映画感想#41 「おみおくりの作法」(2013年)
原題 Still Life
監督・脚本 ウベルト・パゾリーニ
出演 エディ・マーサン、ジョアンヌ・フロガット、カレン・ドルーリー、アンドリュー・バカン 他
2013年 イギリス・イタリア 91分
死者に向き合うことを生きがいとする
主人公ジョン・メイを演じるエディ・マーサンの名演を見ることができました。
ロンドンの民生係ジョン・メイの仕事は、亡くなった身寄りのない方の"お見送り"をすること。そんな彼のささやかで几帳面な生き方を映し出す、小ざっぱりとした映画です。
とても神経の使う仕事だと思うけど、ジョン・メイは死者に真摯に向き合っていました。彼らを送る葬儀という儀式に向けて、誠実にできるだけのことを準備する。
彼がこの仕事にこだわっていたのは、おそらく彼自身もまた身寄りのない"孤独死予備軍"だったからでしょう。孤独死という、自分にも降りかかるかもしれない最期を、誰かに見守ってほしいという密かな願いが、彼を仕事に向き合わせていたのかもしれません。
訳あって最後の仕事になったビリー・ストークの案件で、彼の娘ケリーに対して心を開いていくジョン・メイ。その後の悲劇にはちょっと驚き。右・左・右を確認して道を横断しなかったからでしょうか。
彼の手配した葬儀がたくさんの人で囲まれているのに対して、ジョン・メイはたった一人きりで運ばれていく。
その後、ジョン・メイに見送られた人々が彼をお見送りに…。彼の仕事が評価されていることを表しているシーンだったと思います。
しかし、どうしてこういうストーリーにしたのでしょう。
死者に向き合っていた彼の日常が、生者に向かい始めた途端、こんなことになるなんて。死を以てしか、彼の評価はできなかったのでしょうか。
後味が悪いとは言わないけど、急な悲劇に感情が追いつかないまま映画が終わってしまう感じでした。ジョン・メイが幸せに進んでいく姿が見れたら良かったのに…とちょっと淋しく思います。
☆鑑賞日 2015年3月9日
投稿に際しての余談①〜原題STILL LIFE〜
原題はStill Life=静物。Stillには、「ひっそりと」「静粛な」のような意味もあるので、「静かな人生(生活)」とも取れます。全体的に穏やかなこの作品とぴったりなタイトルです。
邦題は「おみおくりの作法」となり、本作のテーマである、死者に向き合うことを端的に表す良いタイトルだなと思いました。
投稿に際しての余談②〜エディ・マーサンのこと〜
イギリスの名優。主演というよりは脇役タイプでしょうか。
「シャーロック・ホームズ」(2009年/ガイ・リッチー)のレストレード警部役が好きです。最近だと「オペレーション・フォーチュン」(2023年/ガイ・リッチー)も出てましたね。この映画ではキャストに名前が載っていないようですが…。いや、ちゃんと出てましたし、良かったですよ!
イギリスらしい、"tidy"(きちんとした)という言葉を体現するかのような方だと思います。他の出演作はあまり見たことがないので、今後追いかけていきたい俳優さんの一人です。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
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