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私が大好きな小説家を殺すまで、読了

自分をどん底から救ってくれた人、大好きで憧れて、尊敬して崇めている相手が朽ちてゆく姿を見て、私は耐えられるだろうか。何かしたい、自分の無力さと相まって心を痛めるばかり、になるだろう。

純粋で誠実だったはずの愛と祈り、期待と信頼は呪いに姿を化えて、相手の崩壊を助けていくばかりになるでしょう。そんなお話です。

努力で守ってきた自分の大切なものが、只の才能に喰われていく感覚。お互いがお互いを殺した。だけど人と人のすれ違いの物語、なんて陳腐な表現では間に合わないくらい、神聖な2人だけの話。だったと私はおもいました。


『憧れの相手が見る影もなく落ちぶれてしまったのを見て、「頼むから死んでくれ」と思うのが敬愛で「それでも生きてくれ」と願うのが執着だと思っていた。だから私は、遥川悠真に死んでほしかった---冒頭より』
この冒頭とそしてタイトルから、ストーリーを察していたつもりだったけれど、これらにいい意味で裏切られました。

これはきっと愛の物語だけれど、愛の物語で片付けてしまうのは失礼なような、救いようのない抱きしめたくなるお話でした。私のお気に入りの小説のひとつになりました。

それから、作者の斜線堂さんのあとがきが好きです。

『私が大好きな小説家を殺すまでー斜線堂有紀』

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