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【第4回 リハビリスポーツプログラム実施編】スポーツを活用した 地域リハビリテーション・システム 構築モデル事業

こんにちわ!
鮎川地域共生コミュニティ研究所の鮎川です。

当研究所は「だれもがコミュニティにアクセスできる地域社会をつくる」をVISIONとして、多世代、障害のあるなし関係なく地域住民が緩やかに繋がり合い、日々の暮らしの中で困りごとがあったり、あたらしいことにチャレンジしようと思ったとき、それぞれが自分の出来ることで協力し、支え合えるコミュニティを形成し、地域共生社会の実現をすることをMISSIONとしています。

今回は第4回(2020年11月1日)となりました「スポーツを活用した 地域リハビリテーション・システム構築モデル事業」のレポートです。

この事業は「日本リハビリテーションスポーツ学会(以下、JARS)」様との共催事業で、2020年8月~来年2021年3月まで実施。

【年間スケジュール】
8月当事業概略説明及び意見交換会      
9月 アセスメント・初回評価  
10月 スポーツプログラム担当者による指導
11月 スポーツプログラム担当者による指導 
12月 スポーツプログラム担当者による指導 
1月  スポーツプログラム担当者による指導 
2月  スポーツプログラム担当者による指導 
3月 アセスメント・最終評価、振返り

事業の目的は、医学的根拠と評価ができる「リハビリテーションスポーツ(以下、リハビリスポーツ)」を開発し、病院・居宅事業所・包括支援センター・社協等との地域連携を図る「地域リハビリシステム」を構築することにより、医療、介護の制度の枠にとらわれず癌や疾病、フレイル、サルコペニア、要支援・要介護者、障害者、難病患者など、その種類や程度に関わらず、「スポーツが持つ特性と力」を利用し、心身機能や運動能力の向上と体力の増進を図り、自己実現と社会参加ができる地域社会を創造する事であります。

※下記、第1回、2回、3回の記事

今回、JARS様と共催事業に至った経緯は「地域で直面した課題」が背景にあります。

私は地域住民の皆様と地元埼玉県所沢市で2017年2月から地域共生社会の実現を目的とした「ユニバーサルスポーツ・コミュニティ事業」を毎月1回実施していましたが、2年目から参加者が脳梗塞、対麻痺、ギランバレー症候群で入院中の方や、70代の女性で脳梗塞発症後に要介護4になりケアマネージャーからデイサービスやデイケアを勧められたが「あんなところ行きたくない」と介護サービスを拒否されてる方など参加されるようになり大変喜んでいただけた。今後もぜひ継続して参加して頂きたいと考えたとき、市民主体のコミュニティでは怪我や急変など安全面に不安があると考え、医療的背景があるリハビリスポーツの必要性を考えるようになりました。

そういった経緯から私が2017年から入会したJARS伊佐地会長に御指導いただき、その事がキッカケでリハビリスポーツの活動実績のあるJARS様に共催事業として御協力頂き、事業を実施できることとなりました。

下記、JARS様のリハビリスポーツの定義です。

リハビリテーションスポーツとは、疾病または障害のある人々がその種類や程度にかかわらず、スポーツが持つ特性と力を利用し、心身機能や運動能力の向上と体力の増進を図りつつ、自己実現と社会参加を最終目的として、医療、教育、 介護、社会活動などで行われるスポーツのすべてを言う。名は活動を表すかのごとく、我々が目指すべき方向を示す。

上記定義にある「スポーツの持つ特性」に関してはJARS伊佐地会長から下記のように説明して頂きました。

・だれでも小学校などで1度はやったことがあり馴染みがある。 
・ルールを理解するために頭を使い、記録や点数など数字が出るので分かりやすく、それをより良くしようと目標を立て頑張るようになる      
・自発的に出来る努力を繰り返しやろうとすることで自然に体力がつき、時には競い合っていつも以上の力を発揮し自己の限界が広がる
・人と一緒にやるのでコミュニケーションがとれ、人との交流が楽しくなり精神的にも社会的にも多くの効果をもたらし他者との関わり方や社会性、創造性などが助長されることにより医学的リハビリと社会的リハビリ双方への有用性があると考えられる。   

こういったスポーツの特性を活かし、スポーツ本来の定義である「一定のルールに則って勝敗を競ったり、楽しみを求めたりする身体活動」を踏まえたリハビリスポーツプログラムが実施されました。

※日本リハビリテーションスポーツ学会
http://jars.kenkyuukai.jp/about/

今回の講師は前回に続き、埼玉県総合リハビリテーションセンター健康増進担当 硴田智也先生

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医学管理担当も前回に続き、志村大宮病院 副院長 兼 茨城北西総合リハビリテーションセンター長 大仲功一先生

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そして、国立障害者リハビリテーションセンター学院 梅崎多美教官が学院の学生3名様の研修を兼ねて参加して頂いてます。学生の皆様には研修の一環として来年2021年1月、2月のプログラムを担当して頂きます。

梅崎多美教官

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学生の皆様(3名)

・本間さん

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・藤崎さん

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・杉本さん

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また、茨城県から理学療法士の方々が3名見学に来られました。

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2020東京パラ出場をを目指してるパラバドミントン小倉理恵選手も引き続き参加して頂いてます。

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それでは当日のレポートをスタート。


まずは、大仲先生の参加者到着後バイタルチェックから(血圧・体温・SPO2を測定します)

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バイタル測定が終わった方から、国立障害者リハビリテーションセンター 自立支援局 第二自立訓練部 肢体機能訓課 理学療法士の池田竜士さんから参加者へ9月実施した初回評価の結果のフィードバックがありました。

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そんな最中、事業も4回目となり参加者の緩やかな関係性も構築されつつあります。実はこういったひと時は非常に重要でリハビリの継続性にも繋がります。

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それでは下記、今回のプログラム内容です。

①座って行う10ミニッツエクササイズ(10分間運動)
1)つま先タップ(足関節の底背屈)
・足を床に着けたまま、つま先を上げ、その後つま先を床に繰り返し打ち付ける
2)貧乏ゆすり(ヒールシェイク:足関節の底背屈、膝、股関節の屈曲伸展)
・座ったままつま先立ちになり、踵を上下させる。
3)ヒールステップ(1)と2)を連続で行う:下腿部の筋運動)
・足を床につけた状態からつま先を上げたり踵を上げたりする。
4)膝の曲げ伸ばし(膝の伸展屈曲)
・座ったまま、片脚の膝を伸ばし、その後膝を曲げ、足を床につけることを繰り返す。
5)足踏み(フットスタンプ:股関節の伸展屈曲、腹筋)
・座った姿勢で股関節の動き(腿上げのような動き)を意識しながら足踏みを行う。
地団駄を踏むような動き。
6)お辞儀(体幹の伸展屈曲:腹筋背筋、頸部周辺の筋)
・座った姿勢のまま、息を吐きながら上半身を太腿につくまで倒し、その後息を吸いなが
ら椅子の背もたれまで戻す。動きに慣れてきたら首の曲げ伸ばしも同時に行う。
7)肩甲骨引き(弓矢引きの動き)
・片手を前方に伸ばした状態から、肩甲骨を背骨に引き付けながら体幹を捻って元に戻す。
8)体幹の回旋(身体捻り)
・腕組みをして左右に大きく体幹の捻転を行う。捻転を行う際に首も同じ方向に向ける。

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②カレーライスをつくろう(移動能力、バランス)           これは基本動作のうち、「歩く」、「走る(車いすなど)」「(カードを)つかむ」という動作をベースにして、リレー形式で集団で実施したものです。個人で行うことも可能ですが、集団で行うことで一体感を感じることができます。また移動能力の高い低いだけではなく、「運」という要素が加わり、集団で行うことでより一体感が生まれる。             【概要】
リレー型式でカレーライスの具材カードを6
種類集めます。早く全種類の具材カードを集めた
組の勝ちです。
【ルール】
・折り返し地点の机にある、裏返しの具材カード
の中から1枚を選び、自分のチームに持ち帰る。
・カードを取るときに具材カードを見てはいけな
い。
・持ち帰ったカードをホワイトボード係の職員に
渡したら、次の走者にタッチする。
・全種類がそろうまで往復する。
・6種類の材料全てを早くそろえた組の勝ち。

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③島のせボッチャ 投動作(転がす:狙う意識を持つ)・バランス   【概要】
「ボッチャ」のボールを投げる、またはころが
し、的となる島に乗せ合う競技。ただ島に乗せる
だけでなく、すでに島に乗っている相手チームの
ボールをはじき出してもよい。                    【ルール】
・的となる島までの距離は5mとする。
・島の大きさは新聞紙 1 枚半とする。
・一組3人とし、ひとり2球の球を投げる。
・全員が投げ終わった時点で、島に残ったボール
の数が多い組の勝ち

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④スクエアボッチャ 投動作(転がす:狙う意識を持つ)・バランス      基本的なルールは「ボッチャ」と同じですが、9m四方のコートの四辺に4つのチーム(赤・青・緑・黄)に分かれ、的玉(ジャックボール)に自分のチームのカラーボールを近づけるゲーム。投げる順序は赤→青→緑→黄の順で投げる。最終的に的玉に1番近いカラーボールのチームの勝ち。

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⑤天の羽衣 (上肢移動、バランス、周囲の確認)           【概要】
羽衣のような浮遊物をうちわであおいでゴールに入れます。      【ルール】
・スタート時は向かい合わせになって2列を作る。
・うちわであおぎ、羽衣が落ちないようにゴールに運ぶ。
・競技中は列から移動してもよい。
・早く羽衣をゴールに入れた組が勝ち。
・羽衣が床に落ちた場合は、審判が羽衣を列に戻してから再開する。
・2回戦行う。2回戦目はスタートとゴールの位置が逆になる。

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⑥バスケットボール ドリブル&シュート               マルチタスク(複数の情報を同時に処理する・歩・走動作、上肢動作)

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⑦バルーントレーニング(呼吸筋トレーニング)
腹式呼吸を行い、体幹深部にある呼吸筋の動きを確認し、姿勢保持、腰痛予防、消化器系への刺激を行う。(血圧上昇が考えられるので、血圧の高い
参加者はストローのみで行うか、見学だけでもOK)

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以上、プログラム内容でした。


終了後、皆さんで振り返り。                     お1人ずつ順番に感想を共有して頂きました。

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振り返りとアンケートでは参加者の皆様から下記のような感想を頂きました。

【感想】

(参加者)

●自分の弱い部分が見えた。

●楽しくあっという間の時間でした。苦手なプログラムがあると次は!という気持ちになります。安全面を配慮して頂いており安心してプログラムを行えています。感謝しています。

●今日も楽しかった。数年前から呼吸器系の症状に悩まされていたが風船をふくらませながら強化していきたい。

●毎回、皆が活き活きと楽しく参加されているのが、とても印象的で私も楽しんでいます。

(学生)

●楽しみながら勉強させて頂きました。対象者の方々のためにはどうしたら良いか(体をどう使うのが良いか、どの程度の補助が最適か)をもっと考えて次回も参加させて頂ければと思います。

●1つの種目の中でも、少しづつルールや道具をかえて楽しめるよう工夫されてるのが印象的でした。今回もたくさん勉強になりました。

●楽しくやることが大切だなと感じました。

(茨城から見学に来られた理学療法士の方々)

●大変参考になる情報、スポーツを知ることが出来ました。様々な活動をされてる方が各地にいることを知り、自分自身励みとなる時間になりました。茨城の地にスポーツの文化を広げていきたいと思います。

●定期的なプログラムとして開催され、楽しい場を作られてるのが凄いと思いました。また、介入前後で評価を取っておられるのでPT(理学療法士)として非常に結果に興味があります。ご発表される際はぜひ聴きに行きたいと思います。茨城でも見習いたいと思います。

●本日は見学させていただきありがとうございました。様々な工夫をされていて凄く楽しめました。参加者の方の満足度が高いプログラムを行われてるなと思いました。

【最後に】

当事業がここまで4回開催できたこと多くの皆様に感謝申し上げます。茨城から見学に来られる方々がいたり、参加者同士のコミュニケーションも随所に見られ終始和やかに時間が過ぎていきました。参加者アンケート感想の他に「新しく楽器演奏をはじめてみたい」「風船をふくらまして腹筋の強化をした」「より身体に意識を向けるようになった」「朝のウォーキングはじめました」など、とても前向きな気持ちや行動がわかり、パラバドミントンの小倉さんからも「体験会でバドミントン以外に皆が楽しめるプログラムを考えるようになった」など嬉しいコメントを頂きました。事業開始からまだ4回目でありますが参加者の皆様に行動変容が起きているのが本当に素晴らしく、この事業の目指すべき目的が達成され始めてることに感動しました。

また余談ですが、今回驚くことに実施したプログラム「天の羽衣」の動画をFacebookに投稿したのですが、ブラジルの学校教育関連のグループにシェアされていたり、世界銀行が運営するFacebookグループにも投稿するとリアクションがありました。(下記画像)

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そんな中、ブラジルの方とチャットしたと時に下記のようなコメントを頂きました。

 (翻訳アプリで直訳) 私もスポーツと仕事をし、私の焦点はスポーツの教育のための技術の使用に焦点を当てており、これにはリハビリテーションのためのスポーツの練習が含まれます。日本が持っている高齢者のケアは素晴らしいことだと思います。ここで私たちはまだ歩いている、多分いつか私たちは高齢者に向かって注意のこのレベルを持つことができます。すべての社会は高齢者の人口が多いでしょう。私たちは、一生懸命働いた人々に特別な注意と敬意を持つ必要があります

今回、このような事象を通じて日々やることは「地域」ですが視点は「グローバルに持つ必要性」を感じる機会となりました。スポーツは世界的にみると社会開発に使われていて貧困の是正やAIDSの撲滅などに使われてる事例があります。社会開発とは、経済開発の進展に伴う国民生活への有害な影響を除去または緩和するために保健衛生・住宅・雇用・教育・社会保障などの公共的サービスの増進を目指すことを指します。ゆえに、私たちが行っているリハビリスポーツはいずれ国内外問わず社会開発の一端を担うと考えられるのではないでしょうか。

いずれにしても本質はスポーツの特性を活用した「楽しい!」だと思ってます。

楽しいから継続して、継続するからこそ、リハビリの効果がある。

改めて原点を確認しながら次回に備えていきたいと思います。

そして、いつも御協力頂いているすべての皆様に心から感謝申し上げます。

鮎川地域共生コミュニティ研究所 所長 鮎川雄一

【画像協力】木村理氏

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皆さん良い笑顔!!

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