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人の話を聞かない(らしい)新入社員の行動を変えてみる

「男性用の立って使うトイレがあったわ。男女共用かな?」
そう言いながら不思議そうな表情でトイレから出てくる妻。
いやいやいや! そこは男子トイレですからー!!??(;゚Д゚)
驚きすぎたら声が出ないものですね。初瀬野アヤセです。こんにちは。

さて、今日は人の話を聞かない(らしい)新入社員の行動をどうやったら変えられるか?という課題に対する解決事例を取り上げます。

新入社員が何を考えているか分かりません!どうやって指導したら良いか分かりません!
そんな悩みを持ったこと、あるいは耳にしたことはありませんか?
特に新卒採用など、年齢が離れていればいるほど、どう接して良いか分からないという相談を受けることが多いです。

問題行動を置き換えるセオリーについては、
「絶対無理!」が口癖になっている年上部下の行動を変えてみる
でも紹介していますので、宜しければそちらも参考にして下さい。
本稿では新卒採用で入社して頂いたBさんの事例において、特徴的な部分にフォーカスして紹介します。


新卒採用のBさんのペルソナ

・大学院卒、留学経験アリ、語学を活用した仕事を希望している、楽天家。
・自分に自信がない、家族や友人関係から過度の否定的扱いを受けることが多い。
・人の話を聞かない、落ち着きがない、感情制御が苦手、パニックになる場合あり。
・突発的、衝動的な行動が多く、自分が想定していなかったこともやってしまう場合あり。
・注意引き行動が非常に多い。

行動原理
・非常に強い自己顕示欲。それに付随した承認要求。俗に言う強度のかまってちゃん。

他にも細かい内容はありますが、行動原理が極めてはっきりしているタイプでした。
また、ペルソナから自分自身を制御できていない特徴が見て取れましたので、それらを踏まえて対策を考えて行きます。

状況把握

先輩社員からのヒアリング

まず、話を聞いていないのはどんな時なのか、先輩社員の方々にヒアリングしました。
・いつも聞いてないんです!毎回です!全部です!
・毎回メモ取ってるんですけど、いざやる段になると全然違うことをやっているんです!そもそも、自分でとったメモ見てないんです!
・説明しているときに違う事をやり始めて、人の説明を全然聞いてないんです!
・注意すると軽くパニックになるし、具体的な指示もその通りしないし、もうどうして良いか分かりません!

先輩社員の方も混乱していますね。これもありがちではないでしょうか。
このような場合は、実際に指導している所を見てみましょう。
どんな指示を出して、それに対してどんな行動をしているのかを観察します。
今回の事例では次のような事実が確認できました。

指導中の様子を観察して分かったこと

(説明側要因)
・説明する際に基本フロー以外の補足説明が多く入り、全体像や手順が把握しにくい説明になっている。
・どうやるか?という部分にフォーカスしており、作業目的を明確に伝えていない。
・指導後に理解度を確認していない。

(聞き手側要因)
・メモを取っているが、説明された内容(言葉)をメモしており、そもそも何のために何をどんな手順で実施するか?と言う基本的内容に注目できていない。
・説明以外のことに注意が向いてしまい、説明を聞き取れていないタイミングがある。

観察により、双方に改善した方が良い部分が見えてきました。
何事もそうですが、どちらか一方だけに原因になることはありません。
より効果的に課題を解決できるように、双方に働きかけて行きます。

今回のような対人関係に属する事例の場合、感情的な反応が出る可能性が高いので、働きかける際は関係者の感情、特に怒りの感情をコントロールする努力をします。
責められている、一方的に原因を押し付けられている、などの感情を与えないように働きかけます。
では具体的にどんな対応したのか、先輩社員への説明とBさんへの説明を順に見て行きましょう。

当事者への働きかけ

先輩社員の方々への説明

①まず相手の特徴を特定の意思を込めず、淡々と説明します。
最初に特徴を説明するのは、これまでのやり取りで積みあがった先入観を一旦取り除き、改めて見つめ直してもらうためです。
この際、必ず良い面をほめる所から入ります。そうすることで聞き手も相手の特徴を受け入れやすくなります。

今回の場合は、人の話を聞いていないと先輩社員が感じている行動が、実は本人の意思に関係なくそうなってしまう、と言う事実を理解してもらえるように説明し、自分がどうしようもないこと(=相手の特徴)に対して必要以上に注力せず、相手の特徴を修正しようとしないように伝えました。

➁次に相手の変えて欲しい行動を特定してもらい、こちらがどうすれば相手の行動が変わるかアイデアを求めます。
良いアイデアが出ればそれを採用し、実施してもらいます。
出なければ一緒に考えながら具体的に何をするか決めましょう。

今回の事例では、説明以外のことに注意が向いてしまう事を変えて欲しい行動として捉え、説明に注意を集めるために先輩社員が何をするか?を話し合い、次の2点を取り入れてもらうことにしました。

・身振り手振りなどを使い、一旦注意を自分に引き付けてから説明すること
・Bさんの意識が自分に向いているかを確認するために、Bさんに注目しながら説明すること

➂最後に説明する側として改善できる所がないか、振り返ってもらいます。
必ず本人に振り返りをしてもらってから、観察して気付いたことをフィードバックします。

今回の事例では、指導時に次の2点を取り入れてもらうことにしました。

・最初に目的を明確に伝えること
・全体のフローを説明してから、フローのどの部分を説明しているかを伝えた上で詳細説明に入ること

以上が先輩社員への説明の流れですが、①の特徴を説明するという内容が想像しにくいと思いますので、Bさんの特徴と言える行動原理(=非常に強い自己顕示欲)について、実際に先輩社員に説明した内容で補足します。

注意引き行動の本質

自己顕示欲が非常に強い人は、幼少期より注目を集めるための行動を繰り返すことにより行動が強化されていますので、本人が意識せずとも自然にそのような振る舞いをしてしまいます。
その為、何で?どうして?と質問しても本人も答えられないことがほとんどですし、そもそも本人が行動原理を自覚していることはまずありません。

また、これは誤解している方も多いのですが、注目を集めることが出来れば何でも良く、実は叱られても怒鳴られても構わないのです。叱られたら当然嫌な気持ちになるのですが、本質的な行動原理としては注目された時点で目的達成となります。
それ故に、毎回叱られているのにも関わらず何度も同じことを繰り返してしまうのです。

子育ての事例で説明します!

子育てでも重要な要素になりますので、小さい子供の事例で説明します。
子供が泣いていると、ついつい親が構ってしまいますよね?
【泣く→親が構ってくれる】という経験を繰り返すと、構ってもらうために泣くようになります。
成長するにつれ、【泣く→𠮟られる】に変化すると、親の立場では叱られたら嫌だろうから泣くのをやめるだろうと考えがちですが、そうではありません。
もちろん優しくされた方が嬉しいのですが、構ってくれたことに本質的な喜びを感じるので、どんな対応をされたかは程度の問題でしかありません。

格闘ゲーム風に言えば、構ってもらえたかどうかが当たり判定、態度(優しくされたり叱られたり)がダメージ量を決める攻撃手段というイメージでしょうか。
本人はダメージ量はどうでも良くて、当たればOK!で行動しているということですね。

子供の行動を変えるには?

小さい子供に行動を変えて!って伝えても、簡単に変わりませんよね。
親や周囲にいる人間が行動を変え、それによって子供の行動を変えます。
今回取り上げた構ってほしさに泣く事例ですと、次の2つの行動をセットで実行、継続します。

1つ目は、泣いても反応せずに放置することです。
構ってもらえないので泣き叫んだり子供の行動がエスカレートして行きますが、それでも反応せずに放置します。根気よく続けて行くと、目的が達成されないことに気付き始め、段々と泣くことが減ってきます。
親が根負けして構ってしまうと、「泣けば構ってくれる」から「泣き叫べば構ってくれる」という経験に上書きされ、構ってくれるまで泣き叫ぶように行動が強化されます。
そうならないように我慢強く対応する必要があります。

2つ目は、泣く以外の行動(お絵かきなど)をしているときに大げさに褒めて構うことです。
単純に構うだけではなく、褒めることで劇的に効果が高まります。
親に構ってもらうための行動を、【泣く】から【お絵かき】に置き換えるという事です。

お絵かきなど特定の行動だけに限定すると子供にも分かりやすいので、比較的早く効果が出ます。但し、その行動を好んで行うようになりますので、特定の行動に限定したくない場合は、子供の複数の行動に対して同じような反応を示し、一連の行動のどれをやっても褒めてもらえることを子供が分かりやすく認識できるように行動しましょう。

この2つを同時に実行することで行動原理を満たすための行動を好ましいものにして、問題行動を減らすことが出来ます。

大人の場合でも基本は同じ、但し難易度が圧倒的に違う

子育ての事例で説明しましたが、大人でも基本的にやる事は同じです。
但し、成長に伴い様々な知識を身に着けるので年齢が上がるほど行動を完全に置き換えることが難しくなり、大変な労力が必要になります。

一般的な企業活動においてそこまでする余裕はないと思いますので、まずは先輩社員の方々にBさんの特徴をしっかり理解してもらうことに注力して説明しました。
その上で、Bさんの行動を修正しようとするのではなく、こちらの行動を変えて好ましい行動を引き出すアプローチを取っています。

Bさんへの説明

①まず第三者として私が認識している現状と課題について説明し、客観的な情報を共有します。
いきなり課題から入ると心情的な反発も出やすいので、最初にどんな目的に対して何をするのか、その場合の望ましい対応(本来相手にやってもらいたい事)から説明します。
次に相手が実際にやっていることを説明し、望ましい対応との差(=課題)を相手自身に認識してもらいます。
その際、一般的な良し悪しや感情を刺激するような言葉は使わず、客観的に説明するように努めます。

今回の事例では、次のように認識してもらいました。
望ましい対応:説明に注目すること
課題:説明以外のことに注意が向いてしまっていること

➁次に課題を解決するために何をするか、アイデアを求めます。
良いアイデアが出ればそれを採用し、実施してもらいます。
出なければ一緒に考えながら具体的に何をするか決めましょう。

今回のような事例では「集中できていませんでしたので次からは集中します!」というただの宣言で終わってしまう事が良くありますが、当然ながらこれでは解決できません。
集中するために何をするのか?具体的な行動を決めましょう。

今回の事例では、Bさんに次の行動を実施してもらうことにしました。
・説明の区切り(テーマやプロセス単位)ごとに必ず1つ、質問する。

質問するためには説明を集中して聞く必要がありますので、必然的に課題解決に繋げることが出来ます。

尚、どこが区切りか気付かない可能性やそもそも質問しない可能性もあるので、先輩社員にもこの話を共有し、先輩社員からも区切りごとに質問を求めるように依頼しておきます。

➂最後に聞き手側として改善できる所が無いか、振り返ってもらいます。
必ず本人に振り返りをしてもらってから、観察して気付いたことをフィードバックします。
①の現状と課題を認識してもらう内容と同じと感じるかもしれませんが、①は確実に解決しておきたい課題を1つだけ取り上げ、ここではその他の課題の解決を狙うという位置付けになります。

今回の事例では、Bさん本人から「教えてもらったことをやる際に、手順が分からなくなって頭が真っ白になることがあるから何とかできませんか?」という質問がありましたので、
➁の行動を強化する良い機会と考え、次の2点を実施してもらうことにしました。

・一通り説明が終わった際にBさんが手順を説明し、正しいかどうかを先輩社員に確認してもらうこと。
・実際にやる際には必ずメモした手順書を見ながら実行すること。

Bさんの行動原理である非常に強い自己顕示欲を満たすための行動としてBさんからの質問を設定し、質問されたことに対して先輩社員が答える事で自己顕示欲を満たすという関係性になります。
先輩社員が答える際に適度に褒めるようにすれば、承認欲求も満たすことができます。
これを繰り返すことにより、自己顕示欲を満たすために質問するようになり、自然と行動が変わってきます。

Bさんはどう変わったか?

先輩社員とBさんにそれぞれ特定の行動を実行してもらうことにより、頻発していたトラブルが減り許容範囲内に抑えることが出来ました。トラブルが減れば精神安定性も増しますので、コミュニケーション量も増えて関係性も良くなりました。

今回も特徴的な行動原理とその対応方法にフォーカスして事例を紹介しましたが、誰かの行動を変えたい場合のセオリーは1つです。
最後に振り返っておきましょう。

「行動原理を特定し、それを満たす有益な行動に置き換える」

本日は以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございます。
自分の人生を、自分で生きて行きましょう!

初瀬野アヤセ

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