82.従業員カードを挿入してください

「従業員カードを挿入してください」

この、いかにもタイムカードとか会社の従業員出入り口にありそうな表示、わたしはバスの中で見ました。

用事があって出かけた先から、バスで帰ってくる時の車内での出来事です。行き先が出るあの画面、それがずーっとこの表示でした。
一応、車内に流れる「次は〇〇です」という音声は流れていたので、それで把握できたのですが、イヤホンをいつも聴いているわたしは、思わず音量下げちゃいました。

もしかしたら、乗っているお年寄りの方は、降りますボタンを押すタイミングが分からないんじゃないかなと思い、運転手さんに声をかけようかとも思ったのですが、その勇気が出ませんでした。ただ一言「表示がおかしいですよ」って言えばいいだけなのに。

だって運転手さん、予想以上に強面だったんですもん。過去にいろいろあったような、そして重大な秘密を抱えていそうなお顔立ちで、裏ポケットにチャカを忍ばせていてもおかしくない(失礼・・・)雰囲気です。

そのうち、この表示も含め、もしかしてバスジャックにでも合ってるのかな?と、要らぬ妄想までしてしまいました。
その妄想のせいで、降りますボタンも一つ前の停留所で押しちゃったし。ごめんなさい。
人を見た目で判断してはいけませんよね。

バスによく乗るわたしは、他にも似たようなことが何度かあります。
行先表示と音声が一つずれてるとか。もう!惑わせないで・・・。
お年寄りの方がよく乗っているのですが、皆さま慣れているのか、またかーみたいな雰囲気で柔軟に対応しておりました。応用力が高い。
わたしは何も考えずに乗っているので、表示がずれるとちょっと混乱します。

こういう、人が天然に間違えていることって、わたしはなかなかツッコめないんですよね。
仲が良い友達に対してもそうです。
「あ、間違えてるな」って気づいても、気づかなかったフリをするか、自分も一緒に間違えて、相手が気づくまで待ってから、わたしも気づかなかった!とか言っちゃいます。
なんだろう、相手を傷つけたくないのか、それともわたしに自信がなさ過ぎるのか・・・。
同じように言い間違いもツッコめないです。
裏を返せば、なんて冷たい対応。優しくない。

本当は「それ違うよー」って気軽に言えれば良いんだけどな。

唯一言えるのは、家族くらいでしょうか。
うちの母は、頭にドをつけたいくらいの天然なので、ツッコミどころはいつでもたくさんあるんです。
むしろそれくらい天然じゃないと、うちの父とはやってこれなかっただろうなって今となっては思いますが、ド天然の母と破天荒な父の二人暮らしが、娘のわたしとしては常に心配です。

そんな両親の摩訶不思議アドベンチャーは、またいつか書くとして、どうにも人の間違いをサラッと指摘してあげられない自分に、少し罪悪感を感じます。

奇跡的に指摘してあげることができたとしても、
「あ、そそそそれ、ま、まま間違ってるよ」
と思い切り噛んでしまうことでしょう。ポンコツ・・・。