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【毎日習慣】サクラ

「もう、マスクしなくていいよ」

 お国がそう言ってしまえば、前倣えでコロナ禍は終わりを告げるらしい。
 世田谷の道中を歩きながら、ながく苦しんだ伝染病の終わりを思う。1年めはコロナ鬱になった。ニュースを見ることでも精神不安定に繋がった。自死のニュースが相次いだのも、コロナで入院した死亡した、出歩いた芸能人が炎上した。ジャニーズを辞めた。激動のニュース報道が、押し寄せるように心の余白を奪って、恐怖した。
 外出規制という人生初の施策だった。心が不安定になればなるほど、病状は悪化する。あまりに苦しい闘病だったな。

 今年になって、コンタクトレンズを購入した。外出しようと前髪を切って、まだ完全に復活したとは言えないけれど、外に出る。
 運動不足で鈍った身体は、見た目だけじゃ通行人と同化できる。でも、歩くだけで胃が痙攣するような不安が足元を揺蕩っている。気のせいだと振り切って、目的地まで歩く。
 息苦しさは減った。「こんなかんたんなこと、なんでできなかったんだろう」って、自分の行動制限に驚く。
 わたしよりもわたしの行動記録を把握している電子機器は、「昨年は1枚も桜の写真撮ってないよ」って、教えてくれる。嘘でしょって、驚く。でも、カメラロールに本当に1枚も写真が残っていないから、事実なのだと理解する。
 まだ、桜の季節には早い。だから、ロケハンしながら公園を巡っている。
 わたしが外に出れない間も、健気に咲いて、英気を養っている植物の美しさに心を奪われる。

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