あやしき下臈(げろう)

興奮する真の知的遊戯(個人の感想)、暗号解読について書きます。 ゴリラのドラミングは拳…

あやしき下臈(げろう)

興奮する真の知的遊戯(個人の感想)、暗号解読について書きます。 ゴリラのドラミングは拳ではなく平手でするのが正しいそうです。さしみ

マガジン

  • 雑記

    他のマガジンに含まれない内容をまとめる。いわゆる「その他」枠。

  • 暗号解読に挑戦

    興奮する真の知的遊戯(個人の感想)暗号解読に挑戦してもらうための問題と解答を集めるところ。

  • 暗号紹介

    暗号を紹介するところ。特に日本語での資料があまり多くないものを中心に紹介する予定。

  • 暗号人列伝

    暗号の解読や作成に携わった人々の紹介をするところ。

  • 暗号解読の手段

    興奮する真の知的遊戯(個人の感想)である暗号解読を行うにあたり、有用な手段を文に起こしてまとめておくところ。

記事一覧

雑記:エニグマ暗号機シミュレーターを作ってみた

長らく無沙汰であったが、このたび久しぶりに思い立って記事を書くことにした。内容はタイトルの通りエニグマ暗号機シミュレーターを自作したことである。 世の中にはしっ…

暗号解読に挑戦:ミックス問題1・解答編

問題はこちら前回の記事では、様々な種類の暗号により暗号化した文章を5つ提示した。今回はその元のメッセージと、暗号化に使用した暗号表および転置鍵を示す。 少し間を…

暗号解読に挑戦:ミックス問題1

ここでは、何らかの暗号で暗号化された文章を5つ提示する。その平文は別の記事に掲載する。 出題日(2022年10月5日)時点で紹介してきた暗号のどれかから出題する。ただし…

暗号紹介:グリル暗号 暗号の仕組みとその特徴

用語についてグリル(Grille)とは格子窓を意味する語である。ここではところどころに穴が開いており、それを通して文字を読んだり書き込んだりするようなシートをグリルとい…

暗号紹介:Four-square暗号(2) 解読実例

表記・用語についてプレーンテキスト(暗号化前のメッセージ)の文字は小文字で、暗号文の文字は大文字で表すことにする。 Four-square暗号とは前回を参照。 プレーンテ…

暗号紹介:Four-square暗号(1) 暗号の仕組みとその特徴

Four-square暗号とはフランス人の暗号作成者Félix-Marie Delastelleにより発明された。Delastelleは他にも以前紹介したBifid暗号なども発明した、アマチュアの暗号作成者…

暗号人列伝:アル=キンディー

名前についてアル=キンディーに限らずイスラーム圏の人名は、何を以てフルネームとするかは難しい。見る限り最も長い名前表記はサイモン・シンの『暗号解読』に見える「ア…

暗号紹介:Bifid暗号 暗号の仕組みとその特徴

用語についてbifidとは「二つの部分に裂けた」「二分の」「二裂の」を意味する語。発音は「バイフィド」。強いて訳せば「二分暗号」「二裂暗号」となるだろうか。その用例…

雑記:隠しページ探し

今回は暗号解読とは別の、だが筆者の原点でもある、とあるゲームについてつらつらと語りたいと思う。 昔流行した「隠しページ探し」というものをご存じだろうか。とは言っ…

暗号解読に挑戦:ADFGVX暗号・解答編

問題はこちら前回の記事では、ADFGVX暗号により暗号化した文章を3つ提示した。今回はその元のメッセージと、暗号化に使用した暗号表および転置鍵を示す。 少し間を空けて…

暗号解読に挑戦:ADFGVX暗号

ここでは、ADFGVX暗号により暗号化された文章を3つ提示する。その平文は別の記事に掲載する。 各問題はそれぞれで完結している。問題のキーワードがその問題の外に隠されて…

暗号紹介:レールフェンス暗号・Redefence暗号 暗号の仕組みとその特徴

用語についてRedefence cipherについて、時折Redfence cipherという呼称が用いられていることがある。しかしアメリカ暗号協会(American Cryptogram Association)のサイトを…

暗号解読の手段:エンコード・デコード

エンコード・デコードとはエンコード(符号化)とはデータを一定の法則で符号に変換することであり、デコードとはそれを元のデータに戻すことである。符号の種類は、古くは…

暗号紹介:ベーコンの暗号 暗号の仕組みとその特徴

用語についてベーコンの暗号は英語ではBacon's cipherというが、厳密にはサイファー(個々の文字を別の文字に置き換える)とは別物である。これは一見して「これは暗号だ」…

暗号紹介:ADFGVX暗号(2) 解読実例

表記・用語についてプレーンテキスト(暗号化前のメッセージ)の文字は小文字で、暗号文の文字は大文字で表すことにする。 ADFGVX暗号とは前回の記事を参照。 解読実例AD…

暗号紹介:ADFGVX暗号(1) 暗号の仕組みと解読方法

表記についてプレーンテキスト(暗号化前のメッセージ)の文字は小文字で、暗号文の文字は大文字で表すことにする。 ADFGVX暗号とはADFGX暗号は、ドイツ陸軍大佐Flitz Neb…

雑記:エニグマ暗号機シミュレーターを作ってみた

雑記:エニグマ暗号機シミュレーターを作ってみた

長らく無沙汰であったが、このたび久しぶりに思い立って記事を書くことにした。内容はタイトルの通りエニグマ暗号機シミュレーターを自作したことである。

世の中にはしっかりしたシミュレーターが既に多くあるというのに、わざわざ正確性が不安な自作シミュレーターを作ったのには理由がある。既存のシミュレーターは実在したエニグマのモデル(Enigma I、Enigma M4など)の再現を行っている。しかし、自分で

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暗号解読に挑戦:ミックス問題1・解答編

暗号解読に挑戦:ミックス問題1・解答編

問題はこちら前回の記事では、様々な種類の暗号により暗号化した文章を5つ提示した。今回はその元のメッセージと、暗号化に使用した暗号表および転置鍵を示す。

少し間を空けてから解答を掲載する。

問題1まず頻度分析を試みて、出現頻度の高い順に文字を並べると、O, S, E, I, N, R, … , A, B, C, G, K, Lの順になる。この傾向は通常の英文と一致する……とはいささか断言しにくい

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暗号解読に挑戦:ミックス問題1

暗号解読に挑戦:ミックス問題1

ここでは、何らかの暗号で暗号化された文章を5つ提示する。その平文は別の記事に掲載する。
出題日(2022年10月5日)時点で紹介してきた暗号のどれかから出題する。ただし既に出題したプレイフェア暗号とADFGVX暗号は除く。
対象となる暗号は次の通りである。
「Chaocipher」「ベーコンの暗号」「レールフェンス暗号」「Redefence暗号」「Bifid暗号」「Four-square暗号」「グ

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暗号紹介:グリル暗号 暗号の仕組みとその特徴

暗号紹介:グリル暗号 暗号の仕組みとその特徴

用語についてグリル(Grille)とは格子窓を意味する語である。ここではところどころに穴が開いており、それを通して文字を読んだり書き込んだりするようなシートをグリルという。

グリル暗号とはグリルを用いた暗号はいくつかの種類が存在する。
・カルダン・グリル
・シングル・レター・グリル
・トレリス暗号
・回転グリル暗号

以下のサイトも参考のこと。

ウィキペディア記事「カルダングリル」

ウィキペ

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暗号紹介:Four-square暗号(2) 解読実例

暗号紹介:Four-square暗号(2) 解読実例

表記・用語についてプレーンテキスト(暗号化前のメッセージ)の文字は小文字で、暗号文の文字は大文字で表すことにする。

Four-square暗号とは前回を参照。

プレーンテキストを推測するここでは、暗号文が与えられた状態で、プレーンテキストを推測しながら暗号表を構築し解読する方法を示す。
アメリカ陸軍作成のマニュアルに掲載されている例題を用いて、その解読作業を追っていく。マニュアルの7-0ページ

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暗号紹介:Four-square暗号(1) 暗号の仕組みとその特徴

暗号紹介:Four-square暗号(1) 暗号の仕組みとその特徴

Four-square暗号とはフランス人の暗号作成者Félix-Marie Delastelleにより発明された。Delastelleは他にも以前紹介したBifid暗号なども発明した、アマチュアの暗号作成者である。
暗号表を用いて2文字組を別の2文字組に変換する形式をとっていることから、似た形式を持つプレイフェア暗号と対比されることがある。
プレイフェア暗号と異なり、政治・外交・軍事的に実用された

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暗号人列伝:アル=キンディー

暗号人列伝:アル=キンディー

名前についてアル=キンディーに限らずイスラーム圏の人名は、何を以てフルネームとするかは難しい。見る限り最も長い名前表記はサイモン・シンの『暗号解読』に見える「アブー・ユースフ・ヤアクーブ・イブン・イスハーク・イブン・アッサバーフ・イブン・ウムラーン・イブン・イスマイール・アル=キンディー」である。他の文献ではイブン・○○が適宜略されるなどしている。ここでは「アル=キンディー」で通す。

概要アル=

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暗号紹介:Bifid暗号 暗号の仕組みとその特徴

暗号紹介:Bifid暗号 暗号の仕組みとその特徴

用語についてbifidとは「二つの部分に裂けた」「二分の」「二裂の」を意味する語。発音は「バイフィド」。強いて訳せば「二分暗号」「二裂暗号」となるだろうか。その用例はないので、ここでは原語のままで通す。

Bifid暗号とは1901年頃、フランス人の暗号作成者Félix-Marie Delastelle(1840-1902)により発明された。DelastelleはTrifid暗号(Bifid暗号の

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雑記:隠しページ探し

雑記:隠しページ探し

今回は暗号解読とは別の、だが筆者の原点でもある、とあるゲームについてつらつらと語りたいと思う。

昔流行した「隠しページ探し」というものをご存じだろうか。とは言ってもここで語りたいのは、厳密な意味での隠しページ(その存在を公開されておらず、通常の方法では行きつくことのできないページ)ではなく、ゲームとしての隠しページ探しである。つまりあらかじめ何らかのページが隠されていること自体は公開されており、

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暗号解読に挑戦:ADFGVX暗号・解答編

暗号解読に挑戦:ADFGVX暗号・解答編

問題はこちら前回の記事では、ADFGVX暗号により暗号化した文章を3つ提示した。今回はその元のメッセージと、暗号化に使用した暗号表および転置鍵を示す。

少し間を空けてから解答を掲載する。

問題1の答え暗号文に付随して、CARL von CLAUSEWITZという人名がある。強調されているCARLおよびCLAUSEWITZが鍵である。転置鍵としてCARLを用い、換字表としてCLAUSEWITZを

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暗号解読に挑戦:ADFGVX暗号

暗号解読に挑戦:ADFGVX暗号

ここでは、ADFGVX暗号により暗号化された文章を3つ提示する。その平文は別の記事に掲載する。
各問題はそれぞれで完結している。問題のキーワードがその問題の外に隠されていることはないし、ある問題を解かないと別の問題も解けないということもない。

ADFGVX暗号についてはこちらを参照。

便利なツールであるdcode.frのADFGVX暗号化・復号ツールも参考のこと。

問題1問題2この問題の転置

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暗号紹介:レールフェンス暗号・Redefence暗号 暗号の仕組みとその特徴

暗号紹介:レールフェンス暗号・Redefence暗号 暗号の仕組みとその特徴

用語についてRedefence cipherについて、時折Redfence cipherという呼称が用いられていることがある。しかしアメリカ暗号協会(American Cryptogram Association)のサイトを見る限りでは「Redefence」の方が正しいようである。ただし暗号名の由来は不明であり、また「redefence」自体の意味も分からない。

レールフェンス暗号とはレールフェ

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暗号解読の手段:エンコード・デコード

暗号解読の手段:エンコード・デコード

エンコード・デコードとはエンコード(符号化)とはデータを一定の法則で符号に変換することであり、デコードとはそれを元のデータに戻すことである。符号の種類は、古くはモールス符号、コンピューター上ではASCII、Base64、uuencodeなど、その例はさまざまである。これらは通信に便利なように作られたものであるが、データの秘匿を目的としているわけではない。つまりこれらの符号によりエンコードされたデー

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暗号紹介:ベーコンの暗号 暗号の仕組みとその特徴

暗号紹介:ベーコンの暗号 暗号の仕組みとその特徴

用語についてベーコンの暗号は英語ではBacon's cipherというが、厳密にはサイファー(個々の文字を別の文字に置き換える)とは別物である。これは一見して「これは暗号だ」と分かる文章ではなく、何気ない文章を装いつつ情報をその中に隠す技術・ステガノグラフィーに属する手法である。このことに注意。

ベーコンの暗号とはベーコンの暗号は、イギリスの哲学者フランシス・ベーコン(1561-1626)が16

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暗号紹介:ADFGVX暗号(2) 解読実例

暗号紹介:ADFGVX暗号(2) 解読実例

表記・用語についてプレーンテキスト(暗号化前のメッセージ)の文字は小文字で、暗号文の文字は大文字で表すことにする。

ADFGVX暗号とは前回の記事を参照。

解読実例ADFGVX暗号には、特別な場合の解読法と、一般解読法がある。今回は一般解読法を示す。アメリカ国家安全保障局所蔵の資料に掲載されている例を用いて、その解読作業を追っていく。
実際、かなり複雑である。筆者自身が説明不足を感じ、自分なり

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暗号紹介:ADFGVX暗号(1) 暗号の仕組みと解読方法

暗号紹介:ADFGVX暗号(1) 暗号の仕組みと解読方法

表記についてプレーンテキスト(暗号化前のメッセージ)の文字は小文字で、暗号文の文字は大文字で表すことにする。

ADFGVX暗号とはADFGX暗号は、ドイツ陸軍大佐Flitz Nebelにより考案された。1918年3月から用いられ、数か月後にはその拡張版であるADFGVX暗号が用いられるようになった。名称の由来は暗号文にA, D, F, G, V, Xの6種類の文字を用いたことに由来し、その6文字

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