24時間テレビのおもしろい構図

今年も24時間テレビが放送されました。

SNSで批判されることも多い、
おなじみの日テレの番組ですが、

知的障害の弟を持つ私からみて、
ちょっとおもしろいぞ」と思うことがあったので、書きます。

・・・・・・・・・

24時間テレビの毎年おなじみ恒例の光景として、

・旬っぽい人がマラソンを走る
・みんな同じTシャツを着て出演
・ジャニーズが司会
・サライで締めくくられる

などと並び、

・「障がい者が障がいを乗り越えて〇〇に挑戦」

というものがあるかと思います。

足に障害のある人が富士山に登ったり、

知的障害者がダンスを踊ったり、

聴覚障害者が楽器を演奏したり、

といった企画です。

いずれも、

タレントが事前に練習している障害者を訪問して
障害者を「サポート」。

その様子を、当日VTRで放送してから、
生放送中にタレントと一緒に実際に登山したり、踊ったりします。

そして、
「障がい」という「困難」を乗り越えて挑戦している姿に、
「勇気をもらいました」「あきらめない姿勢に感動しました」
と他のタレントたちが、コメントをするのです。

ここ数年は、それに対し、
「感動ポルノだ」という批判もあがっています。

健常の視聴者の、
「何かに感動したい」「勇気づけられたい」
という欲求を満たすために、

障害者を1人の人ではなく、
「障がいという困難を乗り越えて頑張る人」
という存在に押し込めてしまっているのです。

私は、人が何かに対して一生懸命頑張る姿、は
障害があろうがなかろうが尊いものだと思ってます。

だから頑張っている本人はよい。

気になるのは演出で、24時間テレビが杓子定規に

障がいをおった時のエピソードをやや物悲しいBGMをいれてVTRにし、
「障がいを乗り越えて〇〇に挑戦」というテロップをいれることには
気持ち悪さを感じます。

何で障害者は困難を乗り越えなきゃいけないんだ、頑張ってる存在じゃなきゃならないんだと。


ただ、今年の24時間テレビで、ちょっと興味深い企画がありました。

「ブラインドダンス選手権」です。

視覚障害者とタレントがペアを組み、
視覚障害者の社交ダンス(=ブラインドダンス)の大会に、
24時間テレビの生放送中に挑戦する、という企画です。

ブラインドダンスとは、
社交ダンスの男女ペアのうち、どちらか1人以上が視覚障害を持っている、
という競技です。

私は学生時代に社交ダンスをやっていたのですが、

社交ダンスは男性が体で動きを女性に伝え(=リード)、
女性がその動きを体でとらえて踊る(=フォロー)競技なので、
男女で合わせて踊るために、視覚的な要素はあまり重要ではありません。

そのため、おそらく視覚障害と相性が良いのだろうと思います。

24時間テレビの企画では、
SexyZoneというジャニーズのユニットの男の子2人や、
ブルゾンちえみ、小倉優子、佐藤栞里(モデル)が、
それぞれ視覚障害者とペアを組み、大会に挑戦しました。

社交ダンス企画ということで、どんな企画なんだろう~と
ぼーっと放送された大会の生中継映像をみてたのですが、

何がおもしろかったかというと、
24時間テレビお得意の「障害者感動ポルノ」が全く演出できていなかったのです。

佐藤栞里さんや、ゆうこりんと、彼女たちのペアの視覚障害の方とのレベルの差がすごくてびっくり。

足の引っ張り方がすごい。

お上手な障害者の方と、
圧倒的初心者の佐藤さんやゆうこりん。

それもそのはずで、
視覚障害者側は、日頃ブラインドダンスをやっている人たちで、
佐藤栞里さんのペアの方なんかは昨年・一昨年と二連覇しているとのことでした。

(ジャニーズの2人は練習の甲斐あって上達していて、
短い練習期間の中すごいな~、と思ったのですが、
佐藤さんやゆうこりんはあまりダンスが得意ではないのかもしれません。)

おなじみの、
「障がいを乗り越えて頑張る障がい者」と「サポートするタレント」という構図ではなく、
「社交ダンスのできる障害者」と「足を引っ張るタレント」
という構図が生まれていました。


でも、私はそれを「この企画は何なんだ」と批判するつもりは全くありません。

障がい者の足を引っ張るなんて、と、タブー視するのは、それはそれで違うと思うのです。

障害者の足を引っ張る健常者タレントがいて、よいと思うのです。
障害者の足を引っ張ってはいけない、なんてことは全くないからです。

というか、初心者が経験者と一緒に社交ダンスを踊ったら
足を引っ張るのは当たり前です。

障害うんぬん関係なく、この企画を観ると、

ただただ
社交ダンス経験者と社交ダンス初心者が、
一緒に練習して一緒に大会に臨む物語であり、
ペアが2人手を取って緊張した面持ちで、結果発表の瞬間を待つ姿が、
素敵だなと思いました。

24時間テレビのスタッフはそういう意図で作ったのではないかもしれませんが、、


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