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不安に押しつぶされそうになったときに考えたこと

「カバンの大きさは不安の大きさをあらわす」

 なんていうけれど、まさにその通りだと思う。身軽に旅をすることのカッコよさもわかるけれど、私には無理。出発の前日、あれやこれやとスーツケースはパンパン。入らない、閉まらない。何か置いていかなければ…。うーん、でも、これは使うかもしれないし。

 だいたい出発前夜は眠れない。目の前の大荷物という不安と葛藤しているから。それでも今ではだいぶマシになった方で、“初・海外ひとり旅”の前日なんて、精神が崩壊しそうだった。

 だけど、ビビりまくっている私を見かねて、海外慣れしている友人が言ってくれた。

「最悪、パスポートとクレジットカードさえあればなんとかなるから」

自分でも驚いたのだけど、その瞬間、不安が一気に消え去った。

 スーツケースの中身で叶えようとしていた何か。素敵なひとり旅? 快適な海外生活? 異国地で困り果てることがない自分? それらへの執着がすーっと消えていく。

 希望通りにならなくとも、海外に行けるだけで充分。それに何とかなるだろう。足りないモノは買えばいい。辛くなったら帰国すればいい。

 人生にもあらゆる大きな不安があるけれど、そのほとんどが重々しくて、じんわりと辛い。

 仕事が全部なくなったらどうしよう。
 このままずっとひとりだったらどうしよう。

 漠然とした不安に押し潰されそうになることもあるけれど、不安も必須項目であり、ある程度まで膨らませることも大切なのではないだろうか。

 なぜなら、旅の大荷物が象徴するように「備えよう」とするエネルギーになるから。

 問題なのはエネルギーにうまく変えられなかった不安が、膨らみ過ぎてしまうこと。いつ割れるかわからない風船みたいで、常にビクビクしてしまう。

 だから備えが完了したら、知人の一言でそうなったように「絶対にこうでなければならない」という執着を捨てたい。できるだけあっさりと。

 フリーの仕事がなくなっても生きてはいける。またゼロから探すこともできる。一生ひとりでもなんとかなる。趣味があればそれなりに楽しめる。しつこく想像して、開き直って、前を向く。

 心が身軽になってからの旅立ち。それは毎回、荷造りの準備で少し寝不足だけど、どこか心地よいそんな感じで出発できる旅が最高だと思っている。

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