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絶対に笑わないエンジニアをどうしても笑顔にしたかった私の話。

絶対に笑わない人がいた。

同じプロジェクト、同じチーム。

誰が何を言っても絶対笑わないエンジニアさん。


「エンジニアだからしょうがないよ」

周りの人はこう言った。



私は昔から、
こういう人が気になって仕方ない。

いい人ぶりたいわけでもなんでもない。 

この人の心の鍵を開けてみたい! 

そう思ってしまう癖がある。 



IT業界は、
仕事のコミュニケーションのほとんどがSlackだ。


笑顔どころか何も見えない。 

文字から伝わる今のあの人を
必死に想像する日々。

彼のSlackは、
特に感情が見えない。 

かなりの強敵だった。


彼に対してプライベートなことを話したり
雑談をするチームメイトは1人もいない。 


仕事は別に誰かと仲良しこよしをすることが
目的ではないことなんて百も承知。

そんなことは分かっている。  


それでもやっぱり、
おせっかいな私は

”きっと彼だって笑顔で仕事がしたいはずだ!” 

と、
頼まれてもいないのに勝手にそう思い込んで、
無視をされても盛り上がらなくても
会話することを諦めず毎日雑談をし続けた。



”昨日食べたプリンが
めちゃくちゃ美味しかったんですけど
これ食べたことありますか??” 


”ありません。”



”今日のランチはどこに行くんですか?”


”魚です。” 


笑 


瞬殺!笑


今思うと、ただのうざいやつである。笑 


この人の心の鍵はどこにある!? 

私は冒険に出た勇者のように
ワクワクしながら、
絶対に笑わないこの人の
心の鍵をあの手この手で探し回った。 



そんなことを続けていると、
私は文章だけでも
相手の表情が分かるようになっていた。


今日はちょっと元気なさそうかな。

あれ?今日はなんか機嫌よさそう! 


その辺りからだろうか、 
少し彼に変化が現れ始めた。 


今まで彼が私に使った記号は「。」だけ。


ところが、ある日、奇跡は起きた。


”了解です!” 


!!!!!!!!!!!!!! 
私は二度見した。 
いや、二度見どころではない。 
何度も何度もSlackが映るモニターを見た。 
!!!!!!!!!!!!!! 

なんと彼から
ビックリマーク付きのメッセージが送られてきたのだ! 


・・・・・・・・・。 


私は感動した。 

ビックリマークひとつで人はこんなに喜べるのか。。。笑 


あまりにチョロい自分に 
恥ずかしくなりながら 
私はひたすら嬉しくて仕方なかった。 


その日以降、 
打ち合わせで顔をあわせる度に 
彼の表情はどんどん明るくなっていった。 


誰かの冗談に少しうつむき加減で 
クスっと笑うまでになったのだ。 

もちろん口数は少ない。
自分から何かを話すことは絶対ない。 


でも、彼から溢れ出るオーラが
格段に明るくなったように私には見えた。 


「私、心の鍵、見つけちゃったかも♪」 
私は嬉しそうに心の中で呟いた。 


あっという間に3ヶ月の時が過ぎ、 
プロジェクトは終了の日を迎えた。 


そして、 
その終了と同時に私は組織を 
離れることになった。 


最終日、
お世話になった方々に挨拶をして回る。



しかし、彼の姿ない。 


彼はその日、 
ちょうど有給休暇中で 
出社していなかった。 


電話しようか迷ったが、 
きっとSlackの方が負担が少ないだろう。 


そう思い、 
Slackでお礼のメッセージを送った。 


”プロジェクトがうまくいったことよりも、 
○○さんの笑顔を見れたことが 
なによりも嬉しかったです。 
無理な注文にも 
いつも快く応えてくださり 
本当にありがとうございました! 
一緒に働くことができてよかったです。” 



返信は来ないだろう。 

そう思っていた。 


2分後。  

スマホのロック画面。 




”齋藤さんがいたから楽しく仕事できました。 
楽しかったから笑うことができました。 
ありがとう。” 





号泣。 

こんなに泣いたのは 
大好きなあの人に振られた時 
以来かもしれない。 

そう思った。 


私は、
心の隅から隅まで行き渡るほどの 
温かさに包まれながら 
渋谷のど真ん中で1人泣いた。 


口下手で 
シャイで 
そんな彼が精一杯送ってくれた 
3行のSlack。 


それは私のお守りになった。 

辛い時、泣きたい時、 
アルバムのお気に入りに入っている 
スクリーンショットを眺める。 


今は彼が、私に笑顔をくれる。 



目の前にいるチームメイトを 
笑顔にできない人間に、 
お客様を笑顔にするサービスは作れない。 

いつか自分に誓ったこの言葉。 


ずっと、ずっと、忘れない。



#はたらいて笑顔になれた瞬間



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