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読みたい気持ち。9月の読了本まとめ7冊

9月は読みたい、読みたい、読めない、のまま過ぎてしまった。

初っぱなに体調を崩してしまい、それからずっとエンジンがかからないまま。ずっとどこかで「ああ読みたいなあ」とは思っているんだけど、目の前にあるのは仕事だったり、家の雑用だったり。

まあ、そんなときもある!

「小説道場」中島梓

小説っていいねえ。ほんっとに、小説っていいね、最高だね。うまい奴は最高だし、ヘタなのはかあいいし、珍景なのは楽しいし、どんなのでも、ホント私は小説が大好き。愛してる。

出版社関係の公式noteで紹介されていて気になった中島梓(栗本薫)氏の小説指南本。男性同士の恋愛を扱う雑誌で連載されたもので、投稿作品をビシバシと指導。もはやこき下ろしじゃん…というくらい愛のムチが相ッ当の激しさ、なのに面白く読んじゃって自分の性格の悪さに気づいちゃったよ。

面白いだけでなく、書きたいなら肝に銘じておきたい言葉がたくさんあって、そのなかでも「思いつきや出来心で書いたものを披露するな」というのはドキッとした。

伝えたいことがないなら小説なんて書くな! 一人でも多くの人に、自分のイメージを伝えたい、と思わないなら、書いたものを人になんか見せるな!

人に公開するという時点で、その文章には読者への意識があるか、ひとりよがりになっていないか、よく考えなければ。

「書きたい人のためのミステリ入門」新井久幸

新人賞の下読みを20年近くやってきたベテラン編集者が、ミステリのお約束を初心者向けに解説した1冊。

そもそもミステリとは? からはじまり、謎の分類、伏線についてなど、とくに前半部分の講義はおもしろかったな。ネタバレなしに色んな名作ミステリが取り上げられていて、10冊くらい読みたい本リストが増えた!

「ガラスの街」ポール・オースター

また他の作品も読んでみたい作家に出会ってしまった!

図書館で書棚を何となしに眺めながら歩いていて、ふと目にとまったタイトル。夜のビル群の写真が美しい表紙。訳者が柴田元幸、というのが決め手になって読んでみたら、導入、最初の一文から心をぐわっと掴まれた。

そもそものはじまりは間違い電話だった。

間違い電話をきっかけに、探偵のふりをしはじめる作家の主人公。依頼人から聞かされる、不思議で現実離れした幼少時代のはなし。理解できない行動をとる調査対象者。ミステリではないのだけど、幻想版「そして誰もいなくなった」のような、しずかに孤独な余韻を残して消えていく作品。

読み終わってしばらく経った今でも、あの日常から遠ざかっていく浮遊感が忘れられない。

「くじ」シャーリイ・ジャクスン

SNSに投稿されていた帯つきの書影をみて、「なんか知らんけど読んでみよう」と思った1冊。帯の「黒い感情が動き出す」というフレーズと、短編集ということがその時のわたしにハマったんだと思う。

表題の「くじ」は、当時雑誌に掲載されるやすさまじい反響があった作品。そのほとんどが批判的なものであるにもかかわらず、「このくじは実際にどこかで見られるのだろうか?」という質問がいちばん多かったとか。

毎年恒例、村人全員参加のくじ。村の広場でほのぼのと行事は進んでいき、今年の1人が選ばれる。さて、当たったひとは?

全体的に、詩を読んでいるような心地よい文章だった。それも悪魔をテーマにしたような、暗くて、ときに甘美な。解説をよんでさらに興味を持ったのだけど、一見関連のなさそうな作品群に共通の何かが隠れていて、研究したくなる1冊。

「鉄鼠の檻」京極夏彦

“鈍器本”シリーズ第4弾。今回は文庫1,300P超え(ひぇー!)。

規格外のボリュームに最初は怯むんだけど、なんでしょうね、この中毒性…。読み出したら止まらない。読み終わったあとが、いちばん次をはやく読みたいってなる。

謎めいた寺で、僧が次々と殺され、奇妙な状態で発見される。遺体の様子がとにかく不気味で、決着のつけどころなんか、怪談を読んでいるかのような怖さが滲む。あいかわらずの濃い面子もすき。

「麦の海に沈む果実」恩田陸

数年ぶりに再読。北海道の湿原にある古くて美しい学園を舞台にした、不穏と不思議の物語。音楽のように頭にすっと流れてくる文章に、宗教画から抜け出してきたような愛らしくも残酷な少年少女たち。

中高一貫の全寮制のその学園は、莫大な学費がかかる。子どもたちは最高の教育を受けるためか、あるいはやっかい払いのために入れられていて、現代社会から隔離された生活を送っている。ちょっと羨ましいような、檻のなかのような生活には、不穏な噂もつきもので。

ひとことで、こういう話というのを説明できない内容で、空気感がすきとしか言えないけど、実在しないというのがむしろ驚きなくらい学園での生活が懐かしく思えてくる。不思議。

「かくして彼女は宴で語る 明治耽美派推理帖」宮内悠介

明治時代に実在した文芸家や画家たちが登場人物になっていて、料理店での集会で誰かが持ちかけた謎をみんなで推理しあう連作短編集。

謎は人の死に関わるものから、日常的なものまで。明治の時代背景というか、現代にはないしみじみとした空気感がすき。登場する芸術家たちのバックボーンをきちんと理解できていたら、もっとおもしろかったんだろうなあ。不勉強が身に沁みた(知らなくてもおもしろくよめるけどね)

2022年9月のマイベスト3冊(順不同)

  • ガラスの街

  • 小説道場

  • 麦の海に沈む果実

正直、「くじ」もいれてマイベスト4冊にしたいところ。10月は今月読めなかったハイスミスやカーリイ、クリスティから読むぞ~!


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