映画感想#25 「レイルウェイ 運命の旅路」(2013年)
原題 The Railway Man
監督 ジョナサン・テプリツキー
脚本 フランク・コットレル・ボイス、アンディ・パターソン
出演 コリン・ファース、真田広之、ニコール・キッドマン、ステラン・スカルスガルド、ジェレミー・アーバイン、サム・リード、石田淡朗 他
2013年 オーストラリア・イギリス合作 116分
憎しみを連鎖させないという勇気
第二次世界大戦の最中。日本軍が、当時連合国軍の拠点であったシンガポールを制圧し、大量の捕虜を働かせて作られた泰緬鉄道(タイ〜ミャンマーを結ぶ軍事物資運搬のための鉄道)にまつわる、実話に基づくストーリーです。
主人公は、捕虜の一人として鉄道建設に動員されたイギリス人将校、エリック・ローマクス。
彼の受けた傷と憎しみ、その苦しみからの解放を描いています。
捕虜を使った泰緬鉄道建設は、戦争犯罪として裁判にもかけられている事件です。
エリックや他の捕虜は、とにかく非人道的に扱われ、虐待や殺害は日常茶飯事。戦争がもたらす倫理観の崩壊に、改めて恐ろしさを感じました。
トラウマになるほどの酷い扱いを受けたにも関わらず、もう一度その場所へ行き、憎い日本人に会うというのは、ものすごく勇気のいることだと思います。
思い出したくもない辛い思い出と向き合い、敵であった日本人と対話をする。
当時の状況や思いを互いに共有することで、憎しみが薄れていく過程が描かれています。
エリックと再会した日本人というのは、当時通訳の任務についていた、永瀬隆さんという方です。終戦後、日本が行ってきた残虐な行為によって亡くなった方を巡礼するために、タイに頻繁に訪れていたそうです。
永瀬さんのように、生きて、死者を弔い、戦争の悲惨さを伝えるという行動もまた、勇気のいること。
憎しみを連鎖させず、断ち切る勇気を持つ。それが、平和への第一歩であってほしいと思います。
☆観賞日 2014年5月7日
投稿に際しての余談 〜憎しみと向き合う映画〜
憎しみについて考える映画を二つ。
①「家へ帰ろう」(2018年/パブロ・ソラルス)というアルゼンチンの映画なのですが、ホロコーストを生き延びたユダヤ人男性が、ある目的のために故郷ポーランドへ帰るというお話。過去の経験ゆえ、経由するドイツの地を踏むことができない彼は、周囲の人の優しさによって、かつての憎しみから少しずつ解放されていくのです。
②「ぼくたちの哲学教室」(2021年/ナーサ・ニ・キアマン、デクラン・マッグラ)という映画では、イギリス・ベルファストの小学校での哲学教室の様子を伝えています。
「誰かに攻撃されたらやり返しても良いか?」という問いに対して、「やられたらやり返せと父親に教わった」という子供。それは、もしかしたら一般的な考え方なのかもしれない。でも、本当にそれで良いのでしょうか?
校長先生は、子供の率直な意見に耳を傾け、丁寧なコミュニケーションで答えを導いていきます。
憎しみという感情の根深さを理解し、復讐による負の連鎖を起こさないこと。問題の大小に関わらず、自分もそうでありたいと思いました。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
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