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アスパライソとは何か

そろそろ旬を迎えるアスパラガス。目に鮮やかでシャキシャキ食感が素晴らしい。スーパーに行けば年中、同じ食材が手に入るようになった便利な今だからこそ、もはや死後になりつつある旬の食材を出来るだけ使おうとしています。


材料

アスパラガス 4本
油揚げ    半分
塩麹     大匙1
バター    20グラム
胡椒     少々
ピザ用チーズ 思い付き

パライソとはラテン語で楽園の意味。英語で言う所のパラダイス。
パライソに行くための道を説くキリスト教。それを日本に伝えた宣教師を妄想しながら料理開始。


アスパラガスの固い根本を切り、袴を取って斜め切り。

日本に初めてキリスト教を伝えた宣教師はフランシスコ・ザビエル。
1506年にスペイン、バスク地方のハビエル城で生誕。つまり貴族階級出身。
イグナシオ・ロヨラ達と共に1534年にイエズス会を設立。
世界宣教がイエズス会のテーマ。歴史の教科書に出てくるイエズス会ですが、現在も活動。もうすぐ設立500年ということになる。
世界にキリスト教というか、カトリックを広めるためにアジアへの宣教を志す。


油揚げを短冊切り。油抜きはしなくてもいいです。どうせ炒めるから。

印度各地で宣教していたザビエル、1547年に鹿児島出身のアンジローという日本人とマラッカで出会う。アンジローなる人物は人を殺して逃亡。日本から脱出していました。
そのアンジローの勧めから、ザビエルは日本布教を決意。
アンジローの故郷、薩摩を目指す。
その地を治めていた島津貴久に謁見。布教を願い出る。
許可を得て、布教開始。
ザビエルらはキリスト教の神「デウス」を当初、「大日」と称していました。日本人にもわかりやすいように、そうした表現を用いていたのでしょうが、これが誤解の元。
話を聞いた人々は大日如来のことかと思い、仏教の新たな宗派位に思っていた。ところがよくよく聞くと、まったく別の宗教ということから、既存の仏教の僧侶から反発を食らい、抗議を受けた島津家も布教を禁じます。


バターでアスパラガスを炒める。

国王や貴族に謁見して、まずはそうした支配階級を改宗させて、キリスト教を国民に広めていくというのが、イエズス会の手口。
それに則ることにして、ザビエル一行は都へ。将軍とか天皇に謁見を望みますが、相手にされず。
止む無く方針変更。西国でもっとも栄えている山口へ。その地の守護大名、大内義隆に眼鏡などの珍奇な舶来物を献上。
義隆自身は改宗を拒む。理由はキリスト教では男色が禁じられていたから。義隆を始めとして武士階級には男色は嗜みの一つ。
それでも義隆は贈り物に気をよくしたのか、廃寺を与えて、そこを拠点にしての布教を許しました。
山口での布教の際の逸話として、キリスト教を快く思わない者が説教しているザビエルの顔に唾を吐きかけたそうですが、ザビエルは怒ることもなく、汗でも拭くようにハンカチで顔を拭いて、話を続けたとか。


油揚げと塩麹、胡椒を投入して炒め合わせる。

その後、豊後へ行き、守護大名、大友義鎮(宗麟)に謁見。この時には義鎮は改宗しなかったものの後年、キリスト教に改宗。名乗った洗礼名はドン・フランシスコ。この時に会ったフランシスコ・ザビエルの印象がずっと頭にあったのかもしれません。
日本で思ったように布教が進まないのは、日本が中国の文化的影響下にあるからで、まずは中国でキリシタンを増やして、それが日本に影響を与えるようにした方がいいと判断して出国。
しかし、当時の中国の王朝、明は海禁策を取っていました。つまり鎖国状態。南蛮人であるザビエルには入国の許可が下りず。1552年に46歳で死去。


思い付きでチーズを入れてみた。

ザビエルの遺体は石灰を詰めて埋葬。1553年にマラッカに移され、次いでゴアへ。以来、10年に一度、公開されています。前回は2014年でしたから、来年、公開の予定か?
また、右腕は何故か1614年に切り落とされて、別に保管。その時、死後50年以上経過しているというのに、鮮血が迸ったということです。
その右腕、ザビエル来朝450年記念だった1999年に日本で公開。私もその時、拝見。
この右腕は通常、マカオで保管。他にも歯と毛はリスボン、歯がボルト、胸骨の一部は東京と分散されて保管。


アスパライソとは何か

アスパラベーコンという料理がありますが、私は基本的にベジタリアン。しかも加工肉は余計に体に悪い。(発癌性が高いとか)
そこで油揚げと合わせました。塩麹が沁みた油揚げの柔らか食感がアスパラガスのシャキシャキ感とよいコントラスト。
思い付きで加えたチーズが溶けて絡まり、焦げた部分が香ばしい。

ザビエルは
「日本人は最高の民族であり、彼等より優れた人々は異教徒には見つからないでしょう。一般的に親しみやすく善良。悪意がない。驚く程に名誉心が強く、他の何よりも名誉を重んじる」と日本人を評価。更に
「日本を侵略しないように」とスペイン国王に進言。
つまり宣教師というのは侵略の尖兵。まずキリスト教を広めて、既存の宗教と対立させる。信者の保護を名目として軍事介入。植民地化を進める。
布教のために世界に乗り出すには資金が必要。それを引き出すために宣教師側も国王という権力者に協力していたという面があるのでしょう。
国王にとっても植民地を拡大するきっかけとして宣教師は使えるという訳。
しかし、日本にはその手は通用しない。名誉を重んじる日本の武士が奴隷に甘んじる筈がない。手痛いしっぺ返しを食らうことになると、ザビエルは見抜いたということでしょう。
現代の日本人も、ザビエルが畏れを抱いた名誉心の強さを取り戻さねばならないと妄想しながら、アスパライソとは何かをご馳走様でした。

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