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狂犬病予防法(昭和25年成立時)/ 第二章 通常措置(登録)第四条

今のではなく、昭和25年に出来た時の狂犬病予防法を読んでいきます。

前回まで「第一章 総則」でしたが、今回から「第二章 通常措置」。具体的に「何をするか」の話。その内、通常措置は狂犬病の発生があってもなくても行うことを定めています。

参考までに「通常措置」に含まれる項目を列挙してみます。
(登録)第四条
(予防注射)第五条
(抑留)第六条
(輸出入検疫)第七条
なんとなく「そうだね」と思える内容ですね。

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第四条
(※條を条に直したり、当時の文字と違う書き方をしています)

第二章 通常措置
(登録)
第四条 犬の所有者は、厚生省令の定めるところにより毎年一回その犬の所在地を管轄する都道府県知事に市町村長(都の区が存する区域にあつては区長とする。以下同じ。)を経て犬の登録を申請しなければならない
2 都道府県知事は、前項の登録の申請があつたときは、原簿に登録し、その犬の所有者に犬の鑑札を前項の市町村長を経て交付しなければならない。
3 犬の所有者は、前項の鑑札をその犬に着けておかなければならない
4 都道府県知事は、犬の登録について、一頭につき一年三百円以内の手数料を徴収することができる。

国立公文書館デジタルアーカイブ 狂犬病予防法・御署名原本・昭和二十五年・法律第二四七号

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毎年一回

ご存じの方も多いと思いますが、昔は毎年登録をしなければなりませんでした。
登録が毎年から生涯に一回になったのは、平成六年(1994年)の改正から。
(参考)許可、認可等の整理及び合理化に関する法律(平成6年法律第97号)
生涯一回になり犬が亡くなった時の届け出がないことが問題になったのか、25年で削除を可能にする規則があります。
「その犬が生後二十五年以上であつて、かつ、死亡したものと推定される場合」(参考:狂犬病予防法施行規則(昭和二十五年厚生省令第五十二号)(登録の削除)第十条 一

鑑札

都道府県知事が交付し、飼い主は犬に着けておかなければならない。
これは今と同じですね。
注射済票は、次の第五条でやはり「着けておかなければならない」となっているのも今と同じ。ただし、注射が年一回ではありませんでした。

一年三百円

この金額は最高(ここまで徴収できる)ですが、今の価値にしたらどれくらいなんだろうと調べたことがあります。だいたい数千円から一万円くらいのようです。裕福な家庭ならば払えなくもない金額ではありますが、時代は敗戦から5年後であることを考えると、多くの家庭には犬を登録する経済的な余裕がなかったのではないかと想像しています。
この金額は狂犬病予防法の登録にかかる手数料ですが、これとは別に各都道府県で犬税もありました。

犬の登録

この法律が出来る以前も狂犬病対策として犬の登録があったことは、小川未明の「青い石とメダル」(初出は昭和7年)でご存知の方も多いと思います。
それまでの狂犬病対策の大まかなことが書かれているページを紹介しておきます。

わが国における犬の狂犬病の流行と防疫の歴史 5
人と動物の共通感染症研究会

畜犬取締規則について、当時の状況と条文が書かれた興味深いページも紹介しておきます。
畜犬取締規則・明治42年5月8日警視廳令第16号
帝國ノ犬達
条文をいくら読んでも登録料は出てきませんが「頸環(首輪)を附着すべし」とあり、その首輪が立派なことが分かります。

これが改正されてメダルっぽい「畜犬票」になります。
畜犬取締規則・大正10年3月8日警視廳令第3號
帝國ノ犬達
こちらも登録料は出てきません。処分的なこともあまり書かれていません。

処分的なことは、更にその前の(明治14年の)畜犬取締規則、更に前(明治6年)の畜犬規則に書かれています。それら資料は以下のページにあります。
狂犬病予防法関連 明治以後の犬に関わる法令の現代語訳
みやざき・市民オンブズマン
明治15年には「みだりに他の犬を撲殺しないよう注意すること」と指示が出されています。

上記資料を読むと、登録については、明治6年には「頸輪を付け、その飼い主の住所姓名を木札に記し、これを頸輪に付けておくこと」とあり、明治14年には「その飼い主の住所姓名を詳しく書いた頸輪または札を付けておくこと」となっています。


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