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月刊「根本宗子」第17号『今、出来る、精一杯。』

月刊「根本宗子」第17号
『今、出来る、精一杯。』
新国立劇場 中劇場




「ほっんとうによかった。めっちゃくちゃよかった。とってつもなく素晴らしかった。あぁもうほんとにどうしよう。素晴らしすぎて心が爆発してしまい、いま自分がどこにいるのかわかりません。PASMOもうまくタッチできてなかったみたいで今改札でピコンという拍子抜けするような音で止められて、どうやら現実にいるみたいです…」


観劇直後の帰り道に感想を書いてたのですが、感情の整理がつかなくてよくわからない感じになってたので1日置きました(わたしの荒ぶる情緒よ鎮まりたまえ)


というわけで昨日、新国立劇場にて『今、出来る、精一杯。』を観劇してきたのですが、まずこれだけは先に言っておきたい。


「ねもちゃんありがとうありがとうありがとうありがとうありがとうありがとう~!!」


いろんな意味でのありがとうなのだけど、多くを語ると野暮なので、この気持ちは忘れずに自分のなかで大切にいつでも思い出せるようにしておこうとおもう。


さて、今回の『今、出来る、精一杯。』は再再演なのですが、わたしは再演を映像で観させていただいたのみで、実際にお目にかかるのは初めてでした。

初演当時23歳で書き上げたねもちゃんのこの戯曲の凄まじい力は、映像を見ただけでもしばらく引きずってしまうほどのものだったので、これ生で見たらわたし途中で具合悪くなって退席しかねないなと思っていたのですが、

観て、驚きました。


再演の時は若いがゆえの荒削りだからこその良さや、役者さんたちの若さゆえの生々しさヒリヒリさがあったし、小劇場ならではの閉塞感や湿度と温度を想像するに相当堪えたに違いないと思うのですが、

30歳を迎えたねもちゃんが新たに手を加えた今回のこの演目は、さながらブロードウェイミュージカルのはじまりのように竜人くんがピアノを1音ならすところから、カーテンコールのない最後まで余計な無駄が一切ありませんでした。むしろ抜け感の余裕すらありました。


最近の演目のなかで比べても段違い。正直面食らいました。全く具合悪くなってる場合ではなかったし、目の前に起きていることをしっかり焼き付けなければいけない、焼き付けておきたいと思いました。


今年はねもちゃんにとってスペシャルイヤーである10周年なのですが、この10年で彼女が得たものは計り知れないし、まだ30歳なのにこの境地…恐ろしい女だ。


また、今回は新たに歌、ダンス、生演奏とミュージカルの要素を分段に盛り込んだ演出が大きな違いでしたが、ダンサーのみなさんが演者の裏の心を代弁をするかのような振りや、だれかにこうしてほしいんだという望みを察してくれているような振りなど、言葉で表すと説明的になりがちなところをコンテンポラリーだけど伝わる表現をされてて、
イメージビジュアルの打ち合わせのときにねもちゃんが「こういうのを今回はやってみたいんだ~」と言ってたことがこういう形になるのかと。それがとても良かったです。


それから竜人くんの歌声、ちょっと信じられないぐらい美しかったです。彼が歌い出す瞬間、空気がスッと変わる。彼のつくるメロディと歌声にはなにもかもを洗い流す力があるように感じたし、闇のなかにもどこか光を与えてくれている余地がたまらなくこの戯曲と合致していて、彼が歌うたびにぐっときました。



ではこの芝居のなにがそんなにわたしの感情を揺さぶったのかというと、それはやっぱりこの戯曲の持つ圧倒的な説得力だとおもいます。

この戯曲には嘘がない。おとぎ話ではない。


感動したから泣いたのではなく、救われたから泣いたのではなく、自分自身が多くのことから逃げていることに圧倒的な言葉の力と演劇の力によって気づかされたのでこんなに気持ちが乱れたのだとおもいます。


ひとは1人では生きていけない。それは弱いことでも恥ずかしいことでもなくて、人生だれもがだれかと関わり合って生きていくものなんだとおもいます。


ここからわたしのはなしになってしまいますが、わたしがここ数年で人との関わりについて最初からわかり合うことを諦めてしまうこと、壁を1枚挟んでしまうことが増えたのは、手放しで人を信じることが怖くなってしまっているからです。


人がなにを考えてなにを感じているのかすべてを理解することはできないし、どの線まで踏み込んでいいかもわからない。


過去信じたことで幾度となく傷ついてしまった記憶から抜け出せずにいるのだとおもいます。


最初から信じなければ、深く関わろうとしなければ傷つかずにすむから。とそんなことばっかり言って自分を守ってばかりいるから、全ての人間関係が中途半端になってしまっているし、挙げ句の果てに自分自身をも信じられなくなっている顛末。


この芝居に出てくるすべての役にいまの自分があてはまるようで、でもみんな怖くても傷ついてもなにが正解かわからなくてもめちゃくちゃ力を振り絞って各々にとって今間違っていないと信じれることを選んで向き合おうとしてる姿をみて、それが眩しくて胸が痛くて。


だれもがみんな強い人間ではないけれど、自分を信じること、相手を信じること思いやること愛することから逃げない「強さ」がわたしには必要だとおもいました。



「いまわたしものすごく充実しています」

と言えるぐらい、とりあえず今、正直に真剣に生きたいです。


と、さいごなんのユーモアもない精神科のカウンセリングのような感想になってしまいましたが、
とにかく、この舞台ぜひたくさんの方に観ていただきたいです!
19日まででもう残り3公演しかありませんが、当日券もあるそうなのでぜひ観てください!!


というわけで、10周年の1年間、たくさん一生懸命走り抜けたねもちゃんに尊敬の念でいっぱいです!よくがんばりました、ほんとうにおつかれさまっっ!😭♡

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