「だが、情熱がある」で語られる「たりないふたり」の主人公は山里さん
私は、オードリーの若林さんのファンではあるけど、たりないふたりのファンであるか?と言われたら、断言は出来ない。
なぜなら、「たりないふたり」の企画演出をしている安島さんが好きな二人の物語は、山里さんが主人公のように感じるからだ。
その安島さんが思う「たりないふたり」の物語を書いた「だが、情熱がある」の若林さんは、私の見てきた視点とちょっと違うように思うからだ。
「だが、情熱がある」では安島さんが薬師丸ひろ子さんを演じていたが、安島さんもし本当に女性だったら、たりないふたりは誕生していない。
なぜなら、若林さんは女性が嫌いで嫌いでたまらなかったからだ。
若林さんが女性不信なった原因は「男子校出身だから」だけではない。
事務所に採用してくれた女性のマネージャーさんが厳しい人だったり、
元カノに不味そうに見えると言われて別れたこともあった。
つまり、20代の頃の若林さんと関わる女性は一癖ある人が多く、女運がとことん無い。
そんな若林さんが、人生のいたずらでアイドル的人気を誇ってしまい、キャーキャーアイドル状態。
「自分たちはどうせ一発屋。」「どうせすぐに飽きられて、ショーパブに戻るでしょ。」と一歩ひいた目で見ていた。
そんな中でもなんとかやってこれたのは、
「人気がどん底のときでもファンが7人のいた。だから、今が辛くても7人のファンのために頑張れ」的なことを言ってくれる先輩の存在や、
同士として戦ってくれた山里さんの存在もあった。
だから、もし安島さんが女性だったとしたら、
若林さんはここまで「たりないふたり」に力を入れていなかったように思う。
人気が落ち着いた頃にDちゃんがマネージャーになり、ようやく自分のやりたいことが出来るようになったと思った結果、ミレニアムズの仕事が舞い込んでくる。
しかし、ミレニアムズは失敗してしまう。
「何のために頑張ってきたんだろう」と、心にぽっかりと空いた穴。
しかし、ふと周りを見渡してみると、周りは売れる前と全く違かった。
山里さんを参考に、愚痴を吐くライブをしたら、沢山のファンが見守ってくれる。
「扱いがひどすぎる!!!」と号泣してくれる女友達が目の前にいる。
7人のファンが、気がつくとこんなにも多くの人ファンになっていた。
キューバにも、アイスランドにも行った。
「イタイ」という言葉は、もう怖くない。
だって、応援してくれるファンがいっぱいいるんだもん。
ファンの期待に答えようと覚悟した結果、武道館に繋がり、沢山のファンを惹きつける存在に。
その人気は芸人を超え、人気はミーハー層に届き、もはやアイドル並。お笑いを通じて、異なるエンタメの架け橋となる存在となった。
じゃあ、これらの内容で「だが、情熱はある」のタイトルにするか?と言われると、ちょっと違和感がある。
なぜなら、「情熱を持ち続ける」物語ではなく、「周りの人たちの協力によって、情熱を持ち続けることができた物語」であると、私は思うからだ。
一方、安島さんが好きな"たりないふたり"の物語の主人公は山里さんのように思う節がある。
相方にも見捨てられ、もはや解散状態。
一人ぼっちになった山里の前に、若林さんが現れた。
若林は山里さんを尊敬していたものの、常識がなく不器用で、色々ネジがぶっ飛んでいた。
Creepy Nutsは歌う。
これは、2人を歌っていた歌詞だった。
そんな二人に最大のチャンス・ミレニアムズが始まるものの、うまく行かず、すぐに終了。
絶望の縁。
そんな中でも、若林さんはどんどん前に進み、成長していく。
一方、ミレニアムズから時が止まったままの山里さん。
若林にあって、自分にないもの。
それは相方・しずちゃんだった。
しずちゃんとの仲を戻した結果、信じられないほど、人生の歯車がうまく動き始める。
蒼井優さんとの結婚。
念願の朝の番組MC。
とてもキレイなハッピーエンドじゃないか。
なのに、なのに。なぜ、満足が出来ない?
若林さんは、武道館を達成しても「まだやりたい仕事がある」と、前へ前へ進んでいく。
それが、とてもとても、悔しいのかい?
Creepy Nutsは歌う。
まるで、過去を振り返らずにまっすぐ進む若林さんと、やっぱり自分を変えられない山里さんの対比を歌っているようだった。
「だが、情熱はある」はタイトルのとおり、泥臭く、万人受けよりコアなファンを作り出す、真面目な物語。
笑いよりも事実を優先し、ひたすら情熱をぶっ放す。
きっと安島さんは、「山里さんが主人公のたりないふたり」の物語が好きで、その物語にとって若林さんは「天才キャラのモブキャラ」。
若林さんが主人公の、オードリーの魅力があふれる、キラキラとした物語が好きな私は、安島さんの描く「たりないふたり」の物語とは、ちょっと違うように感じる。
山里さんは若林さんに対してブーブー言ってるけど、主人公・山里が天才・若林さんと出会い、人生を変えていくストーリーが「たりないふたり」であると私は思っている。
ただし、若林さんが私の知っている物語を理想としているか?というと、そうではない。
若林さんは「安島さんが描くたりないふたりの物語」が好きで、
山里さんは「自分がたりないふたりの物語の主人公」であると気付いていない。
だから、若林はたりないふたりを大切にしていて、山里は今でも若林さんに嫉妬する。
そんなカオスさが、たりないふたりの面白さであると、私は思う。