私の肉じゃがはイマイチだった。けど父が作ったじゃがいもは最高なんだって話をしたい
父から、実家の庭で育てたじゃがいもが届いた。店に並んでいるものより表面がツルッとしていて、明るいベージュ色をしている。
私は「よし、これでおいしい肉じゃがを作ろう(そしてnoteに公開しよう)」と張り切った。タイトルは何がいいかな、父と私の肉じゃがとか。なんだか、ちょっと感動的な話になりそうだ。
父が作ったじゃがいもなのだから、きっとおいしいに決まっている、というのは贔屓目で。娘の私が食べるんだから、そりゃ店で買うやつよりいいって言いたい。【親の愛を感じておいしさ倍増フィルター】みたいなの、素直にかけたっていいじゃないですか。
そういえば、これもフィルター効果かな。一緒に住んでいた時はなんとも思わなかったのに、たまの帰省で食べる母の味噌汁が、めちゃくちゃおいしいと感じるようになった。
朝、市販のだしパックと田舎みそでちゃちゃっと作る、具材も豆腐と野菜が少しのシンプルなものなのに、口の中ですぅっと広がって浸透していくようなうま味がある。一口すするたびに深いため息をつきたくなるくらい、沁みるんだよなあ。
自分でも作りたくなって、母の使っている田舎みそを送ってもらったことがあったのだけど、やっぱり私には再現できなかった。「なんでこんなにおいしいの?」って聞いたら「愛情よ」って返された。でたでた。けど今のところ、それ以外は考えられない。
そして、父と私の肉じゃが計画。結果をいうと、ガッカリだった。
味が染みこんでいない割に、なんだか濃い気がする。しょうゆが多かったのか…? でもしょっぱいという程ではない。みりんが少なかったのかもしれない。とにかく、上品でなつかしい味の肉じゃがを作るはずが、凡なものが出来てしまった。予定では、感動級においしくなるはずだったんだけど。
原因は分かってる。思い立ったらすぐやらないと気が済まない質で、「わざわざ今日作る!?」という日に片手間でバタバタ作ったから。そりゃそうなるよね。愛情パワーヲ過信シマシタ。
じゃがいもが届く数日前、母からLINEで動画が送られてきていた。
父が庭の菜園にしゃがみ込み、私に送るであろうじゃがいもを掘り起こしている。父がちらっとこっちを見て「動画?」と聞き、母の「うん」って声がする。
「とったぞー!」父が照れくさそうに叫んで笑った。画面が揺れて、母が笑ったのも分かる。
まあ、そんな話をしてみたところで、結局肉じゃがはイマイチだったのだけど。後日、残ったじゃがいもで彼氏が作ったマッシュポテトとチーズを混ぜて焼いたようなフリッコってイタリア料理はびっくりするほどおいしかった。チーズでじゃがいもの甘さが引き立っていて、ワインに合うんだ。
それから人生初、イカの塩辛をのっけたじゃがバターもやってみた。いや、この組み合わせ考えた人、天才か。
たくさん送られてきたはずの父のじゃがいもは、1週間もしないうちにゼロになった。それを言ったら、父は「うまかっただろ!」って笑うかな、「もう食べたのか」って呆れるかな。
仕方ないよ。スーパーに並んだ野菜より、送られてきたじゃがいものほうが、きっとおいしいんだもん。
次に収穫が近い野菜って何だろう。
お父さん。知ってると思うけど私、どんな野菜でも食べられるからね。
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