19.敵をなぎ倒しながら進み、金勘定が得意

 勝手に薬をやめ、ひどい目に遭い、また再開して50mgまで増やせました。

 あと少しで75mg、その2週間後に100mgになり、量が増えるのはそれで最後。ラミクタールというお薬です。
 効いてるのかどうなのか、よく分からなかったけど、途中で飲むのをやめて散々な目にあってからは(鬱状態への急降下)、ちゃんと効いていたんだなと、思い直すようになりました。なんせ、風邪のように目に見える効果ではないので分かりづらい。

 わたしの職場の友達にHちゃんという人がいます。
 歳は少し離れているけど、わたしはすごく頼りにしてしまっていて、時にはボロボロ泣きながら電話したこともあります。あの時はめんどくさい話聞いてくれてありがとう・・・。
 Hちゃんはブレません。自分の道をまっすぐに進んでいきます。意思が強い。
 そしてそういう人は、他人に優しい。わたしが持っている優しい風、ではなく本当の優しさと、あと強さも持ち合わせています。バッタバッタと敵をなぎ倒しながら進んでいきます。

 一緒に初詣に行った時、とても混んでて並んで待ったことがありました。
 そしたらわたしたちの目の前に、するりとナチュラルにおばあさんが割り込んできたんです。「あー割り込まれたな」と思ったその次の瞬間、Hちゃんは「後ろ並んでますよー」って声かけてました。それもごくごく自然に嫌味なく。

 そういうところがHちゃんのスゴいところなんです。持っているトーンがちょっと他の人とは違う。もしわたしが躁状態であったならば、「ダメですよ!後ろ並んでるのに!!」って噛み付いてたと思います。Hちゃんが隣にいてくれて良かった・・・。

 そして、この初詣の人出で神社はいくらくらい稼げるんだろうか、と話し始めました。
 Hちゃんが思うには、お賽銭をメダル制にして種類ごとに価格を決め、例えば100円ならあいさつ程度、500円なら神頼み、1000円ならけっこう本気、5000円ならマジのお願い、みたいなことです。
 賽銭箱に入れていいのはメダルだけ。そしたらけっこう売上取れると思うんだけどなーって金勘定してました。こういうところ、Hちゃんのいいところその2、です。

 わたしが診断された頃、Hちゃんにはすぐ話しました。
 とてもHちゃんのことを信頼しているし、どうしていいか分からなかったので、頼ったんです。なにかして欲しかったわけではなく、なんか話を聞いて欲しかったんですよね。
 Hちゃんは、「そういうのって病気じゃなく個性なんじゃない?わたしはそう思うんだよね」とサラッと言ってくれました。わたしは病気になったとその頃は思っていたので、とても嬉しかったんです。

 病気ではなく個性。そう思ってくれる人が身近にいてくれると、わたしは少し伸び伸びできます。

 坂口恭平さんの記事に、私たちは少数民族の躁鬱人だ、という話があります。これについては本当に納得してしまうんですよね。

 例えば、地球外から自分の職場に転勤してきた人がいるとします(今度の人事、火星から異動してくるらしいよー、なんて会話ゾクゾクしますね!)。
 見た目も話し方も最初は言葉も違うので、戸惑います。
 でも、このやり方がこの人の星のやり方なんだなって思うと、ある程度のことは許容範囲になるんですよね。そしてもしかしたら、その星でのいいやり方教えてよ、なんて風になるかもしれません。逆にあまりに違うことをやっていたら、それはこの星では違うよーって言える。なぜなら、自分とは違うということが、すぐに理解できるから。

 双極性障害は目に見えて分かりません。日本人と欧米人みたいに、あからさまに見た目が違えば、周りの人も自分もやりやすいのかな、とたまに思うこともあります。

 あーまた暴れてるな、躁鬱人だからねーしょうがないなー、なんて都合よくはいかないでしょうか(こういうところも自己中心的)。
 こうなったらいっそのこと、おでこに躁鬱というタトゥーでも彫ってみようか・・・。でもさすがにおでこは恥ずかしいな。それならお洒落っ子みたいに、うなじでもいいかもしれない。うなじに「躁鬱」。見た人は「でしょうね・・・」ってまた思うに違いないですね。

 Hちゃんはいつも真っ当です。どんな時も真っ当に生きています。その強さが一番好きなところなんです。
 前に書いた、辛いときに放っておける優しさ、それができる人です。相手を信頼して、待っていてくれる人です。

 わたしが自分に歯止めが効かなくなりそうな時(躁状態の攻撃性、いま一番止めたいのはコレ)、Hちゃんならこういう時どうするんだろう、頭の片隅でそう思えるようになれば、少しは上手くコントロールできそうです。
 なので、Hちゃんはわたしの指標です。

 ちなみに、飲んだ帰りにコンビニで缶チューハイを買って、おつまみ片手にまた飲みながら帰った女です。そういうところ、Hちゃんのいいところ、その3。