まずいときらい
子どもの食べ物の好みは、少なからず親の影響を受ける。なぜなら、食べ物を買ってくるのは親であり、その親は自分好みのものを買ってくるからだ。
うちの両親は、あんこが好きだ。あんこ好きの間では、しばしば『つぶあんこしあん論争』が勃発する。彼らは根っからのつぶあん派だ。
おまんじゅう、おはぎ、大判焼き、大福。我が家に持ち込まれる和菓子は、すべてつぶあんだった。そしてそれを食べながら、彼らは必ずこう言った。
「やっぱりあんこはつぶあんだね。こしあんや白あんなんて、まずい!」
物心ついたときからひたすらまずいと聞かされてきたので、わたしはこしあんとしろあんは『まずい』のだと信じて疑わなかった。一度も食べたことがないのに。
時は流れ、小学生になった私は修学旅行で伊勢へ行った。そしておかげ横丁で、生まれて初めて赤福を食べた。そう、こしあん初体験である。初めて食べたこしあんの、なんとおいしかったこと。「こしあん、おいしいじゃん。全然まずくなんかない!」
当たり前のことである。こしあんはおいしい。我が両親は、言葉選びを間違ったのだ。「こしあんはまずい」ではなく、「こしあんは好みではない」が正解だった。大抵の人は、ひとつやふたつ苦手な食べ物がある。でもそれは、その食べ物が悪いわけではない。食べる側とのマッチングがうまくいっていないだけなのだ。
我が両親が「まずい」と言ったそのこしあんを、こしあん派の人が食べたら「おいしい」と言うだろう。彼らがだいすきなつぶあんのおまんじゅうは、こしあん派さんには「まずい」と言われるかもしれない。
自分の好みと合わないもの、きらいなものを、一方的に「まずいもの」と表現するのは、失礼千万というものだ。
そんな私も母になり、日々スーパーに食材の買い出しに行く。自分の好き嫌い関係なく、なるべくいろんなものを買って、子どもに食べさせようと思う。
余談だが、つぶあん派の両親に育てられた私は自力でこしあんもしろあんも好きになり、オールマイティあんこ好きだ。そしてうちの長女も、順調にあんこ好きに育っている。
#あんこ #長男の嫁 #姉妹ママ #子育て
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