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ハチば筑前煮

今頃の時期、今はもう亡い父親がよく筑前煮を作っていたのを思い出す。がめ煮とも呼ばれる根菜の煮物。ふと懐かしくなり、作ってみることに。


材料

牛蒡 1本
人参 1本
蓮根 2節
大豆肉ナゲット状 適量
味醂 大匙1
醤油 大匙3
だしつゆ 1/4 カップ
蜂蜜 大匙2


大豆肉を水と出汁つゆにつけて戻す。

筑前煮、筑前といえば思い出すのが羽柴筑前守。つまり豊臣秀吉。
百姓出身である秀吉(実はサンカだったという説もありますが)には代々、名乗る苗字もなく、妻の実家である木下姓から木下藤吉郎と名乗っていましたが、やがて羽柴という姓を名乗るように。これは織田家の重臣、丹羽長秀と柴田勝家の苗字から一文字づつ取って作った姓と言われます。筑前守というのは主君、信長から許されて名乗った受領名。
織田家のもう一人の出世頭、明智光秀が日向守を名乗っていたことから、信長はいずれ彼等に九州征伐を任せるつもりだった?


皮を削いだ牛蒡は斜め切り、蓮根は乱切りにして酢水に晒す。

水に少しづつ酢を足していき、酸っぱさを感じるまで混ぜた酢水に漬けること、5分から8分。この工程をやっておかないと、これらの根菜は真っ黒に変色してしまいます。
人参は乱切りにしておきます。

信長の死後、明智光秀も打倒。急速に天下人へとのし上がっていった秀吉。その生涯は「太閤記」と呼ばれ、痛快な出世物語として好まれてきました。
そんな秀吉ですが、晩年はすっかり耄碌しておかしくなってしまったと思う人は少なくありません。


圧力鍋に油を入れ、根菜を入れて炒める。油が回るまで。

端的に言えば、文禄、慶長の役。いわゆる朝鮮出兵のこと。
この対外戦争、耄碌した秀吉が朝鮮半島や明国をも支配しようと半ば誇大妄想に陥り、無謀な外征を強行した。そういう風に描く小説とかドラマは少なくありません。というか教科書にもそんな風に書かれているのではないでしょうか。
果たして、本当にそうか?
日本の歴史教科書というのは、学べば学ぶ程、日本が嫌いになるように書かれています。秀吉を始め、不当に貶められた評価を下されている人は少なくない。学校で習う歴史は疑ってかかった方がいいというのは私の信条。


戻しておいた大豆肉を出汁つゆと水ごと投入。調味料も入れていく。

そもそもこの事変を朝鮮出兵と呼ぶのも正確ではありません。秀吉の狙いはあくまでも明国。「仮道入明」というスローガンがそれを示しています。朝鮮半島はあくまでも明へ向かう道。朝鮮を支配する気はなし。というよりも、当時の朝鮮は明の属国。日本には朝鮮と戦っている意識はなかった。
更に言えば、秀吉の真の狙いはスペインへの牽制。


圧力鍋に蓋、強火。蒸気が上がったら弱火にして4分加熱。

当時はスペインやポルトガルが世界中に植民地を形成していた時代。その先兵となっていたのは宣教師。ますは平和的に布教することを認めさせ、やがて信者が増えると、それらの人々を扇動して内乱を起こさせ、それに介入することで支配下に置いていく。それが彼等の手口。
日本も狙われていました。頭脳明晰だった秀吉は当然、そうした狙いを見抜いていたことでしょう。更に彼は長崎の地が教会領として寄進されているという現実を知り、日本人が奴隷として輸出されていることを知り、怒り心頭。キリシタン禁教令を発令。これによって起こったのが長崎の26聖人の殉教。ようやく戦国乱世が終わり、平和になろうとしている日本を外国勢力の食い物にさせる訳にはいかない。そこで秀吉は、マニラに使者を派遣。当時、其処にはスペインの総督府。
使者が伝えたのは、スペイン国王は日本に朝貢して、服属せよという秀吉の言葉。
世界の大半を支配しようとしていた強大な国に服属要求?これこそ誇大妄想?現実を見ていないと思われるかもしれませんが、さにあらず。


圧力鍋は素晴らしい。短時間でもしっかりと煮える。

当時の日本は世界一の鉄砲保有国。彼方のスペインが無敵艦隊を派遣したとしても、補給も続かず、島国の日本を制圧、武力で支配するのは至難の業。
国際関係というものは今も昔もそうですが、特に白人の論理では弱肉強食。対等な関係など有り得ない。秀吉も強硬な態度で臨まざるを得なかった。
スペインは明国を支配下に置こうとしていました。万一、明国がスペインの勢力下に入り、言われるがままに日本に攻めてくるようなことになれば、大変なことになる。海の向こうのスペインと違って明は隣国、しかも人口も多い。スペインに取られる前に明国に影響力を及ぼしておかねばならない。それが秀吉が考えていたことであり、文禄、慶長の役の真相ではないか。秀吉の死により、この無謀な外征も終わりを告げ、日本は撤兵したとされていますが、それも?
というのは同じ頃、スペインの無敵艦隊はイギリスに敗れ、帝国の凋落が始まろうとしていました。スペインはもはやアジアにかまけている場合でもなくなった。つまりスペインの脅威は当面、去ったのが理由?


蜂蜜を甘味に使ったので、ハチば筑前煮と命名。

やはり圧力鍋は素晴らしい。固い根菜類もしっかりと柔らかく煮えている。食物繊維豊富な煮物。大豆肉からはタンパク質。砂糖ではなく蜂蜜を使ったことで厚みある甘さ。
父が作っていた筑前煮はやけに小さく具を切っていたのを思い出す。私は自分の好みで割と厚めに切っているが。

耄碌したとか老人惚けとかで秀吉の行動を非難するのは木を見て森を見ずということではないか。
誇大妄想に捉われた老人の支配欲により、明や朝鮮という隣国に迷惑をかけたというのは、あまりにも近視眼的であり、当時の世界情勢を俯瞰すれば、それなりに正当な理由があったと思えてきます。
今も昔も戦争というものは単純にどちらかが正義で片方が悪という単純な図式では測れないと思えます。
そんなことを考えながら、ハチば筑前煮をご馳走様でした。

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