絶対に負けない唯一の方法
娘に諭しているつもりで、改めて自分が学ぶことは多い。
4歳の長女は負けず嫌いだ。トランプ、すごろく、じゃんけんさえ負けたくない。自分が勝つまで終わらない。
先日、ババ抜きをしていたときのことだ。勝負は終盤、自分がもしババを引いたら負けるという場面で泣きはじめた。「負けちゃう」「やだ」「負けたくない」と。いやいやいや、ちょっと待て。まだ負けていないではないか。勝負がついていないのに、もう泣いてどうするのだ。
そこで私はこう声を掛けた。「どうしても負けたくない?絶対に負けない方法教えてあげようか?」と。目に涙をためて、娘はうなずいた。
「それはね、ババ抜きをしないことだよ。やらなかったら、負けないでしょ。やめようか。」
「絶対に負けたくないなら、ババ抜きをやらなければいい。でもやりたいなら、負けることがあってもがまんしないといけないけど、どっちがいい?」
娘はしばらく黙っていた。それからちいさな声で「やる」と言った。そして一枚カードを引いて、結局その勝負に勝った。
これはもう、人生の縮図だ。
生来一度も負けたことがないと自慢する人は、負けそうな勝負から逃げてきた人だと思っている。負けそうになっても、諦めず、逃げず、負けを恐れずに立ち向かう力を、娘には身につけてほしい。
今回たまたま娘は勝ったけれど、負けてもいいんだよと教えている。勝つ人がいれば、負ける人がいるのは当然だ。負けたって、命が取られるわけじゃないのだ。勝ったり負けたりしながら、強くなるのだ。
大人になって、勝負がトランプ遊びから例えばビジネスになると、負けに伴うリスクが大きくなる。金銭的な損失だったり、人材を失うことになるとすれば、負けるのがこわくなって逃げ出したくなる。でも、何事もやってみなければわからない。ババ抜きとおなじだ。負けたって、命まで取られはしない。仮に負けても、そこですべてが終わるわけではない。次の勝負で勝てばいいのだ。
たかがババ抜きから、なんだか壮大な話になってしまった。
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