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優作鍋もどき

優作鍋ってご存知でしょうか?
俳優の松田優作が好んで、よく作っていたという鍋。本来は豚肉ともやしを使う料理なのですが、ほぼベジタリアンの私が無謀にも植物素材メインで似た物を作ろうと悪戦苦闘した記録。


材料

もやし     2袋
大豆肉     好きなだけ
出汁つゆ    カップ半分
酒       1カップ
塩麹      大匙1

醤油      お好みで
レモンの搾り汁 お好みで
柚子胡椒    お好みで

昭和二十四年(1949)山口県下関市に生まれた金優作が後の松田優作。
この名前からお察しの通り、在日韓国人の血を引いています。母親が在日一世。下関市というのは、人口比でいうと全国一、在日が多いそうです。
少し複雑な生い立ち。
優作には兄がいますが、二人の兄とは父親が違う。
父親は長崎出身の保護司で、郷里には妻子。つまり優作の母とは不倫関係。


大豆肉を水で戻す。

アメリカで弁護士を目指すべく高校中退して、叔母を頼って渡米。
言葉の壁や人種差別等を経験。
元々、弁護士を目指せというのは母の希望。優作自身の望みとは違っていたのも馴染めない理由。
そんなアメリカでアングラ劇団の芝居を見て、感銘を受ける。俳優になりたいと思い立った優作、叔母夫婦の離婚訴訟に嫌気が刺していたこともあり、米国生活一年にも満たずに帰国。


土鍋にもやしを敷き詰める。

帰国した優作は上京。兄夫婦が住むアパートに居候。夜間高校を経て、関東学院大学入学。次いで劇団、文学座の研究生に。
役者に専念するために大学中退。ここで大きなチャンスが巡って来る。
日本テレビのプロデューサー、岡田晋吉に見出されて、伝説的な刑事ドラマの新人刑事役に抜擢。
「太陽にほえろ!」
番組の主役、マカロニ刑事を演じていたショーケンこと萩原健一が降番することとなり、彼に代わる刑事役を探していた岡田に村野武憲が紹介したのが松田優作。
優作が演じたジーパン刑事は大人気。一躍、彼はスターに。


戻した大豆肉を食べやすい大きさに切り、もやしの上に乗せて、酒、出汁つゆ、塩麹を投入。蓋をして煮る。

ほぼ一年の出演後、ジーパン刑事も殉職という形で番組卒業。
撃たれて腹から出る血を見て、
「何じゃ、こりゃー」というセリフは語り草。
ただ、撮影現場に居た岡田晋吉は、倒れた優作は最後のセリフとして、
「かあちゃん」と呟いたと証言しています。
このセリフはカットされたのか?

私の世代では松田優作と言えば、ジーパン刑事よりも「探偵物語」の工藤俊作の方が馴染みがあります。
コミカルなようでいて、どこか暗い影も感じられる探偵。
このドラマはリメイクして欲しくないです。工藤俊作は松田優作しか有り得ない。
このドラマで共演した熊谷美由紀が、優作の二番目の妻となります。
このドラマの最終回、仲間達を殺された工藤は今までのおちゃらけた風はまったくなくなり、優作は「遊戯シリーズ」で演じた殺し屋のように冷酷に敵を葬っていく。ラストシーンも謎が多く、今でも強く印象に残るドラマ。


沸騰後、蓋を取ったが、見た目は殆ど変わりませんね。

私は俳優というのは二種類のタイプがあると思っています。
役を自分に近付けていく人。舘ひろしとかキムタク等。
もう一つが自分を役に近付ける人。ロバート・デニーロとか松田優作。
「レイジング・ブル」という映画でデニーロは現役時代の精悍なボクサーと引退後の自堕落な姿とを演じ分けました。優作にも似た所。
「野獣死すべし」では役作りのために奥歯を四本、抜いたという話。
血の気が多く、喧嘩騒ぎの話が多い優作が、臆病な侍を演じた異色作が「ひとごろし」
臆病な侍が人を斬って逐電した剣豪の上意討ちを買って出て、策略を持って目的を遂げるという、山本周五郎原作の映画。
松田優作が臆病な侍なんてミスキャストじゃないの?と思いながら見たら、本当に臆病な侍に見える。この人の演技力は本物だと感じたものでした。


優作鍋もどき

本物の優作鍋、肉食をしていた時にはよく作りました。今回、使用したのは大豆肉。豚肉と違って出汁とか旨味は出ないので、予め出汁つゆを入れて煮ました。
大豆で良質なタンパク質たっぷり。豚肉と違って脂質は殆どなし。
もやしはカリウム、カルシウム、ビタミンB、Cに食物繊維と栄養の宝庫。
更にアスパラギン酸は疲労回復に効果あり。

本当は豚肉ともやしで作る鍋なので、ポン酢で食べる。そこでこれを用意。

醤油とレモンの搾り汁。

ポン酢を持っていないので、その代用。
優作鍋もどき、甘い味になっているので、塩気や酸味を足したい時にはお好みで加えて下さい。
自分的には、なくてもよかったかなあとも思います。写真まで撮っておいて何だと思うかもしれませんが、試行錯誤しながらやっているので、お許しあれ。どちらかというと、こちらがよかった。

柚子胡椒

柔らかな辛みが加わり、味が一気に引き締まりました。

仲間を非情に大事にしていた松田優作、豚肉ともやし、酒があれば作れる優作鍋を作って振舞うことがあったそうです。
優作と親交があったのは中村雅俊、桃井かおり、石橋凌、岩城滉一等々。
兄貴として慕っていたのは原田芳雄。憧れというべき人は石原裕次郎や渡哲也。
どなたも一時代を築いた人達ばかり。
彼等が優作鍋を食べたかはわかりませんが、松田優作は共演が決まると、共演者に自らコンタクトを取って、
「会いませんか」と誘うことがあったとか。
決して一匹狼ではなく、共にいいものを作りましょうという姿勢の人だった。
不世出の俳優、松田優作を妄想しながら出汁の甘味を味わえる優作鍋もどきをご馳走様でした。

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