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49.二人羽織の前と後ろ

 まだ空白の時間は続いています。朝の不安も変わらず。

 でもこんな中でも、嬉しいことがありました。
 他人との摩擦が減ったからなのか、一人で居ることしかないからなのか、不安薬を飲まずに3日間過ごせています。これには自分でも少しびっくりで、躁鬱と言われてから初の偉業です。ヒーローインタビューされてもおかしくありません。

「3日間も薬なしで過ごせたという偉業を成し遂げられたわけですが、今の気持ちはどうですか?」
「そうですね、やはりなかなか達成できなかったことだったので、自分を否定せず、頑張ってきたことが無駄ではなかったと、ただただ嬉しい気持ちでいっぱいです」
「勝因はなんだと思いますか?」
「今回はあまり緊張せず、リラックスして臨めたので、あえて言えばそれでしょうか。ただ、もちろん自分一人の力だとは思っていません。応援してくれたみなさまのおかげです!」
「おめでとうございます!最後に観てくれているみなさまへ一言お願いします」
「絶好調!」

 頭の中だけでこんなやり取りができるようになったなんて、一人遊びがすっかり上手くなりました。そして絶好調ではないです・・・。

 かなり感情の波が揺れる時もありますが、なんとか飲まずに済んでいて、我慢するのではなく、まだ飲まなくても大丈夫だろうっていう感覚で過ごせています。ちょっと嬉しい。

 ただ、前にここにも書きましたが、痙攣というのか自分の癖というのか、思い通りに手が動いてくれないことは増えました。

 今朝、歯を磨いていたらそれが出て、思い切りほっぺたに歯磨き粉をつけてしまいました。うわっここで来たかと思い、ゆっくり動かしてみましたが、ダメでした。
「違うんだよそこじゃないんだよ、ここを磨きたいんだけ・・・うわっ!」って感じです。この感覚、なにかに似てるなぁと思ったら、二人羽織ですね。まさにそれ。コントのようです。

 お昼ご飯にそうめんを食べようと思って、お湯を沸かしました。沸かしてる間に、卵を作っておこうと混ぜてたんですよね。そしたら案の定、手が思い通りに混ぜてくれない。卵こぼしました。念のため、2個割っておいて良かったです。

 ちなみにわたしはそうめんトッピングで、錦糸卵を入れる派なんです。美味しいですよね。でもわたしのこだわりは、錦糸卵ほど細くせず、もっと卵の食感を楽しみつつ、麺と絡めて食べたい。なので卵は太めです。これは錦糸卵のように細く切ることができないという自分への言い訳ではなく、きちんと自分の好みを把握しそうめんというものを心から楽しみたいというリスペクトでもあり、決して適当なのではありません。分かってくれたでしょうか?

 不安薬に入っているらしい筋弛緩剤の成分。わたしにはまだまだ必要なんですね。

 職探しをしている最中に、求人で「医療事務」というのを見つけました。自宅からも近いし、もしまたプチパニックになっても歩いて帰ってこれる距離だったので、応募してみようかなと思った瞬間、無理だと思い直しました。不安薬を飲んで、もしボーッとしてしまったら、いくら事務とはいえ、医療に関わっちゃまずいなってことです。そういうのなにも考えてなかった。

 またできないことが増えた。単純に悲しい。

 まさにこれこそ、二人羽織をずーっと体験しているような気持ちになります。そうじゃないのに、こうやって欲しいのに、が延々続いていくような感覚。これは他人に対してではなく、自分に対してのもどかしさです。

 二人羽織の後ろの人の気持ちにもなります。そうじゃなかったか、こうすれば良かったのか、が同じように延々続いていく。どうしたらその羽織を捨てることができるんでしょうか。

 今後、マイクを向けられたら自信を持って「絶好調!」と言えるような自分になりたい。そして普段の生活では、マイクを向けられることなんてほとんどありません。知ってます。