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贋作小説

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#人間失格

贋作・人間失格

 私の右手には契約書が、そして左手には何もなかった。そして、汚れた尻があった。選択肢をふたつに絞るまでに、時間はそうかからなかった。しかし、である。腕時計を覗く。アポイントまでの時間は、あと五分。すぐにでもこの閉鎖空間から脱出し、身だしなみを整えて得意先を訪ねなければならない。額に滲み出た汗は粒となり、やがて頬を伝っていった。



 思えば、ここに来るまでの道のりは、決して平坦なものではなかっ

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