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すっかり夢中、土鍋ごはん

炊飯器があるこの時代に、私はすっかり、土鍋ごはんに夢中です。

物事には「今しかない」と思うタイミングがある。例えば、読んでいた小説の中で、土鍋で米を炊く描写が印象的だったとか、生米からお粥を作るnoteクリエイターさんのレシピを試したくなったとか、「これだ!」と思って買った和食系の料理レシピ本に、土鍋を使った炊き込みご飯があったとか。

今やらず、いつやるの? この全部をなんとなく「ふぅん」で流してしまったら、この先、一生土鍋と縁を繋がず生きていくことになるかもしれない。…大袈裟に言ったけど、要するにそれって、ものすごく寂しいことじゃないか?

こうして我が家に迎え入れた、鈴のようにコロンとした土鍋ちゃん。愛らしいフォルムとは裏腹に、ずっしりと重たい。(冷静に読み返して、大分欲目が出ているけれど、やっぱり可愛い!)

同封されていた説明書に従い、さっそく米を炊いてみた。米を洗って、ザルで水切りする。ボウルに米とたっぷりの水をいれ、30分放置(吸水させる)。ちなみに寒い時期は1時間は置いておくといいらしい。

吸水後、明らかに米粒がぷっくり膨らんでいて、何をするでもないけど、しみじみ手を抜いちゃいけない時間だなあと思う。

吸水が終わったら水を切り、土鍋に米と適量の水を加える。蓋をして中火で約13分(沸騰の音が聞こえてきてから、+4分が目安)。火を止め、そのまま15分蒸らしたら炊飯完了。

吸水といい、蒸らしといい、圧倒的に放置している時間が長いから、意外と手間は感じない。思えば、ご飯は炊飯器のない時代から日本の食卓に並んでいたのだから、支度がめちゃくちゃ複雑で大変なわけはないのだ。

とはいえ、何も“初めて”で上手くいくとは思っていない。…いなかった。びっちゃびちゃの炊き上がりだったらどうしよう。それならまだいいけど、芯が残っている硬いご飯だったらイヤダナアァ…。

恐る恐るフタを開けると、浦島太郎の玉手箱みたいに、もわもわと白い湯気がのぼってきた。

視界が晴れると、そこには、ふっくらとして、ツヤッと輝く、まごうことなきご飯!

(えっ、ご飯できてる!?)

炊いたのだから、当たり前。だけど、そこにあるのは動揺してしまうくらい、出来立てで、おいしそうなご飯である。

箸で摘んでみると、その瞬間、私が土鍋ちゃんに、あるいは自分自身に抱いていた疑惑がすべて吹っ飛んだ。

(うわわわわわ!おいしそう…!)

はしゃいだ心の声を、しかと聞いた。

ほんのり、お焦げもできていた。味は贔屓目ではなく、やっぱりいつもと違う、と思う。めいっぱい水を吸い込んで、一粒一粒がふっくらとしているご飯は、甘みが強い。弾力もあって、食べ終えた後の満足感が高い。

初土鍋ごはんは、私に幸せと、感動と、新たな探究心を芽生えさせた。水の代わりに、出汁を使って、作り置きしておいた鶏きんぴらをのっけて炊飯。

う、うまい! 甘めの鶏きんぴらのうまみがお米にまとわりついて、これで汁物(欲を出せば漬物も)があれば、立派な一膳だ。

生米からお粥を作るnoteクリエイター、鈴木かゆさんのレシピで、茶粥を作った。ほうじ茶でお粥を作ると知った時の、あの衝撃…。名探偵がついに真犯人を突き止めた時みたいに、確信して(絶対おいしいやつ…!)と迷わず作ることを決めた。

ほうじ茶の香りに包まれて、ほっとあったまる優しいお味。作っている最中の、ぽこぽこ沸騰するほうじ茶とお米の音に耳をすませる時間も、究極に癒しだった。

別に炊飯器より土鍋がいいよ! というつもりは毛頭ない。ただ私はすっかり、土鍋が好きだ。

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