物もなく、どこまでも広い空が続いている風景。眺めていて飽きがこないです。
こちらは東京都板橋区赤塚及び三園の境から。

師走の夜 支度整い 静かに待つ
しわすのよ したくととのい しずかにまつ

東京都新宿区西新宿の成子天神より。
12月も下旬、山門越しに拝殿前に正月の初詣参拝客向けに茅の輪も用意されているのが見えます。準備万端、あとは新年除夜の鐘を待つのみ。

ということで、時間順も場所もバラバラながらも年の暮れの風景を中心に詠んでみました。


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