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あれから

先日、初めてのカウンセリングを受けた。
正確には初めて、ではない。区の保健所やそのずっと前にもカウンセリングというものは受けたことがあったけれど、今回こうなってからは初めて。
薬が効き始めていたのか、カウンセリングの日は割と絶好調の日だった。
なんていい日なんだ!小峠さんが絶対に言わなそうなそんなセリフが出るくらい、私の気持ちは割と落ち着いていた。

死にたい、ではなく死のう。
そう思って首にかける紐を用意し、職場に行けなくなってからひと月が経った。上司は在宅でもデザイン仕事やほかの仕事をしていることを認めてくれて、休職ではなく在宅勤務という形で給与を保証してくれている。
きっとメンタルヘルス的にはNGなのかもしれない。でも、今の私には与えられたテーマと締め切りに合わせて何か作っている方が気が紛れるから助かっている。

最初のひと月は夫曰く「表情がごっそり抜けた」顔をしていたそうだ。
私としては2歳のイヤイヤ期娘が時折面白い事を言うし、息子も思ってもみなかったことをして笑わせてくるので笑っていたと思っていた。でも、夫からしたらフッと鼻で笑うのと変わらない程度だったそうだ。
これで子どもがいなかった、きっと朝から晩まで布団の中にいて、ひたすら寝るのとマンガでも読むのとを繰り返していたと思う。でも子ども(特に下の娘)は時間きっちりに起きてきて、最近では「みんなー!起きてー!」てお前は歌のおねえさんか?というような声掛けをしてくるし、おしっこだオムツだご飯だ着替えだ、まるで布団の中に居させてくれない。
それでも夫が休みの日や母が来てくれた日は9時くらいまでうつらうつらしたり、昼寝したりと寝ることも多かったから体は本当に疲れ切っていたんだと思う。

6時には起きて、体重計に乗って、着替えて歯を磨いてから漢方薬を飲む。朝食を食べ…ない日もある。でもここ最近はTKGを流し込むこともある。子どもたちの食事は夫が担当してくれている。娘の連絡帳も書けるところは書いてくれている。
7時にはごちそうさまをしてEテレをつける。豆いすに座った娘の髪の毛を色々とアレンジするのが最近楽しい。それでも帰ってくるころには生活に疲れたおばさんみたいになってしまうのだけれど。息子は最後の荷物点検。
7時半に娘は出勤する夫が保育園に連れていってくれる。7時50分のアレクサのタイマーで息子も登校していく。
8時15分が始業時間なので、それまでに床が汚れていたら掃除機をかけたり、散らばった玩具を片付けたり、少しだけ拭き掃除したりする。

圧倒的時間の余裕。
今までの私はこの7時から7時50分の間に、連絡帳を書いて娘の髪を結って、自分の化粧をして、息子の忘れ物点検をして、娘のマグをゆすいで伏せて大急ぎで家を出ていた。
どこの家のワーキングマザーも似たようなものだろう。でもね、7時までに食べ終わらない子どもや「ねぇお母さん…」から始まる息子のアレがないコレがない忘れてきたの地獄の報告。娘からの排便予告でトイレへGO。でも化粧はしなきゃ、ああもうどうしようなんで今そんなこというのなんでなんでなんでなんでなんで!!!
で、朝7時台、ご近所中に響き渡るヤクザ声で怒鳴り散らしてドン凹みして死にたくなりながら出勤していたわけです。
そして授業参観で隣家の孫(同居はしていない。近距離に住んでる。つまりお祖母ちゃんが娘か孫に話しているのを聞いたってことよね)から「息子君っていつも朝から怒鳴られてるんだよね」って言われた時の私の気持ち。家に帰ってから大泣きましたよ、えぇ。

こんな朝から解放されて、最近は子どもたちを穏やかに送り出すことができている。夫が保育園へ送りに行ってくれるというのも大きい。
いや家にいるんだから行けばいいじゃん。そう思うこともあるけれど、上に書いた怒涛の日々から今だけでも解放されたくて甘えている。あと、どうしても人に会うので刺激を受けたくないというのもある。

休み始めて少し経った頃。仕事のTeamsは見れるようにしている。そうすると嫌でも色々と目に入ってくる。
休んでいることを知らない人から仕事の依頼。心配している上司のチャットすら、全部裏読みして「これって迷惑だから辞めろって言ってるのかな…」と思ってはパニックを起こしてソファで2時間泣いていたりしていた。
死ねばいいんでしょ!
そう叫んでワンワン泣いて疲れて寝て、気づいたら外はもう日が傾き始めている。14時に洗濯物を取り込むか否か、そんなことで悩んでオロオロしていた。家事の判断もなかなかできなくなっていた。
食事も、なんか作ってみるけど、砂糖を出したりしまったりを繰り返したり、なんか手順があべこべで頭が働かない。家族の顔を見るに、きっとおいしくなかったと思う。私は食べても味がよくわからなくなっていたし。

一度職場に行った。
下腹部痛が治らなくて、消化器内科でも異常なしだったので娘を産んだ病院に行ったのだ。婦人科も問題なし、精神的なものからの痛みかなと。
そして帰りに立ち寄ってみた。
コソコソと気づかれないように裏のほうから入って部屋に入る。一人部屋みたいな環境で、ちょうど誰もいなかった。
でも、まだまだ早かった。
内線が鳴っても出ていいものかわからない。
机の上のスケジュール帳が仕事しろよと叫んでるみたいだった。
グループウェアを開いて、新しく人を採用することを知って私のクビの準備だと勝手に思った私はダーダー泣いて夫にLINEしていた。
そのあと上司が来てくれて少し話をしたら勘違いだったのだけれど。
でも、その後3日くらい引きずったので、やっぱりまだ行くもんじゃなかったと後悔している。

よく死にたくなっていた夕方。
洗濯物を取り込んでいたら帰宅してきた宿題をやってこない息子にブチ切れ、宿題を見なきゃいけないのに保育園のお迎えまであと10分。風呂を沸かす準備をしてボタンを押したら保育園までダッシュ。靴下はかない靴はかない。落ち葉持つの猫じゃらしとるの手をつながないの。イヤイヤ期の小怪獣を連れて家に戻れば、適当に宿題をやって字が汚いとやり直しを命じて夕飯を作る。野菜と肉、あるいは魚。昨日炊いたごはんは食べさせるくせに、品数は用意しないと駄目だと思っていて、だしパックで出汁とった味噌汁も用意して風呂へ。
そこにわずかでもイレギュラーが発生したら(宿題やってこない時点ですでにー1点)もう私の頭はパニックなわけです。ちょっとのぼせて吐いてしまったり、ふざけて転んでぶつけたって泣いたり。息子が忘れものに気が付いたり。そうなれば子どもたちは私のタスクを邪魔する邪魔者。私も死ぬけどお前らも死ねばいい。それくらい強い言葉で罵って泣かせて、地獄の時間。

夫に言われて気が付いたのだけれど、そしてカウンセリングでも言われたのだけれど。
私は家のことも全部仕事にしていたんだそうだ。
脳内のスケジュール帳、チェックボックスの後ろに「洗濯取り込み」「食事作り」「宿題チェック」「風呂」みたいな。
家族の健康や衛生のためにしていることが、逆に仕事になってしまっていたから、そのタスクが遂行できない=私は仕事ができない=ダメ人間死ね になっていたんだという。
だから本来吐いている子どもを見れば「病気?頭打った?病院?救急車?」と心配するはずが、心配の前に仕事の遂行を邪魔されたとなってしまっていた。異常ですよね。でもそうなんです、今でも若干。
つまり、私の頭の中は、下手すると睡眠中まで(なぜなら夢に仕事が出てくることが多かったから)24時間仕事モードでスイッチ入りっぱなし。コロナ禍でオフにすること(飲みに行ったりコンサート行ったり)もなかなかできず、家という職場と職場の2つ掛け持ち状態でずっと仕事してるんですって。
カウンセラーさんには「それって体も心も悲鳴上げて当たり前の状況なのよ」て言われて、やっと私は今まで自分に無理を強いてきたんだなと認めることができた。

じゃあ自宅にいる今、オフにできているかというと、なかなか難しい。
ずっとオンだったもんで、オフってなによ?てなっている。
それでも先に書いたように眠ったりマンガ読んだりしているうちに、少しずつやりたいことが出てきて、趣味だった編み物や絵を描くことに手を出し始めた。こうして文字を垂れ流すのも私の趣味活動の一つであるわけだし。
音楽も、TikTokを見るようになって水曜日のカンパネラとか、HoneyWorksとか聞くようになってBGMで流しながら仕事していたりする。
ちょっとずつ、ちょっとずつ、前の私に戻ってきてる。

そう、油断して調子に乗っていたら、やっぱり息子の忘れ物でパニックを起こして過呼吸みたいになったので、まだまだみたいです。
とりあえず仕事モードオフにする。
それが今の私がやらなきゃいけないことみたいです。
お給料もらってるから仕事もしなきゃいけないけどね。

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