アゴを魅せる男

やっと朝5時に起きられました。
生活リズムがどんどんズレていってたので、今朝は半ば強引に起き、窓から日が昇る前のうっすら明るい外を眺め、頭を覚醒しました。
早朝に起きてnoteを書く、という時間が好きなんですよね。

にしても、朝早い時間はカラスがよく鳴いてる。

早朝、カラスの鳴き声。この雰囲気なんか思い出すなーと考えていたら、新宿で朝まで呑み、始発に合わせて駅に向かう途中の光景でした。

もちろん若い頃の話ですが、人通りが多い新宿も早朝となると人がまばらで、路上のゴミをカラスがつついてました。混雑した夜が過ぎ、街が落ち着く唯一の時間。
一緒に歩いていた友達は「徹夜明けのこの時間大っ嫌いー」と言ってましたが、わたしはけっこう好きでした。

朝6時半くらいに帰宅して、そこから爆睡。昼過ぎに起きて朝ごはん(?)を食べる。そんな生活ばっかりの20代前半。今はもう無理。体力的に無理。若さ故ですな。

あの頃はまだ歌舞伎町とかにキャッチがわんさかいる時代でした。
信号待ちをしていれば「キャバクラで働かない?」、路上を歩いていれば「今の店の倍の給料出すよ!」。いやいや、もともと働いてないわい。

声かけられ過ぎて、顔を見ずに振り切る、という作戦を取っていたのですが、一度だけ顔を見たことがあります。

「分かったよ。お姉さんキャバで働く気がないのは分かった。じゃあせめて俺の顔見て! 俺アゴすげー出てんの。見たくない? アゴ出てる人のアゴ」

え、なにそれちょっと見たい。
思わず顔を上げたら、しゃくれてました。だいぶ。というかアゴに話かけられてると錯覚した。
「見たー! ね? 俺しゃくれてるでしょ? あ、笑ったね、おもしろい? 俺このアゴちょー気に入ってんの!」
そう言いながらアゴを触り、自慢してくるキャッチの男。
「やっぱみんな、アゴの自慢すると俺の顔見てくれるんだよねー。ありがと!」
それで立ち去って行きました。

別の日には、仕事で嫌なことがあって、通りの端っこでうつむいていた時、声をかけられたことがあります。
こっちに向かって歩いてくる男。うわーこのタイミングで来たかー・・・。もう立ち去る気力もなく、そのまま突っ立ってました。

「お姉さん、今にも死にそーな顔してるけどどしたの?」
「男? ふられたの? 大丈夫?」
「まぁそんな時もあるよ」

そう言って隣に立ってタバコ吸い始める男。
「俺だってさ、女の子に声かけまくってもほとんど無視だからね」
「でもさー、たまにスカウトできると嬉しいよねー」
そんなことを一方的に話し、話し終わるとじゃねって去って行きました。
慰められた、のかな?

キャッチは知らない人に話しかけていくとはいえ、アゴの男も慰めた男も、コミュニケーション能力が高い・・・。
物怖じせずグイグイいく。まぁチャラさがそうさせてると思うけど、今のわたしにはコミュニケーション能力が一番足りていないので、ちょっとは見習うところがあるのかしらん。

今の新宿はキャッチも居なければ怖い人も歩いていないし(潜んでいる)、昔に比べたら健全な街になりましたよね。
新宿もわたしも変わったなー。根本的なところはどっちもたいして変わってないと思うけど。

そうこうしているうちに6時半。
すっかり日が昇り、スズメがチュンチュンしてます。
また1日が始まるのか。

平和で静か。いつも通りのそんな今朝でした。