コミカルに潜んだグロテスク「チャーリーとチョコレート工場」感想
※このnoteは映画「チャーリーとチョコレート工場」のネタバレ全開で話を進めています。ネタバレ厳禁の方はそっと閉じていただけるとさいわいです。
月曜の夜、ちょっといいウィスキーをちびちび舐めながら、10数年ぶりに映画「チャーリーとチョコレート工場」を観た。
小さなオジさん(ウンパ・ルンパ)が風刺をきかせて歌って踊るシーンが大好きで、すっかり忘れていたけど、ラストで明かされるええ声のナレーションも小さなオジさんで「お前だったんかいっ!」って超ウケた。語彙力。
いけ好かない子どもたちが懲らしめられて、小さなオジさんが歌って踊るポップなファンタジー映画(私的解釈)。久しぶりに見てみると、想像以上に自分好みで驚いた。言い方は悪いけど、殺人事件が起きない映画ってあまり惹かれないのに(もっぱらミステリー)この作品ってコミカルなようでちょっと不穏で、グロテスクな感じがするのだ。
たとえば、選ばれし子どもたちがチョコレート工場のゲートを潜り、歓迎の人形ショーがはじまるところ。火花を散らしてドロドロに溶けて目玉がポロリ…の人形のグロさったら。何も知らず本編を観始めたら、ホラーと勘違いしてしまうんじゃないか?
そもそも、ひとり、またひとりと減っていく子どもたちがどうなったか分からないまま、目まぐるしく話が進むのも、終わるまで何も考えさせないぞって意思を感じてめちゃくちゃ怖い。
液状のチョコレートと一緒にパイプで吸い上げられるとか、焼却炉に繋がるダスト穴に放り込まれるとか。人体が真っ青になって膨張したり、指で摘まめるくらい小さくなったり、コミカルなムードにうっかり笑ってしまうけど、ディテールを見つめると背筋がぞっと冷たくなって、思いのほかホラー・フレーバーがしっかり効いている。
コミカルな皮を被って、不気味さやグロテスクが潜んでいる。今に何か恐ろしいことが起こるんじゃないかって不穏な感じが、なんとなく恩田陸作品を思い出させた。そういえば恩田陸って、原作の「チョコレート工場の秘密」が好きってどこかで読んだなあ。
そんなことを思っていたら、透明エレベーターがぐんぐん加速するシーンがやってきた。工場長ウォンカが「“上と外”だ!」と言った瞬間、あれ、恩田陸の小説にそんな名前あったよなあ、と心がざわざわ。
「お前だったんかいっ!」とひとしきり笑ってから、すぐにスマホで「上と外」を検索した。やっぱりありました、恩田陸の小説に。
すぐといったら嘘になるけど、いつか必ず読むの決定。
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