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お気に入りを身に纏って。

五月の休日のとある日。
特にこれといった予定はなかった。

やることを済ませて家の中でひとりでいると襲ってくる睡魔。
少しだけ横になって、時計を見るともう午後二時をまわっていた。外は天気もよく晴れている。
ふと、「何してるんだろう、もったいない」と思い、スマホでカフェを検索。
最近ラテアートをはじめて体験してから、そのとき味わった初体験のワクワクが体の片隅に残ったままだ。

なんとなく雰囲気のよさそうなカフェを見つけた。
そこに向かうためにメイクをし、服を着替え、アクセサリーをつける。
そして最後は香水で仕上げ。
全部お気に入りのものを纏った。
天気のおかげもあるのか、気分は最高。

職場の子に借りたひとつも読んでない本を、この機に飲みながら読もうと思っていたのだが持ってくるのを忘れた。
カフェの近くに図書館があったから立ち寄ってみた。
パッケージで目についた本を借りてみようと思い、うろうろ。
平日の昼間の図書館は意外と人が多かった。
本当に本目的の人から、暇を持て余しているような人まで。さまざまな時間の使い方をしている。
日頃、本を読まない私は本選びに苦戦したが、なんとかお気に入りのパッケージの本を見つけて一冊借りることができた。

その本を持って、カフェに向かった。
お店のメニューはドリンクオンリーで、ベンチが三脚あるだけのこじんまりとした空間だった。
本当はラテアートしたものを頼みたかったが歩いて暑くなったので、冷たいカフェラテを頼んだ。
本を読もうと思ったが、隣の客と店主の会話が聞こえてきて本の内容が全然頭に入ってこない。
店主は30代くらいの男性、客は30歳くらいの夫婦と1歳くらいの赤ちゃんとワンちゃんを連れたご家族。店主と夫婦の奥さん側がしっかりとした方言で家族の内情を話している。おそらく友だちなんだろう。何度も意識的に耳を遮断しようとしたが無理だったので、諦めて聞いてみることにした。
内容は、元気だったおばあちゃんが突然亡くなって、残されたおじいちゃんの元気がなくなっているという、ちまたでよく聞く話だった。内容は全然微笑ましくないが、カフェで店主と客が身内話を包み隠さず話している光景は微笑ましかった。私もいつかそんなのんびりとした空間に参加したいと思った。
そして本も読めず、ドリンクも飲んでしまったので予定していたより早くお店を退散した。

お店を出てすぐ、「すみません〜、写真撮ってもらっていいですか?」60代くらいのおばさまに声をかけられた。
「もちろん、いいですよ」とお受けし、スヌーピーのぬいぐるみとツーショットを取って差し上げた。
おばさまに、撮った写真を確認してもらうと「いい顔してるわ。さっき外人さんに撮ってもらったんだけど、私全然笑ってなかったの」と喜んでもらえた。
最近、エモい写真を撮りたい欲が高まっている私にとって、人の写真を撮って喜んでもらうという体験をさせてもらえてむしろありがたかった。

そしてお次はというと、新しい洋服探し。
新しい季節がやってくる前にはいつも新しい洋服が欲しくなる。
たまに寄るお店で、有効期限付きのポイントをもらっていたので消化したくて寄ってみた。
お店に入り、かかっている洋服をパラパラと見始めてすぐ店員さんが声をかけてきた。
なにを言われたか忘れたけどいきなり商品の説明をがつがつ言ってきた。見ているだけだったからそんなに興味がなかったし、言い方が物腰柔らかくなかったから一瞬で嫌だなと思ってしまった。
これは小さいお店あるあるだと思うけど、商品自体はまあいいかなと思っても店員さん次第では購入したくなくなる。
私も販売員をしているから、「人の振り見て我が振り直せ」と教訓をいただき気をつけようと思った。

結局そこではいいものに巡り合えず、店舗が広いファストファッションのお店に向かった。
何着か試着して、自分に似合うお気に入りの洋服を見つけた。
試着して気づくけど、同じ種類のものでも色の出方が全然ちがうことがある。今回はデニム生地だったから特にだった。
洋服選びで重要だと思うポイントは、色味、サイズ感、シルエット、素材感、首回りの作り、持っている他のアイテムとの組合せ、動きやすさなどだ。わりとこだわりが強い。
それは自分が一番映える洋服を着たいと思うからだ。
でも一旦その日は購入しなかった。最近服を断捨離したいと思っているからだ。帰ってもまだ欲しいと思えるものが本当に欲しいものだから一旦寝かせることにした。

そして、一日のおでかけが終了した。

今日外に出ると決めて身に纏ったお気に入りのものたち。そのお気に入りで自分を高めて外に出たから得ることができた何か。

『お気に入りを身に纏うことで、120%のパフォーマンスを出せる』と私は思う。



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