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翻訳とローカライゼーションを混同してはいけない理由

こんにちは。職業「戸倉彩」です。
翻訳ローカライゼーションは、たびたび同じ意味として使われることがありますが、とくにエンジニアの現場では区別して理解しておく必要があります。今回は、意外と混合されがちな2つの言葉と内容の違いについて自分なりに情報を整理してみます。

翻訳とは

皆さんお馴染みのWikiサイトでは「翻訳」について下記のように説明しています。

翻訳(ほんやく)とは、Aの形で記録・表現されているものから、その意味するところに対応するBの形に翻案することである。一般に自然言語のそれを指し、起点言語 (source language、原言語) による文章を、別の目標言語 (target language、目的言語) による文章に変換する。

ローカライゼーションとは

それに対して「ローカライゼーション」はどうでしょう。

情報技術においては、コンピュータソフトウェアを現地語環境に適合させること。

勘の良い方はもうお気づきですね。翻訳ローカライゼーションは作業的に似ている部分もありますが、厳密には異なります。この後はいくつかの例を列挙しながら、もう少し詳しく説明していきます。

ドキュメントの翻訳

テキスト原文を別の言語に変換することを意味します。最近では自動翻訳を活用して、タイムリーに技術ドキュメントを公開するパターンも増えています。しかしながら、自動翻訳バグを回避し、自然な訳文になるように徹底したい場合には、ローカライゼーションを行う必要があります。

ドキュメントのローカライゼーション

ローカライゼーションは、日本の文化、日本のエンジニアの文化、日本の技術の文化など文化的背景に合わせるかたちで単純に言語を置き換えた翻訳ではなく、必要に応じて文面を書き換えたり、画像や付録を追加する必要があります。
例えば、海外の映画タイトルや字幕が日本語版ではオリジナルと異なっているケースに似ています。その国の人々に理解しやすいドキュメントを用意するためには、翻訳だけでは理解しにくい部分を意識しつつローカライゼーションの作業を行う必要があります。品質の良いローカライズされたドキュメントがユーザーの手の届くところにある状態は、ユーザーからの問い合わせを軽減させます。

ソフトウェアのローカライゼーション

昔から日本は、しっかりとローカライズされていないソフトウェアに対しては厳しい目を向けられる印象があります。またシングルバイトからダブルバイト対応する必要があり、コストや工数に影響する部分も大きいことで知られています。

■ GUIやヘルプ機能
IT企業が自社内でソフトウェアのローカライゼーションを行う場合、専門のチーム体制を組み、言語品質要件に合ったプロセスやツール等を採用して効率よく行なっていることが多いと思います。自動翻訳ではカバーしきれない表示の見栄えや分かりやすさがとことん求められるため、ベータ版を公開してユーザーからのフィードッバックを収集する方法を取っているケースも多々見かけます。

■ 暗号技術など
セキュリティエンジニア時代にアメリカで開発している暗号化通信を実装した某ソフトウェアを担当していたのですが、新機能で日本では使われていない暗号技術がオプションに追加され、日本語版でどう対応すべきか法務部と相談しながら仕事をしたことがありました。現在、かなり規制緩和されているようですが、国ごとに暗号技術の輸入や輸出規制が行われているため注意が必要です。

ハードウェアのローカライゼーション

ハードウェアの場合は、各国や地域の基準に従って利用可能なハードウェアを用意する必要があります。身近な物としてスマホ等の通信機器に加えてIoT関連のデバイスなどが挙げられます。

■ ハードウェア
日本の場合、一般に流通させるハードウェアについては、総務省が管轄する技適 (正式には「技術基準適合証明」もしくは「工事設計認証」) を取得する必要があります。かなり昔に申請業務を行なった経験がありますが、技適を取得するためには試験で各項目に合格する必要があり、書類の準備に加えて検査用のデバイスの用意、それに伴う予算確保などに難しさを感じました。

■ 表記規則
グローバルで統一されている識別マークなどもありますが、必要に応じて対策を講じる必要があります。

最後に

翻訳はローカライゼーションの一部です。そして、プロダクトやサービスにおいては「適切なローカライゼーション戦略」を展開することが重要な要素になっています。
もし、ローカライズエンジニアの方々と会う機会がありましたら、話を聞いてみることをお勧めします。社内の場合にはリリース前のプロダクトの話を聞けたり、知られざるローカライゼーションの現場の話を知れることで、プロダクトについて新しい発見があるかもしれません。

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